「名前」にこだわりを持つ自閉症者を狙った「選挙戦略」だって出てくるかもしれない


川松佳緒里[コピーライター]

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自閉症の大きな特徴の一つが「こだわり」。重度の範疇に入る筆者の次男は「名前」にこだわりがあり、この春入学した高等部でもさっそくあらゆる教職員が首から下げているネームプレートを確認して回った(に違いない)。

また、一対一のマッチング的な理解(たとえばリンゴと赤、など)は、しやすいというのも自閉症の特徴。この二つの特徴が組み合わさることがある。

たとえば、橋本さんという女の子が好きになると、なぜか電車で橋本駅に行こうとする、という特徴的な行動をとったりする場合もある(こだわりも理解の仕方も、特徴的な行動も個人差が大きい)。

筆者の次男の場合、こだわりと一対一対応の理解を思わせる行動は独特な独り言。子ども向けアニメ「おじゃる丸」とか「ちびまる子ちゃん」のキャラクター名を、彼にしかよくわからないペアにして言う。そこにたまに学校の先生の名前が入っていたりもする。

このアニメキャラの名前の組み合わせ連呼シリーズ、最近、「ちびまる子ちゃん」のナガサワキミオとペアの名前が、誰だかわからない名前だった。

あまりに毎日聞かされているので、ある日ふと検索をかけてみると、超意外なことに自民党の政治家。苗字が「コバヤシ」なので、「おじゃる丸」のキャラクターの小林茶つながりで、なんとなくインターネット検索でたどりついたのかもしれない。

ふだんあまり見ないのだが、次男がネットで遊んでいる画面を覗くと、なんと広告スペースに政治家コバヤシ氏の顔写真と名前が常時表示されている。毎日連呼するはずだ……。

さらにその独り言、筆者との外出時にも必ず何度も言う。しかも基本的にボリューム調節が苦手(ちょっと声大きめ)。選挙カーほど威圧感なくじわじわと周囲の人にもサブリミナル効果を生んでいるかも……?

ネット検索したものが広告表示される仕組みって、けっこう大きな効果があるかもとはじめて実感したのだった。

18歳に年齢が引き下げられた選挙権。次男が資格を得る日はそう遠くない。テレビを含む演説や選挙カーの音声も彼には響かないだろうけど、毎日遊んでいるネットの横にちょこんとあるPRはしっかりインプットされていそう。

彼は果たして今毎日呼んでいるコバヤシ氏が候補の中にいたら投票するだろうか?

だけどもし、知的障害者向け配慮として顔写真付きの候補者一覧が現場にあったなら、彼は見慣れたコバヤシ氏よりもきれいな女性の候補者の名前を書くような気がしてならない。そんな将来を一人楽しく妄想したのだった。

 

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川松佳緒里

川松佳緒里(かわまつ・かおり) 東京都自閉症協会 広報部。本業はコピーライター/仏教ライター。 1967年茨城県生まれ。早稲田大学第一文学部の文芸専修卒後、広告代理店および広告制作プロダクション勤務を経て出産を機にフリーに。 2007年よりアルボムッレ・スマナサーラ長老をはじめとする仏教の書籍の編集にも携わる。1歳半検診で要経過観察になった知的障害のない広汎性発達障害(?)の長男と、知的障害をともなう自閉症の次男がいる。