<経済産業省vs環境省>再生可能エネルギーの導入目標はどちらの試算が適格なのか?


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

***

2015年2月21日の毎日新聞と朝日新聞のネット記事によれば、再生可能エネルギーの導入目標を巡って、経済産業省の試算値よりも上回った独自の試算値を環境省が持っているとのこと。競合している役所同士がそれぞれ独自の試算値を持っていることはよくある話なので、驚くことでも何でもない。

以下に記事を抜粋してみたい。

  • 経産省は14年6月までに認定された再エネが全て運転した場合の年間買取費用を2兆7018億円と試算。
  • 環境省試算では、買取価格低下などを見込み、最大導入ケースでも30年時点で2兆2500億円、既存対策の場合は1兆3566億円。
  • 再エネが化石燃料を代替することによって、30年までに計11〜25兆円の資金海外流出を防げると推定。
  • 環境省担当者は「前提条件によって数値は変わる。環境省の見解を示したものでもなく、数値が独り歩きすると困るので現時点では公開できない」と。
  • 望月環境相は「数字が独り歩きするとほかの省庁となぜこんなに違うということになる」と。

この2つの記事にあるように、環境省試算は内部資料らしいので、現時点ではその詳細を知る術はない。記事の限りで推察すると、経産省と環境省では試算の前提条件が大きく異なるようだ。これは、各省の立場の違いもあるので、特に問題にはならない。

しかし、環境省の試算に関して危惧があるとしたら、電力コスト論はもちろんのこと、電源ベストミックス論やエネルギー安全保障に関する考察が殆ど期待できないことだ。

例えば、記事中にある、

「再エネが化石燃料を代替することによって、30年までに計11〜25兆円の資金海外流出を防げると推定」

などというのは、これだけ読むといかにも素晴らしいことのように見えるが、短絡的にプラス評価を下してはいけない。この程度では、“原子力ゼロ”の経済的損傷を緩和できようもない。

加えて、再エネ導入増は、火力電源のコストパフォーマンスを悪化させ、火力電源への投資意欲を殺いでしまう。その結果として、太陽光・風力の出力変動(下の資料を参照)に係るバックアップの役割を担う火力発電所が相次いで撤退を余儀なくされるであろうことは、誰でも容易に想像がつく。

gazou0153

 

資料(出典:電気事業連合会資料、北海道電力ほりかっぷ発電所)

 

現行の再エネ固定価格買取制度では、再エネを優先的に使用することが義務付けられている。不安定な太陽光や風力の流入量が増えるに従って、需給ギャップ分を調達するための卸売市場で電力価格が時間帯によって相当に高下する。これでは、安定供給電源としての新規火力への投資が進まないだけでなく、既存火力も徐々に閉鎖に追い込まれていく。

多くの日本の再エネ関係者から“再エネ先進国”として崇められているドイツでは、現にこうした問題が顕在化しつつある。再エネが原子力代替に当面なり得ないことは、これまでの筆者は再三再四申し上げてきたことだが、同様に再エネは火力代替にも当面なり得ない。

再エネ導入を促進していくと、バックアップ電源である火力が縮退し、やがて高コストで不安定な再エネによる供給能力の欠如が今以上に露呈し、その後は再エネに猛烈な冷たい逆風が吹き付けることになるだろう。再エネの分不相応な導入増は、再エネ市場を壊死させるブーメランになる。

 

【あわせて読みたい】

The following two tabs change content below.

石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。