<アメトーーク「桃太郎電鉄芸人」>プロが作ったプロ芸人の「ゲーム実況」が見てみたい
高橋維新[弁護士]
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2016年2月25日放映のテレビ朝日「アメトーーク」のテーマは「桃太郎電鉄芸人」。「桃太郎電鉄」というテレビゲームのシリーズ(以下、「桃鉄」という)にフィーチャーした内容である。
「桃鉄」の特徴・魅力を語るスタジオトークの部分と、実際にプレイした模様を撮ったVTRの部分に大きく分かれており、全体的には、トーク中に出てきた桃鉄のルールを説明するために、実際のプレイで同じルールが問題になった場面をその都度差し挟むという構成になっていた。
「桃鉄」は多人数で楽しむタイプのゲームであり、長い人気を誇っている。パーティーゲームらしく気まぐれで色々なハプニングが起こる内容になっているため、そのハプニングを紹介するだけで一定のおもしろさは出ていたが、番組としてはその程度のものだった。総じて言うと「桃鉄」の紹介番組という域を出ていないのだ。
ケンドーコバヤシは、「桃鉄」に登場するキングボンビーというキャラクターに扮していたが、テレビではよく見るレベルの仮装でしかなかったため、それで笑いが生まれるわけではない。キングボンビーに扮するためにキバを口に含んでおり、そのせいでうまくしゃべれないくだりはおもしろかったが、それはハプニングに属するものだろう。
また、実際のプレイの様子を撮ったVTRは、いわゆる「ゲーム実況」のジャンルに属する映像にはなり得る。しかし、前述の通りあくまで「桃鉄」というゲームを説明するためにチョイチョイ挟まれていたに過ぎず、「ゲーム実況」のVTRとして意識された編集はされていなかった。
ただ、テレビに出てくるプロの芸人がゲームを遊ぶ模様を、プロのディレクターが編集したらどうなるのかというのは見てみたいところではある。「ゲームセンターCX」という番組はもうあるが、あちらはどちらかというと難しいゲームをクリアする「感動」のエンターテインメントに主眼が置かれているため、「笑い」に主眼を置いたゲーム実況をテレビが作るとどうなるのかというところである。
ネットの世界では膨大な数のゲーム実況があふれているが、テレビではあまり見ない。多分、ゲーム会社に協力してもらわざるを得ない以上、ネットの世界ほど自由にゲーム自体を貶すことができないからだろう。
ゲーム実況も、「ゲーム会社とのタイアップによる告知」という空気を帯びた瞬間に、正直な客は嫌な臭いを感じとって離れていってしまう。ただこの点に気を付ければ、やりようはいくらでもあると思う。
ネットのゲーム実況は、素人が作っているものが多く、クオリティは本当に玉石混淆である。正直、実況や編集がヘタクソで長いこと見ていられないものの方が多い。
ここにプロのクオリティを持ち込めば、あっという間にマーケットを席捲できる可能性もある。こういうジャンルに食指を伸ばすマインドが、今のテレビには必要ではなかろうか。
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