<公人の妻は「公人」>安倍昭恵総理夫人にプライバシーはない

政治経済

山口道宏[ジャーナリスト]

***

テレビをみていたおでん屋の女将は、こういうのだ。

「奥さんが後ろ指さされない私人になるには、いまの連れ合いと離婚するしかないでしょ」

かのロッキード事件をもじって「アッキード事件」(山本太郎)とは、言いえて妙だ。大阪の「ある小学校」建設めぐる政官関与疑惑事件である。

関与が疑われる安倍総理の夫人が「私人か公人か」と話題だが、昭恵さまと皇后さまを並べること自体が不謹慎ながら、安倍さんちの昭恵さまも、皇后さまも公人である。

昭恵さまは、大阪府にある教育基本法に反する小学校の名誉校長に就任予定だったという。一方の皇后陛下は、天皇とともに70年後の今も戦地巡礼に海外へと赴いていた。今回の訪問地ベトナムからの帰国では安倍首相と一緒に昭恵さまもそのお迎えに空港にいた。

昭恵さまのかかわる件の学校法人の幼稚園では時代錯誤も甚だしく「教育勅語」を無垢な園児に唱えさせ「安倍首相がんばれ」とまで言わせる。一方の皇后陛下が赴いたベトナムでは戦後もかの地に残った邦人の家族に会って言葉を交わした。

よせばいいのに稲田朋美防衛相が「教育勅語」にラブコールという。ドイツだったら「ナチス、ヒットラー、万歳」だから「こんな人が大臣で我々の血税で食わせたくない」は、まっとうな納税者の感覚だ。

ところで、昭恵さまは「あるときは私人、あるときは公人」らしい。夫である安倍首相が国会で野党の質問に、そう答えている。それは「私人で参拝に来た」と靖国参拝に詣でる国会議員が好んで使う言葉と一緒だ。「玉串料は自費だから」が思い出される。

昭恵さまは、現役総理の夫人である。なぜあの理事長が当初「安倍晋三小学校」と名付け、現役総理夫人の昭恵さまになにゆえ講演を依頼したか。これだけで私人でないことは小学生でもわかる。本誌(メディアゴン)編集部もこう指摘する。

「安倍昭恵氏は内閣総理大臣夫人であることに無自覚すぎる」(https://mediagong.jp/?p=22093)2017年3月11日

トランプさんちも、プーチンさんちも、習近平さんちも、夫人は公人に他ならない。昭恵さんの場合、「護衛の者の経費は自費だから」といった官房長官のコメントはせこい。だったら海外随行は、その時の歓迎パーティの飲食代も自腹かしら? と余計な詮索が広がる。

いつから官房長官は裁定者になったかと思うと同時にそれを鵜呑みに垂れ流すマスコミはあまりに不甲斐ない。即ち、自腹=私人はお粗末ということに気付かないのか。その説明ならば、皇后陛下が自腹だったら「私人です」になるからだ。

公人の妻は公人で、公人にはプライバシーはないのだ。

 

【あわせて読みたい】