大衆迎合主義に騙されてトランプを選んだ白人の中低所得貧困層

海外

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
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異例である。NHKがずっとアメリカ大統領選挙の速報を流し続けている。
民放は、遠いアメリカの話よりは視聴率の取れると踏んだ博多駅前の大陥没を中継している。
「強者と強者」「金持ちと金持ち」の対決になったアメリカ大統領選挙は、一方の金持ちドナルド・トランプ氏が勝った。ポピュリズム(大衆迎合主義)の勝利である。
一般大衆の利益や権利、願望、不安や恐れを利用して、大衆の支持のもとに既存のエリート主義である体制側や知識人などと対決しているヒーローを装ったトランプ氏。白人の中低所得貧困層が抱く一面的な欲望に迎合して大衆を操作する方法、ポピュリズムが成功したといえよう。
【参考】反グローバリズムがトランプ新大統領を誕生させた
アメリカ国民の中で多数を占める中低所得貧困層は、大統領としてどちらかの金持ちを選ぶ選択肢しかなかった。そして、白人貧困層にとっては、ヒラリー・クリントンがウォール街を占拠する上位1%の富裕層の仲間であることがはっきりしている。
と、すれば消去法で、もしかしたら自分たちに金を回してくれる親分かも知れない「もうひとりの金持ち」に投票するしかない。しかし、トランプ大統領もまた、実質は上位1%の富裕層の仲間なのである。
つまり、結局、貧困層には金は回ってこない。これは間もなく明らかになるだろうが、そうなった時、白人の貧困層、ヒスパニックの貧困層、アジア系の貧困層といった人々は大同団結してアメリカを変えることは出来るのか? はなはだ心もとない。
大衆が大衆迎合主義のトップを選んでも自らが勝つことは決してない。強者はどんな方法でも取りうるが、大衆がとりうる方法は数の力で勝つことのみである。それが民主主義だ。
民主主義で強欲資本主義に勝つしかないが、それをアメリカに望むのはしばらくは無理だろう。
 
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