<キムタク叩きは無意味>木村拓哉VS他メンバーの構図は何のため?


藤本貴之[東洋大学 教授・博士(学術)/メディア学者]

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昨年末の解散から、何かと慌ただしいSMAP元メンバーたちの話題。マスコミ報道で描かれるジャニーズ事務所派の木村拓哉と、それに相対する他メンバーたちという構図を下敷きにしたゴシップの数々。ファンならずとも関心も持っている人は多い。

最近でも、反事務所派とされる中居正広が、移籍後にSMAPの商標登録をジャニーズから買い戻すといった動きがあるとか、香取慎吾氏の「隠し子報道」など、話題には事欠かない。

そしてその度、とりざたされるのが、キムタクこと木村拓哉の存在だ。

どんな話題であっても、基本的な構図は同じで、他のメンバーの話題に対してキムタクの言動が重ねられ、キムタクがいかにジャニーズから特別扱いをされているのか、という点を中心にマイナスに描かれる、というものだ。

元マネージャーでSMAP育ての親とされる飯島三智氏に従わずにジャニーズ事務所への残留を決めたことで、SMAP解散の原因を作ったという報道もさることながら、あらゆる場面で「キムタク対その他メンバー」の構図が単純化されて執拗に描かれる。

例えば、事務所派のキムタクばかりが目立っている、活躍している、といった初歩的な「叩き」は言うまでもなく、最近では、中居正広の熱愛報道、香取慎吾の隠し子報道も含め、他メンバーの男女関係が話題になるたびに、キムタクは2000年に工藤静香と結婚できたのに他のメンバーは・・・といったことばかりが話題になる。

【参考】<「所属」という病気>ジャニーズを離れない「解散SMAP」

キムタクと結婚した元アイドルの工藤静香に対しても、「結婚は出来ちゃった婚で、それは工藤静香の策略」などと言われさえする。SMAP解散問題に関して言えば、他メンバーと歩調を合わせず、ジャニーズ残留を決めたことは、工藤静香の工作の結果であり、裏で暗躍しているのは工藤である、キムタクはメンバーもファンも裏切った・・・なという憶測に基づく陰謀論も後を絶たない。

しかし、である。

ファン心理としての是非論はさておき、一般論として考えてみれば、果たしてキムタクの行動は他メンバーをないがしろにした裏切りとして、そこまで叩かれ、非難されるべきことなのか?

一連のSMAP報道の中で位置付けられたキムタクの扱いに、少なからぬ違和感を覚えている人は多いはずだ。(なお、筆者はキムタクに肩入れしているわけでも、ジャニーズ事務所と何か関係があるわけでもない。フラットな立場で見ている、あしからず)

例えば、解散があろうがなかろうが、キムタクが事務所派であろがなかろうが、俳優・木村拓哉はSMAPの中では、マルチタレント・中居正広と2トップで目立った存在であったはずである。活躍ランキング5位だったキムタクが解散後に突如1位になったわけではない。中居正広が、アイドルから大きく踏み出したマルチタレントとして独自の歩みを進め、活躍の場を広げたように、キムタクだって単に、俳優として努力しているだけではないのか(事務所パワーはあるにせよ)。

熱愛報道の類でも同様だ。工藤静香の策略にハマって「デキ婚」したなどという話題は、もはや「空想」でしかない。仮にそうだとしても、工藤自身がそんなことを言うはずはない。そのような「100%の憶測」は、キムタクや子供たちに対しても失礼な話だ。

なぜ、ジャニーズはキムタクだけ結婚を認めたのか? 特別扱いではないか? ということに対する非難に関してもそうだ。それは単に、当時のキムタク(や工藤静香)が策を弄して頑張り、加えて、キムタクが事務所の説得を打破できるぐらいの位置関係を作っていたからではないのか。

結果的に「特別扱い」と言われればその通りだが、そんなことは企業を含め、あらゆる世界にある。いずれにせよ、キムタクの「特例結婚」は、会社に対して優位に立てるステイタスを確立していた彼自身の努力の結果ではないか。むしろ感心すべきことであり、非難するようなものではない。

