フジテレビ『ファーストクラス』が、日本テレビ『きょうは会社休みます。』よりも魅力がない理由

テレビ

黒田麻衣子[徳島テレビ祭スタッフ]
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1stクールでは、徐々に視聴率を上げてきた『ファーストクラス』(フジテレビ)。しかしながら、2ndシリーズとなる今クールでは、強敵『きょうは会社休みます。』(日本テレビ)が同時刻に裏で放送されていることと相まって、数字が伸び悩んでいるようだ。
筆者は、一視聴者としての立場から、「視聴率より、いかに訴えてきたか」という点に関心が行ってしまう。そういった観点から見れば、『ファーストクラス』は、単純に「1stシーズンの方が見応えがあったな」と思う。
その理由を、筆者なりに分析をしてみた。 本来、ドラマとは、人間の不完全さを描くものであると思う。どれだけ完璧でありたいと願っても、神様仏様じゃないのだから、それは不可能だ。どんな人にも、必ず長所と短所がある。100%の人など、存在しない。だから、ドラマが成立する。「失敗」を、「挫折」を、「苦悩」を、ときには面白可笑しく、ときには悲劇的に、描き出すところに、ドラマがあるからだ。
では、なぜ、人は失敗するのか?挫折するのか?苦悩するのか?・・・それは、何かを求めて「もがく」からだ。求めるものは、人によって様々。愛かもしれないし、地位かもしれないし、お金かもしれないし、権力かもしれない。人は、何かを求めて、努力する。でも、ときに、その努力の方向が間違っている場合がある。いくらがんばっても、努力が報われないときがある。そもそも、努力できない人もいる。そこに、人間の不完全さがある。不完全だから、いとおしい。
『ファーストクラス』の1stシーズンは、まさに、主人公のちなみ(沢尻エリカ)も、それを取り巻くオンナたちも、「地位」や「名声」、「ポジション」を求めてもがいていた。ちなみの成功をねたみ、足を引っ張ったのは、自分の地位が脅かされる恐怖からであった。
そう! 方法と方向性は間違っていたけれど、ちなみにイジワルをするオンナたちにも、彼女たちなりの大義名分があったのだ。だから、見ているこちらも「やり過ぎだろ」と思いつつも、どこかで「でも、その気持ちはわかる」と共感できた。
ところが、今クールのオンナたちには、今ひとつ、「ちなみをいじめる理由」が見えてこない。ただただ、「気に入らないから」「ムカつくから」だけにしか見えない。腕を組んで、斜に構えて、胸を張って、睨みを利かせているけれど、中身は幼稚園児なみに幼い。「人間」を描けていない気がするのだ。 だから、積極的にチャンネルを合わせる気持ちになれないのだと思う。
1000年昔から読み継がれてきた古典も、現代でベストセラーとなっている小説も、大人気のコミックスも、人の心を打つ作品には、たとえ悪役であったとしても、悪人には悪人なりの「理由」があった。「求めるもの」があった。だから、ドラマが成立した。
人間の本質を見失ったドラマに、魅力は少ない。
 
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