<朝鮮総連のメディア支配>気に入らないコメンテーターのテレビ出演を激減させる圧力

社会・メディア

高世仁[ジャーナリスト]執筆記事

 

朝鮮総連がテレビ局に圧力をかけて、気に入らないコメンテーターを降ろさせている。

我々テレビ関係者の一部では公然の秘密だったが、5月9日、衆議院「北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会」で取り上げられるなど、この問題がようやく表に出てきた。
排除されているのは、半島情勢の常連コメンテーターだった関西大学の李英和(リヨンファ)教授、デイリーNKの高英起(コヨンギ)東京支局長、コリア国際研究所の朴斗鎮(パク・トゥジン)所長、アジアプレスの石丸次郎氏の4人。朴斗鎮氏が、出演が激減した理由をフジテレビに問い合わせたところ、外信部長が「朝鮮総連からの圧力で出演させることができない」と明言したという。
中央本部が競売で立退きを迫られるなど組織的凋落のなかにあって、朝鮮総連がマスコミに影響力を行使できるのはなぜか。背景には2年前に始まった北朝鮮における日本人の遺骨収集と墓参がある。日本政府が制裁の例外として認める遺族の渡航は、同行するテレビにとっては、平壌を取材するチャンスでもある。取材窓口である朝鮮総連がその「アメ」を活用してテレビ局への発言力を強めているのだ。
この結果、遊園地やイルカショー、ディズニーキャラクターの登場など、北朝鮮に関する華やかで開放的な映像が一気に増えた。金正恩体制のイメージアップ作戦に日本のテレビがまんまと乗せられた格好だ。テレビのスタジオでは「金正恩氏になって社会の雰囲気が明るくなった」とのコメントが頻繁に聞かれたが、そこにはあの「4人」はいなかった。張成沢の粛清劇によって、あの開放的なイメージは偽りだったと判明したのだが、ここ2年の北朝鮮に関する報道は、日本人の北朝鮮に対する認識を大きく狂わせてきた。
墓参という人道問題が、北朝鮮の対日メディア戦略に利用され、4人の排除は今も続く。
 
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