<「オムニチャネル」ってなんだ?>セブン&アイが提唱する「購入しやすい時間・場所で購入すればいい」という買い物スタイル


齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]

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「セブンイレブン」という名のコンビニエンスストアの時代から、この会社の、親会社よりも進んだ考え方に共感して注目してきた。最近もコンビニ・カフェの成功をはじめ、「金の◯◯シリーズ」という従来のプライベートブランドとは一線を画する高価格帯の独自商品の成功など耳目を集めるネタに事欠かない。

しかしながら、このセブン&アイグループが最近になって提唱してきた「オムニチャネル」というコンセプトだけはなかなかピンと来なかったのは確かである。

「オムニチャネル」とは、実店舗はもちろんのこと、ネット通販をはじめ、あらゆる販売・流通チャネル(経路)を統合することで、どこからでも商品を購入できる買い物環境を構築することを指す。

この言葉を初めて耳にした頃は、具体的な事例がなかったためか、いまいちピンとこなかった。しかし、今ならいろいろな事例があるので良くわかる。

例えばセブン&アイのグループ会社の中で西武・そごうの百貨店とイトーヨーカドーが共同開発した紳士もののドレスシャツがいい例だ。百貨店からすれば、豊富なサイズ展開で良質、デザインも優れたおしゃれなドレスシャツ。けれども値段的には従来の価格帯よりは低く手ごろなものを。スーパーマーケットからすれば、いままでにないデザイン性にも優れた高品質なものを、多少高くても豊富なサイズ展開で。

双方で妥協せずに歩み寄った結果、両社で支持される高品質・手ごろな価格・豊富なサイズ展開を可能にした。この商品、全く同じシリーズがなんと百貨店、スーパーともに売れているという。

さらには、その商品を将来的には全国に展開するコンビニエンスストアでも発注・受け取りができるようにするという。もはや質が良く、デザイン性に優れた商品は、デパートで購入するだけではない。

良いものであることが判断できる目の肥えた消費者ならば、どこで購入するかは関係ない。購入しやすい時間、場所で便利に購入すればいい。そして、これがオムニチャネルということらしいということを知った。

かつては贈答品を贈る際には、その包み紙が重要という時代が日本にもあった。消費者は収入や好み・何にお金をかけるかによってきれいにセグメントされ、そのセグメントに沿った場所以外では買い物をしないといわれていた。

東京近郊のジャスコで洋服を買う人は、新宿の伊勢丹で洋服を買う人たちとは全く違う人たちで、両者の消費行動は全く別。購入する商品も価格帯も全く異なる、と信じられていた。それこそがマーケティングであると。

それが、富裕層であっても日用品は、いつでも特定のメーカーの品を安く売る食品専門スーパーで購入し、嗜好品や贅沢品は高級スーパーで買うなどの合理的な使い分けが進み、ひいては、質が良くその割に手ごろな価格のものならば「どこで購入しても同じ」という合理的な消費行動に変わりつつある、ということではないか。

セブンプレミアム(セブン&アイグループがメーカーと共同開発したプライベートブランド)は今やグループ会社のスーパー、イトーヨーカドーでもセブンイレブンでも、西武百貨店やそごうデパートでも売っているのだ。もちろん、それはセブンアイグループのなみはずれた商品開発力、メーカーを巻き込みながらも妥協を許さない高品質で値ごろ感を出す商品開発という強さのもとに生まれる新しい消費行動なのではあるが。

かつて百貨店がもっていたブランド力は、同じ商品を売っているならその商品を「どこで購入するか?」がブランディングだといわれていた。つまり包み紙がブランドそのもの、その店で買い物をする時間を含めて買い物が楽しくなければといわれた。今その常識自体が変化しつつある。

例えばスーパーでもコンビニでも百貨店でも、デザイン性に優れてリーズナブルな洋服が購入できるとしたら、自分の生活が相当変わる。そう考えると恐ろしいほどの変化がすぐそこにきている、そのことに気づくだろう。

 

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齋藤祐子

齋藤祐子(さいとう・ゆうこ) 1984年、筑波大学卒。現在、文化施設に勤務。文化政策や現代美術、落語等の分野に関心が深い。