<芸人依存の弊害>お笑い番組はなぜ笑えないのか?

エンタメ・芸能

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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見ている人に「笑ってもらうことだけ目的につくられている番組」が、今のテレビには皆無である。まったくない、ゼロである。
情報や感動など全くいらないし、とにかく笑いたいので探してテレビを見る。そんな視聴者が「ああ笑えた」と思う番組に出会うことはおよそない。
「笑点」という番組はそうではないか、という意見が出るだろう。でもこの頃の「笑点」は、もはや様式美を味わう古典芸能になった。大抵は1回も笑わないで30分が終わる。
松本人志の「IPPONグランプリ」はわかりづらい「笑点」だし、昔、大笑いしたほっしゃん(星田英利)の話が飛びだした「すべらない話」の方は、今や、民話を聞いているようだ。時間がもったいないので、音声生かしの倍速で見て丁度いい。
【参考】「アメトーーク」で白々しいボケが見抜かれた芸人は生き残れない
年に1回のお楽しみ「笑ってはいけない」は、ここ数年ジミー大西しか面白くないので、ジミーが登場したら呼んで貰うことにしているが、残念なことにジミーの使い方を間違っていたりする。
「コメディ・タッチのドラマ」を標榜するものがある。これは見ない方がいい。コメディ・タッチのタッチとは「コメディもどき」のことだからである。自分が作ったものではないのに見ていると首筋に寒気が走る。「タッチ」などと言わず、純粋な「コメディ」をつくって欲しい。
笑いはいま、作り手のディレクターの手を離れて、芸人に外部発注されている。それがおそらく笑いの衰退を招いている。
番組の作り手が、芸人や役者を使ってきちんと笑いを演出できるディレクターになれば、その人は天下を取れるのに。・・・と、筆者のような老残の放送作家は思う。
 
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