「女芸人No.1決定戦」山田邦子の怒りと辞退は当然

エンタメ・芸能

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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「女芸人だけ」とくくって、コンテストを行う是非についてはさておき、参加を熱望していた山田邦子が日本テレビ『女芸人No.1決定戦 THE W』(吉本興業主催)の出場を辞退した。
山田は10月9日に同大会への参戦を発表した際には「女だけが集まる大会!面白そう!! やる気925(クニコ)%! ワクワクしてます!!」との意気込んでいた。しかし、日本テレビによると、この日の予選がスタートする前に、山田の所属事務所から出場を取り止めるとの連絡が入ったという。
山田のオフィシャルブログを見るとこう書いてある。

「がっかりしました。やる気満々だったのに
おととい予選参加の時は¥2000払ってくださいと言われ
まさか?と思い、お金払って出るの?もしかしてこの番組、出演料あるの?と聞くと・・・優勝賞金のみです・・・と。
ほほう? スポンサーついてるのに?審査員や司会者は、おそらくギャラがあるのに?ま、まあ、いいでしょう、じゃあ、あと芸人は誰が出るの??アマチュアや研究生です、と?え? 芸人は?まだわかりません、て。
私の名前は、とっくに発表になっているのに?何じゃそりゃ。残念だなぁ。予選のネタもかなり面白いのを。考えていたのにぃ。ただ名前が宣伝に使われただけか。がっかりだ」

山田が同大会に参戦するという情報が解禁となると、山田の宣材写真がマスコミにばら撒かれたのである。
今回の騒動について所属事務所は「マネジメント側から本人への大会主旨の説明不足があった」と理由を説明しているが、大会趣旨は山田が思っていることとどこが違うのか。プロアマ芸歴問わず、女性であることだけが出場条件だ。
【参考】キンコン西野「素人が考えた斬新さ」はプロにとってはただの迷惑
放送作家の目から見ても、山田邦子は天才である。
筆者が初めて山田を見たのは『笑ってる場合ですよ』(フジテレビ・1980〜1982)のビートたけしコーナー「ブスコンテスト」のオーディションでのことであった。ネタを見せてもらった筆者とディレクターは直ちに「ブスコンテスト」ではなく、芸人のネタ見せコーナー「お笑い君こそスターだ」への出演を薦めた。あっという間に勝ち抜いてチャンピオンになった。
圧巻だったのは『オレたちひょうきん族』(フジテレビ・1981〜1989)のタケちゃんマンで、『男女7人夏物語』(TBS・1986)のパロディをやった時だった。山田邦子は、ひとりで、大竹しのぶ、池上季実子、賀来千香子三人の役を演じきり、皆、完璧なものまねを披露した。筆者は見ていてそのすごさにぶるぶる震えたのを記憶している。
『ビルマの竪琴』( 市川崑監督・1985)のパロディ『イルマの竪琴(入間の竪琴)』でも、片言の日本語を話す物売りの老婆の北林谷栄役を精神から見事にコピーした。
『スター生たまご』(日本テレビ・1988)という番組で、筆者は構成をやらせてもらった。タレントオーディション番組である。まだ高校生だった吉本新喜劇の島田珠代が抜群に面白かったのを覚えている。
その邦ちゃんが、予選から番組に出ると言っているのである、どんな事情があるにせよ、番組は最大の敬意を払って山田邦子に番組に出てもらうべきである。
山田邦子は出場したら優勝の最右翼ではあるが、それを越える女芸人が出てこないとは限らない。だからこそのコンテストの面白さである。この騒動、吉本興業のなんらかの力が働いたのではないか、ということとか、あまり思いたくない今日この頃なのである。
 
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