【参考】<BPOって何?>なぜSMAP謝罪生放送は却下され「ニュースな晩餐会」には勧告が出されたのか

SMAP解散に絡む「工藤静香陰謀論」も同様だろう。仮に、工藤静香がキムタクを説得したことでジャニーズ残留となり、その結果、SMAPが解散したのだとしても、それが果たしてそこまで悪いこと、責められるべきことなのかは微妙だ。

大企業に勤める敏腕サラリーマンの夫が、脱サラして4人の仲間と同業種で起業・独立したいという提案をしたら、ほとんどの妻は反対するだろう。「脱サラするなら、子供を連れて実家に帰ります!」という妻だっているはずだ。

工藤静香であってもその心情は同じだろう。いかに活躍している稼ぎ頭とはいえ、ジャニーズ事務所という業界最大手の大企業から独立したら、今後はどうなるかはわからない。妻としては、やはり、安定を考えて大企業に残っていてほしいと願うものだ。

一般家庭の妻たちであれば、経済的な理由でなかなか離婚などはできず、夫の熱意と将来の不安に挟まれて苦悩するのだろうが、個人的な資産や今後の稼ぎ口をいくらでももっている工藤静香であれば、本当に離婚しかねない。家族離散が脅しではなくなってしまうのだ。

SMAPとて人間である。感情もあれば家族もいる。特に妻子持ちのキムタクとなればその重圧は、一般の家庭のそれと同様だ。キムタクにも個人的な事情が山ほどあるはずだ。なぜキムタクにだけ、自分の人生よりも「他」を優先する聖人君子を求めようとするのか。

もちろん、「ファンあってこそ」のアイドルであり、芸能人なのだから、ファンの期待に反するようなことは、それが時代や常識、一般的な感覚に逆行するような認識であったとしても可能な限り慎むべき、ということは理解できる。特に、強い結束と行動力を持つ分厚いジャニーズファン層に対してであればなおさらだ。そしてそういった点に関して言えば、キムタク以外の他のメンバーや関係者も同罪であり、等しく自重すべきことなのだろう。

しかしながら、それでもなを感じる違和感は、キムタクと他のメンバーを対比させて、キムタクを諸悪の根源にしたり、「叩く」基本的な報道の構図だ。消耗材のゴシップとしては楽しめるが、SMAPの今後に関心を持っていたり、これからもSMAPの活躍を見たり、応援してゆきたいと感じている多くの人たちにとっては、SMAPそれ自体の魅力や価値を貶めるだけで、まったくもって無意味だ。

特に、ファンであれば、例え工藤静香が嫌いでも、キムタクを諸悪の根源化するような潮流に相乗りすべきではないように思う。一部メディアで「嫌いな俳優1位」にキムタクが選ばれた、などと報じられたが、キムタクを「嫌いな俳優1位」にすることに、SMAP騒動を利用してゴシップにネタ供給をすること以外に、何か意味があるのだろうか。「嫌いな俳優2位」に選ばれた坂上忍のような面白さだってあるまい。

元メンバーたちの移籍騒動の結果がどうであろうと、国民的アイドルであるSMAPが事務所の枠を超えて末長く活躍している姿を見たいと思っているのはファンだけではない。そのためにも、過剰に対立構造を描き、刹那的なゴシップを楽しむ潮流はそろそろ終息させるべきであるように思う。

 

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藤本貴之(ふじもと・たかゆき) 東洋大学総合情報学部・教授(情報デザイン論・メディア構造論)/北陸先端科学技術大学院大学・教育連携客員教授/藤本情報デザイン事務所・執行役員/JAGDA正会員/最先端のメディア研究・メディア技術の知見から、アカデミズムの枠を超え、企業や自治体などを対象としたメディア設計や情報発信戦略など、数々の実践的なプロジェクトを手がけている。主な著書に『だからデザイナーは炎上する(中央公論新社)』『情報デザインの想像力』『脳にアイデアを思いつかせる技術(講談社)』『映像メディアのプロになる!(河出書房新社)』など、多数。