国民を騙し負担増と受益減のみ推進する安倍暴政 – 植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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安倍政権ならびに財務省は財政再建を唱えるが、財政再建を進める手法に重大な問題がある。

財政再建とは、財政収支を改善させることである。収支を改善するには、支出を減らすか収入を増やす必要がある。このときに、安倍政権と財務省が進める財政再建の手法に著しい偏り、歪みがある。

具体的には、支出においては、社会保障を徹底的に切る一方で、五輪施設や公共事業や旅行関連事業、TPP関連予算などの政治屋と官僚機構の利権になる支出は無節操に拡大し、収入においては、国際的に負担が高くない法人の税負担を大幅に減らし続ける一方で、所得のない人から税をむしり取る消費税増税を熱烈推進している。

日本の政府債務が1000兆円を超えており、GDPの200%を超えていることが強調される。あのギリシャでさえ、政府債務のGDP比は170%程度だった。この状況を放置すれば、日本もいつギリシャのような状況に陥る。このような話がメディアを通じて流布されてきた。

しかし、この話は、典型的な「詐欺話」、「ペテン師の手法」によるものである。政府債務1000兆円はウソではないが、この数値だけで政府の財務状況を判断することは、完全な誤りである。政府の財務状況は、負債だけでなく、資産を合わせて判断するべきである。バランスシートの全体を見ずに、財務状況を判断できないのは当たり前のことだ。

借金の金額が100万円の人と1億円の人がいたときに、1億円の借金の人が財務危機だとは一概には言えない。借金1億円の人が、1億円の資産を持っているなら、この人の財務状況は危機的ではない。他方、借金が100万円でも資産がゼロで、かつ収入もゼロであるなら、借金100万円でも「危機的」ということになる。

2014年末の日本政府の債務残高は、1213兆円である。しかし、日本政府は資産も保有しており、2014年末の資産残高は、1199兆円である。差し引き14兆円の債務超過であるが、そのGDP比は2.8%に過ぎない。資産のうち、金融資産が598兆円、非金融資産が601兆円である。金融資産に対して非金融資産は換金性が低いが、政府の財務状況は、基本的に資産と負債のバランスで判断される。

要するに、「日本財政が危機に直面している」というのは、真っ赤なウソなのである。この真っ赤なウソを前面に出して、安倍政権と財務省は、社会保障の切り込みと消費税大増税を熱烈推進している。その一方で、利権支出の無節操な拡大、法人税減税を熱烈推進している。このなかで、社会保障制度はまさに危機に直面しているのである。

最大のターゲットにされているのが、高額療養費制度である。高額療養費が発生する場合に、自己負担に上限を設ける制度である。日本の国民医療制度の安心を生む根源が、この「高額療養費制度」である。これの破壊が、これから推進されてゆく。間違った政治であると言えないだろうか。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。