<公開粗探しの危険性も>自民党「オープンエントリー」による候補者選びは「炎上」するか?


藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)/メディア学者]

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いわゆる「炎上」を防止したり予防することは、実はそれほど難しいことではない。しかし、それでも様々な場面で「ネット炎上」が起きるには理由がある。

その理由は実にシンプルで、「誰もが気づくけど、(炎上する)本人だけが気づいていない矛盾から粗探しをされる」というパターンだ。多くの矛盾が「なぜそんな簡単なことに気がつかないのか」ということばかりで驚かされる。

そして、本人が気づいていないだけに、初期段階では本来すべき対処や対応ができていない上、「まぁ、大丈夫だろう」という甘くみた挙動を生む。そこから続々と問題が発掘され、延焼し、炎上に至る。

「ベッキー騒動」で言えば、流出した「ゲスの極み乙女。」川谷絵音氏とのやりとりがそうだ。週刊誌に不倫をスッパ抜かれた段階で、ベッキー&ゲス川谷は一切のやりとりをやめ、ましてや騒動源であるLINEの利用などは論外だったはずだ。騒動の渦中でさえ週刊報道や不倫を茶化すような表現を使っているのだから、流出すれば炎上しないわけがない。一度流出した情報の第二弾が準備されていなかったとでも考えていたのか。甘いとしか言いようがない。

「五輪エンブレム騒動」も同様だろう。パクリ指摘が発生した段階で、納得の有無はさておき、まずはベルギー・リエージュ劇場側と真摯に向き合い、適切な法的処理や契約をしていれば、炎上することなく「よくあるトラブル」として収束したように思う。それを、自分たちのロジックから正当性を確信し、理解ではなく「敵対」に向けてしまったことでネット民と社会の反感を買い、エンブレム以外へも延焼してしまったのである。

IT業界の巨人IBMが、法的なトラブルを避けるためにドクター中松氏個人とパテント(特許)契約を結んでいることは有名な話だ。その契約が何であるかは不明だが、IBMにとっては「何か間違いが起きないように」という慎重で真摯な予防的措置なのだろう。

さて、自民党の今夏の参議院議員選挙候補者を選ぶ「オープンエントリー」が話題だ。その話題とは、「ファイナリストの粗探しが炎上するのでは」というネガティブな話題で、だ。

当然のことながら、ファイルナリストになった人が対応や挙動をひとつ間違えば、真偽とは無関係に過去が暴かれ、政治活動には関係のない私生活や親族にまで飛び火して人格否定をされる「炎上」へと発展しかねない。今回の自民党「オープンエントリー」のファイナリストたちも、そういった「炎上」の餌食になる可能性は決して少なくない。

履歴書と簡単な小論文によって応募が可能であるだけに、政治参加への敷居が大きく引き下げられた一方、「書類的な見栄えが良い」というだけで、その実、怪しげな過去や矛盾した人生選択の人が選ばれてしまうことは想像に難くない。ネット投票が候補者決定に反映されるため、自民党内部での統制や自制も効きづらいかもしれない。

もちろん、ファイナリストたちが、これまでも自民党員や支持者として、矛盾ない形で地道に地域活動・政治活動をなどを続けていたような人ばかりであれば良いが、そうとは限らない。むしろ、自民党としても「オープン感」を出すためには「そうではない人」も積極的に開拓してゆく必要があるだろうから難しい。

しかも、政治家になることを自己目的化した「意識高い系議員」が増えつつある今日、その主たる窓口となっている各党の「公募議員」枠への視線も厳しい。「隙あらば粗探しをしよう」という層は決して薄くない。

「国会ズル休み不倫旅行」疑惑で維新の党から除名された上西小百合衆議院議員、「詐欺まがい金銭トラブル」疑惑で自民党を離党した武藤貴也衆議院議員。最近ではグラビアアイドルとの不倫疑惑で議員辞職となった宮崎謙介元衆議院議員など、「公募議員」が中心になった話題が多いこともポイントだ。

党関係者からの紹介や支持団体などから推薦・保証されてきた候補者ばかりでも問題はあるが、背景的な確認や思想・人格の十分な理解ができないまま、主要政党の「公認」になれてしまう「公募議員」の仕組みも危険だ。

面接や書類、写真判定だけは妙に好印象な人は、どこにでもいる。「意識高い系」に代表されるように、むしろ、最近では、そういったセルフ・プロモーション能力だけに異常に長けている人は多い。

ただ、今回の自民党の「オープンエントリー」のコンセプトや制度そのものは決して悪いものではない。しかし、そのコンセプトが粗探しを容易にし、自民党の調査チーム以上に調査能力に長けているネット民たちの「採算度外視の粗探し」を誘引してしまうことも事実だ。

「ファイナリストの誰が候補になっても良い」という意識があるのかもしれないが、そこに大きな「隙」があるようにも見える。もし、そこで「炎上」がおきれば、それがひいては「オープンエントリー制度」そのものへの批判や否定へと繋がりかねない。

3月12日に12人のファイナリストが発表されたが、予期せぬ炎上を起こさない唯一の方法は「当たり前の感覚で炎上要因を排除する」という地道な作業を、人気投票や審査員たちの熱意や意向とは切り離して厳しく行う、ということだろう。そしてそれができるネットの感性を理解する人材も重要だ。

例えば、炎上しそうな要素が見つかった場合、それを選ぶ側の価値観で、「◯◯◯な過去もあるが、現在はそれを凌駕するほどの魅力がる」的な論理や、「ネット投票では人気がありそう」的な基準は、確実に粗探しの対象となり、「炎上」を誘引する。それが、「まぁ、大丈夫だろう」と手を抜いてしまっていることの証でもある。

ファイナリストであっても、炎上要素を抱えていることが判明した人には、潔く「対象外」として辞退させるぐらいの勇気を見せる方が、国民としては信頼感が増す。ネット時代の今日、過去や事実を隠し切ることは難しいのだ。

例えば、今回の「オープンエントリー」に該当者がいるかどうかは定かではないが、民主党のような自他共に認める「自民党にとって敵対党派」での議員や立候補経験があるような人は、大きな火種になるかもしれない。過去に事件化しているような団体や組織(企業も含め)に属して主体的に活動した実績があるような人も炎上の可能性があるだろう。

どんな理由があるにせよ、粗探しをするに、あまりにも「わかりやすい矛盾」は、ダイレクトに炎上へと発展する。説明や反論・釈明が正論であればあるほど、炎上は加速するだろう。

いづれにせよ、炎上を予防するための基本は、自分たちの価値観で「正しい」「納得できる」「説明可能」と思い込んだ理論で国民に説明を求めようとしてはいけない、ということだ。まずは、気になることをひとつひとつ地道に確認し、問題があれば「説明すればわかってもらえる」の期待ではなく、確実に回避してゆくことだ。

自民党の「オープンエントリー」に限った話ではないが、ネット民たちは、そもそも説明や弁明などは聞いてくれないのだから。

 

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藤本貴之(ふじもと・たかゆき) 東洋大学総合情報学部・准教授(情報デザイン論・メディア構造論)/北陸先端科学技術大学院大学・教育連携客員准教授/藤本情報デザイン事務所・執行役員/JAGDA正会員/最先端のメディア研究・メディア技術の知見から、アカデミズムの枠を超え、企業や自治体などを対象としたメディア設計や情報発信戦略など、数々の実践的なプロジェクトを手がけている。主な著書に『情報デザインの想像力』『脳にアイデアを思いつかせる技術(講談社)』『映像メディアのプロになる!(河出書房新社)』など、多数。