<風力で原発の代替は不可能>「世界の風力発電、原発抜く」報道はもはや虚構


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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2月20日の共同通信では、「世界の風力発電、原発抜く」という見出しで、次のように報じている。

「世界の風力発電の発電能力が2015年末に14年末比17%増の4億3242万キロワットに達し、初めて原子力の発電能力を上回った・・・」

「15年に新設された風力発電は6301万キロワットと過去最大で、原発約60基分に相当する・・・」

結論から言うと、世界のどんな団体の誰が何と言おうと、どんな希望的な報道をしようと、当面の人類が持つ技術では、風力発電は原子力発電の代替にはなり得ない。

この記事に書いてあるように、

  1. WNA(世界原子力協会、本部英国)の統計によると、原子力発電能力は16年1月1日時点で3億8255万kW
  2. GWEC(世界風力エネルギー会議、本部ベルギー)の統計によると、風力発電能力は15年末時点で4億3242万kW

と、風力発電能力が原子力発電能力を5000万kW程度上回っている。

しかし、これは発電能力(kW)のことであって、発電電力量(kWh)のことではない。

原子力発電は、稼働を制御できるので安定的に発電することができるし、設備利用率については90%以上に調整することもできる。

風力発電は、天候によって変動するため稼働を制御できず安定的に発電することができないし、設備利用率については恵まれた場所でも20〜30%程度でしかない。

例えば、発電能力が100万kWの原子力発電所1基が1年間に発電電力量を生み出すのに必要な風力発電機は約4000基も必要となる。

2月19日付け日本経済新聞1面トップでも、「風力増強、原発10基分に」という見出しで、次のように報じている。

「国内首位のユーラスエナジーホールディングス(HD)と同2位のJパワーがそれぞれ2020年までに600億円規模を投資する・・・」

「国内全体の風力発電能力は現在の約3倍、原子力発電設備10基分に増える見通し・・・」

この記事の書き方も、上記の共同通信の報道と同じように、大きな誤解・曲解を招くもの。ひょっとすると、それをわかっていながら意図的にそう書いているのかもしれないが。

発電所の評価は、発電能力(kW)でするのはなく、発電電力量(kWh)でしなければ意味はない。風力発電能力が原子力発電能力を上回ったことをいくら喧伝しても、当面の技術では、風力発電は原子力発電の代替にはなり得ない。

風力や太陽光といった天候によって変動してしまう『不安定な自然エネルギー』が、原子力や化石燃料などの『安定供給可能なエネルギー源』の代替として利用することはできない。

一つだけ方法が有るとすれば、『不安定な自然エネルギー』で作った電気を貯めておけるような蓄電池が普及することだ。実は今も、蓄電池はある。

しかし、いかんせんコストが高過ぎるので、まだまだ商業化できない。それが商業化できるまで待たなければならない。今世紀中に実現すれば御の字だろう。
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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。