<「アメトーーク」週2回放送化>従来放送と日曜ゴールデンとの棲み分けを
高橋維新[弁護士/コラムニスト]
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「アメトーーク」(テレビ朝日)が、2016年10月から週2回の放送になるらしい。現在の枠である木曜日23時15分からの放送回をそのまま続けると共に、日曜のゴールデンタイムである18時57分から19時58分までの枠でも放映することになる、とのことである。
「アメトーーク」と言えば、「つまらなくなった」という声もある一方で現在まで13年以上続く人気番組である。にもかかわらず、ゴールデンタイムに進出せず、23時15分放送という深めの枠をずっと守り続けてきた番組である。
そこにはおそらく、ゴールデンに進出するときわどいネタやきつめの下ネタができなくなり、おもしろさが大きく減退してしまうのではないかという作り手側の危惧があると推察する。現に今の「アメトーーク」は、ゴールデンタイムではできなさそうな「その手のネタ」が出てきたときほどおもしろい。
そんな「アメトーーク」が、ゴールデンにも進出してしまうのである。新たに加わる日曜放送回の内容が実際にどうなるのかは見てみないと分からないが、週2回の放送をどう「棲み分け」させるのかが番組の方向性や命運を左右するように思える。
「アメトーーク」でおもしろい回というのは、概して「何らかのもの/誰かをバカにするケナシ回」である、というのが定石だ。
この時、バカにされるのは、例えば、出川哲朗・狩野英孝・スピードワゴン小沢・ダチョウ倶楽部などの芸人であったり、人見知り・運動神経が悪い・中学の時イケてなかった・結婚できないなどの特定の特徴を持った芸人の集まりだったりする。
【参考】<せっかくの3時間枠が無駄?>「アメトーーク3時間SP」で考えて欲しかった全体の連続性
他方で、「アメトーーク」でおもしろくない回になっているのは、「何か/誰かを褒めるホメ回」である。褒められるのは漫画・ゲーム・アニメなど特定の表現作品だったり、特定の芸能人やスポーツであったりすることが多い。
そして、おもしろい「ケナシ回」は、深夜だからこそきわどいネタで貶していくことも可能であることも多い。そのため、ゴールデンで「ケナシ回」をやっても、そのパワーが減退することは目に見えている。しかし、様々な都合もあるのだろうが、何回に一回かはやらざるを得ない「ホメ回」があるのも事実だ。
人気番組の宿命として、色々なところから番組の質を落とす「横槍」が入る。ゴールデンタイムであればいわずものがなである。「アメトーーク」とて例外ではない。
局内の他番組の番宣をさせてくれと言われ、断れずに「ホメ回」になる場合もあるだろう。スポンサーがうちの商品を宣伝させてくれという話を持ってきて、「ホメる」こともあるだろう。大きな芸能事務所がうちの他のタレントを使ってくれと言ってくることもあろう。
せっかく週2回の放送になるのだから、「ケナシ回」と「ホメ回」で棲み分けを行ってはどうだろうか。定期的に発生するであろう止むを得ず「何かをホメざるを得ない」とき、テレビ朝日の都合上、特定の番組や商品などを「ホメざるを得ない」とき、トークに全然絡んでこない女性ゲストの番宣や、明らかにバーターで出てきた実力不足の芸人が登場するようなときは、例えば新たに始まるゴールデン日曜日の放送に回すという形だ。
もちろんそうなると、日曜の放送回は基本的に「アメトーーク」的にはおもしろい放送にはなりづらい。その結果、人気が出ずにすぐ終わってしまうことは容易に考えられる。しかし、週2回の放送として棲み分けができていれば、番組と社会のニーズがマッチしていなかったというだけで、「人気の出なかったホメ曜日」だけ終了させれば良いだけのことだ。
そもそも、現在のテレビ朝日のバラエティ番組は特定の制作者に頼りすぎであるように思う。「アメトーーク」もしかりで、スペシャル番組を放映する週でも休みなく通常放送がなされている。これ以上忙しくするとスタッフや司会の雨上がり決死隊が本当に体を壊しかねないし、当然、磨耗も加速する。あんまり無茶はしてほしくないと感じるのは筆者だけではあるまい。
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