映画「ギフテッド」素晴らしい子役の演技に依存しすぎ?【ネタバレ注意】

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メディアゴン編集部
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映画『ギフテッド(Gifted)』は、何よりもまず7歳の少女を演じるマッケンナ・グレース(Mckenna Grace)の演技がすばらしい。こういったアメリカ映画のオーデションで選ばれる俳優の層の厚さに驚きを禁じ得ない。マッケンナの実年齢は10歳だそうだが、7歳の小学一年生を見事に演じきっている。
さて、映画の中身の方だが、マッケンナの演技程にはすばらしくない、というのが率直な感想である。
物語は公式サイトに寄れば次のようなものだ。

「フロリダに暮らす、ちょっと変わった2人と1匹の家族。7歳の生意気ざかりのメアリーと、彼女の叔父でシングルのフランク、そして『歴史上一番すごい猫』のフレッドだ。互いがいるだけで、毎日が記念日のように楽しい時間は、メアリーが学校へ行くことになり揺らぎ始める。彼女には、生まれながらにして数学の天才的な才能があった。(筆者註・これがGiftedである)『普通に育てたい』というメアリーの母である亡き姉の遺志に従って、フランクはメアリーの英才教育を頑なに拒む」

以下あらすじの続きだが、公式サイトのものは、書き方が雑なので以下のような一文を追記してみたい。

「しかし、そこへ縁を切ったはずのフランクの母親(つまりメアリーの祖母)が現れ、彼からメアリーを自分のもとに引き取り、英才教育を施そうとする。親権をどちらがとるか裁判が始まる」

ギフテッドとは、先天的に、平均よりも顕著に高度な知的能力を持っている人のことである。ギフテッド (gifted)は、贈り物を意味する英語の「ギフト (gift)」 が語源であり、神または天から与えられた『資質』を意味する。
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アメリカではこのギフテッドに関する教育方法が確立しており、大抵は英才教育を施されることになる。通常学級では他の生徒とのレベルが違いすぎ、ギフテッドたちは、授業中無為な時間を過ごすことになって、他の生徒との軋轢が生じたりするからである。
よって、映画で描かれるような普通の生活か、英才教育かという二者択一は意味が無い。数学は英才教育を受け、他の科目では普通の学校にも通う、というのがおおよその身の振り方である。
また、ギフテッドと似た概念に「サヴァン」がある。サヴァンを発達障害を持つ人と限定して。その特異能力と定義することもあるが、筆者はこの見解を取らない。サヴァンもギフテッドも特異的な能力における小集合であり、どちらも重なりあっているのである。アインシュタインはギフテッドともサヴァンとも判断できる。
これらの基礎知識を持って映画を見ると実に物足りない。映画は、マッケンナ・グレースの演技力にたより過ぎて、凡庸な結末になってしまったようだ。
 
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