<月9ドラマ『ラヴソング』>障害者差別解消法から見た吃音者への合理的配慮とは?


青木英幸[発達障害を持つ社会活動家]

***

フジテレビで月9ドラマ『ラヴソング』が放送されています。「吃音」(きつおん[どもること])をラヴソングで初めて知ったという人もいるのではないでしょうか。

『ラヴソング』の中で「吃音者あるある」、「吃音者が困っていること」などが丁寧に描かれているため、吃音当事者の感想や意見が賛否両論に分かれて議論になる程のリアルなドラマになっています。

ドラマの中で中村真美(夏帆)と天野空一(菅田将暉)が吃音を持つ女性、佐野さくら(藤原さくら)と対話するシーンがあります。2人ともさくらの吃音に対しては一切反応をしません。筆者はこの状態が吃音者に対する究極の合理的配慮ではないかと感じました。

もちろん、本音でぶつかり合うシーンでは真美もさくらの吃音を指摘しています。それだけお互いの信頼、強い絆があるからでしょう。(第1話、さくらが会社を無断欠勤して自宅でストリートファイター4をプレイしているシーンがあります。真美が婚約者である野村から欠勤していること知らされるシーンです。無断欠勤を知った真美は本気でさくらを怒ります。「健太に口利いてもらった仕事なのにそれを失ってもいいの? ねぇどうやって生きていくの?[※筆者補足・吃音があるので]まともにアイスコーヒーも水だって注文できないくせに」)

【参考】<当事者が語る>フジテレビ「ラヴソング」でドラマ化されたリアルな吃音(きつおん)

2016年4月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)が施行されました。この法律は2013年6月に制定され2016年4月施行に向けてパブリックコメントや法律の周知が行われてきました。この障害者差別解消法が制定された背景には国際連合が中心となって動いてきた「障害者の権利に関する条約」の存在があります。

日本政府は2007年9月28日に署名。しかし、条約批准だけでは日本国内において本当の意味で障害者の人権や生活が変化するのか懸念を表明する障害者団体の重要な決断がありました。それにより日本国内では署名をした状態でしたが、条約は発効していません。

この重要な決断があったからこそ、障害者基本法改正や障害者差別解消法が制定され、その後、日本国内情勢が変化した2014年2月19日に満を持して条約が発効となったのです。障害者差別解消法は「障害(難病や社会的障壁も含む)を理由とする不当な差別」を禁止しています。

この法律の特筆すべき点は『障害者手帳の有無を問わない』としているところです。国の行政機関・地方公共団体など、民間事業者の両方において差別を禁止しています。また、官においては合理的配慮提供の義務化、民においては努力義務となっています。

不当な差別の例は「障害を理由に店舗・施設の利用、サービスや機会を提供しないこと」などがあります。合理的配慮の例は「●●障害のある人に対して、その障害や困り事に対して情報保障を行う、移動を補助する、休憩室や別室利用を選べるようにする」などがあります。

<吃音は障害者差別解消法施行後においてどのような合理的配慮が考えられるか?>

「合理的配慮」とはいささかわかりにくい表現ですが、先に述べたように、吃音があったとしても何事もなく接することではないかと考えています。ラヴソングではその点がとても丁寧に描かれていると思っています。真美、空一の2人とも、さくらの吃音を空気のように接するところが筆者はとても自然だと思いました。

ただし、これは理想と言われてしまえば理想ではあります。吃音の場合は吃音当事者が吃るところを相手が見て聞いてからはじめて、認識する障害です。例として身体障害のように身体の一部や車椅子を見て、「この人は障害や病気があるのかな?こうしたほうがいいのかな?」と先に考える余裕があることが多いでしょう。吃音の場合、事前に考えることはできません。

【参考】<パラリンピック報道の氾濫に危惧>パラリンピアンは一握り、大多数の障害者は「ごく普通の人」

『ラヴソング』第4話でもグリスターミュージックの水原に吃音の説明をするさくらのシーンが出てきます。吃音の場合は吃音者側から相手側に事前に吃音があることの申し出ができればベストであると考えています。障害でも社会的障壁でも難病でも、お互いの1歩の歩み寄りからが大切だと考えています。一方向ではなく、双方が歩み寄り考えるところからこそ新しい世界があると思います。

『ラヴソング』を見て「もしかしてこの人、吃音かも!?」と吃音に対する認知が広がっていくことを望みます。吃音への合理的配慮として、筆者が大きな柱と考えていることは、「吃音を笑わない・怒らない、吃音を治せと言わない、吃音を理由に機会を提供しない・奪わない」この3本柱です。

具体的な事例を下に記しておきます。

 1. 吃音者と話す時は時間の延長をする。面接や試験の場合もぜひ対応してほしい。

 2. 吃音者が話すことにどうしても困っている場合は筆談の対応もする。

 3. 吃音者と話す時に吃音者が言いやすい言葉を発話すること、言いやすい言葉を使うが故に敬語を省いてしまっても怒らない。

 4. 吃音者がマニュアル通りの順番通りの話し方をしなくても怒らない。

 5. 吃音者が人間社会のルールとして当たり前の挨拶ができなくても怒らない。笑顔や会釈することでもよいとする。

 6. 吃音者が発話できない言葉がある時は、発話ではない別のコミュニケーション方法は無いのかを考える。ブザーやホイッスル、電子メモパッド、アプリによるコミュニケーションを考える。

 7. 吃音者が接客業務をする場合、事前にお店の見えるところに「当施設には吃音のある従業員が働いています。」と掲示をする。

 8. 電話応対をするときに、自動音声で「この電話は吃音者が架電しています」、「この電話は吃音者が受電します」などの説明を行う。

 9. 学校に通う吃音者であれば「右手を挙手しているときは、問題も理解していて皆の前で発表できる。左手を挙手しているときは、問題は理解しているが吃ってしまいそうなので先生、指名しないでね」というルールを考える。

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

青木英幸

青木英幸(あおき・ひでゆき)発達障害(吃音、広汎性発達障害、ADHD、計算障害)を持つ当事者として情報発信をしている。幼少期から吃音があったが、大人になって発達障害の診断も受けている。精神障害者保健福祉手帳を取得。吃音者が生き抜くための社会保障や公的支援を利用できることを社会に伝えるための活動をしている。