日米首脳会談巡る日本政府の「ウソ」を露呈させた米国大使の日米FTAの闇

政治経済

上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]
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<日米FTA(自由貿易協定)は本当は議論されていた?>
トランプ米大統領がご執心ながら日本には不利な日米自由貿易協定(FTA)は、先の日米首脳会談で安倍晋三首相と議論していないことになっていた。
ところが、この17日に日本記者クラブで会見したハガティ米国大使は、FTAについても議題に上がったことを明かした上で、「日米FTAが実現する可能性は非常に高い」と言い切ったのだ。安倍政権はFTAでもトランプ氏の言いなりになってしまうのか。
<ハガティ米国大使が会見で首脳会談の内容を明かす>
ハガティ大使は記者会見で、11月6日の日米首脳会談の内容にかなり踏み込んで言及。米国の貿易赤字に対処するため「日米FTAを含むあらゆる選択肢について議論した」と述べ、「日本側の懸念は承知している」「(締結の)時期は設定されていない」としながらも、FTA締結の可能性が高いことを強調した。
<2国間のFTAはTPP以上に米国に有利で日本に不利>
日米が主導したTPP(環太平洋経済連携協定)を脱退したトランプ政権は、関税などで米国がより有利になるとされる2国間のFTAの締結を目指しているが、安倍政権は、今回の日米首脳会談でFTAを巡る議論はなかったと説明してきた。
<国民欺く安倍政権を厳しく追及しない及び腰の報道>
しかし、同大使の会見内容が事実なら政府は国民やメディアに「ウソ」をついてきたことになる。今回、日本記者クラブで初めて会見した就任間もないハガティ大使がわざわざ事実を捏造するとは、常識的に考え難いが、不思議なのは。
この大使発言を新聞やテレビがあまり報じていないことだ。比較的扱いが良かった朝日でも18日付朝刊4面に2段見出しの地味な記事だったが、朝日はまだましな方。「FTA隠し」を批判しなかった他の保守系大手メディアなど、マスコミ全体の問題意識の欠如と、いつもながらの報道の自己規制を痛感せざるを得ない。
 
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