<当事者が語る>フジテレビ「ラヴソング」でドラマ化されたリアルな吃音(きつおん)


青木英幸[発達障害を持つ社会活動家]

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4月11日フジテレビで、月9枠新ドラマ「ラヴソング」が始まりました。当事者として興味深く見ることが出来ました。ドラマでは、ヒロインさくらが「吃音」(きつおん[どもること])という障害をリアルに演じていました。ドラマを見た一般視聴者にも吃音当事者にも大きな衝撃を与えたことでしょう。

吃音は、言葉をスムーズに発話することができない障害です。話すときに言葉を流暢に発話できません。発話する最初に詰まってしまう「難発(なんぱつ)」、言葉を連続してしまう「連発(れんぱつ)」、言葉の途中で伸ばしてしまう「伸発(しんぱつ)」があります。

現時点では、幼少期から小学生の間に症状が発生することが多いと説明されています。この幼少期から吃音の症状がある場合を「発達性吃音」としていますが、これが一般に言われる吃音です。5%くらいの子どもが吃音になり、大人になっても吃音が継続する人が1%いるとされています。[註]

「ラヴソング」の制作には、吃音当事者でもあり医師として活躍する吃音ドクターこと菊池良和氏、吃音者の当事者団体「全国言友会(げんゆうかい)連絡協議会」、国立障害者リハビリテーションセンターの坂田善政氏、吃音当事者の川端鈴笑氏、日本言語聴覚士協会など複数の団体や人間が監修や指導担当として参加しています。

【参考】<月9「ラヴソング」>なぜ臨床心理士・福山雅治は恋に落ちてはいけないのか

吃音者を演じる藤原さくらさんも当事者団体を訪問しているとのことで、これらの丁寧な事前取材や吃音への深い理解がドラマのリアルな演技に繋がっていることが分かります。筆者もドラマを見てあまりのリアルさに実体験のフラッシュバック(過去の体験を一瞬にして思い出すこと)が起こり、リアルタイムに視聴することができなかったほどです。

<吃音で困ること 吃音者しかわからない悩み事>

ドラマでは「吃音者あるある」や「吃音者はこのようなことで困っている」、「こんな風に言われると嫌だな」という内容が取材をもとに克明に描かれています。

例えば、職場の同僚に挨拶ができない代わりにとびっきり可愛い笑顔で応対するシーン、お店や会社に電話をかける場合に苦労するシーン、電話での緊急通報ができないシーン、上手く会話が出来ないので友人と一緒にいても聞き役に徹するシーン、友人と同じ空間にいると会話に参加しなければならなくなるので煙草を吸うという理由で離脱する吃音者処世術シーン、これらは皆実際にあることなのです。

一般の人から見ると、こんなことで苦しんでいるの? 本当なの? と感じるかもしれません。

普通の人に吃音の大変さを伝えることはとても難しいことです。吃音者は突然、吃音スイッチがオンやオフになるのです。「あれ? なんでいつもスムーズに話しているのに今はこんな話し方なの? ふざけているの? バカにしているの? 遊んでいるの?」と思うかもしれないのです。

<吃音者は十人十色>

吃音の症状は吃音当事者によって十人十色です。「ラヴソング」でも公式ホームページに次のようなメッセージが書いてあります。

「このドラマには、設定として吃音(きつおん)を持った人物が登場しています。ドラマの登場人物の性格、行動は、ストーリー上創作したものです。また吃音にはさまざまなタイプがありますので、吃音を持った人が全て登場人物のような吃音のタイプや、性格、行動をしているわけではありません。また、吃音があることにより学校や社会で困っている人もいます。もし、みなさんのまわりで話しづらそうにしている人がいたら、まず耳を傾けていただくなど、理解と配慮をお願いいたします。」

吃音者はその症状の現れ方や吃音の程度が異なります。よって吃音当事者同士でも吃音に対する向き合い方や吃音をどのように受け入れているかは異なって来るのです。

吃音があっても何の問題もなく社会生活を送っている人もいるので、吃音が障害だと言われることへ抵抗を感じる人もいます。

【参考】<障害者が健常者にカメラを向ける>「撮る・撮られる」の固定した関係が生み出す「差別の構造」を壊す

一般の人も吃音がある人にたいして「変な奴だな。しゃべり方おかしいな。コミュニケーション能力がないんじゃないの?」という評価を下す前に、どうすればお互いが働きやすくなるのだろうか?と双方向で考えて頂きたいと思います。

さらに、どうすれば合理的配慮ができるのかなどを話しあいながら歩み寄ることができる社会に変化していけば幸いです。

ドラマのみで吃音はこういうものなのかと立ち止まらずに、吃音にはこのような背景事情があったのかと知ってもらえるだけでも、そこから徐々に世の中は変化していくと思います。

ドラマ「ラヴソング」では、その当たりの事情も上手に描かれています。このドラマが多くの人が吃音を考えるきっかけになってもらえればと、当事者として願っています。

[註]国立障害者リハビリテーションセンター・吃音外来(http://www.rehab.go.jp/ri/kankaku/kituon/overview.html)

 

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青木英幸

青木英幸(あおき・ひでゆき)発達障害(吃音、広汎性発達障害、ADHD、計算障害)を持つ当事者として情報発信をしている。幼少期から吃音があったが、大人になって発達障害の診断も受けている。精神障害者保健福祉手帳を取得。吃音者が生き抜くための社会保障や公的支援を利用できることを社会に伝えるための活動をしている。