<民放から消えたコント>なぜコント番組はNHKだけになったのか?

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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民放テレビからコント番組が消えた。今やっているのは、NHK「LIFE!~人生に捧げるコント」のみである。その理由として、巷間言われるのは、

「コントは制作費がかかりすぎる、タレントもスケジュールを長く押さえられない」
「それができるのは、いまや、NHKだけである」

・・・ということである。しかし、この意見にコント作家である筆者には異議がある。

まず、コント番組が消えた時期であるが、成功しているコント番組がなくなったのは1990年代初頭である。1992年に「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」(TBS)が終わったときに、趣味的なコント番組を除いて、民放からは成功しているコント番組が消えた。

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テレビにおけるコントの牙城をひとりNHKが守っているかのように言われる際に挙げられるのが「LIFE!~人生に捧げるコント」である。しかしながら、である。果たして、同番組はコント番組として成立しているのだろうか。コントとして成功しているのだろうか。

筆者はその点には懐疑的だ。コントに必要なのは何日も練り込んで台本をつくることではない。ほんの数秒のひらめきでも、おもしろいことはいくらでもある。コントに会わせてリアリティのあるセットを作ることでもない。セット無しでもおもしろいコントは出来る。稽古は必要だが「稽古をやっている」ように見る人に思わせてはいけない。

経験的に、コントに必要な条件はたった3つであると考えている。

(1)笑えること。
(2)意外なこと。
(3)芝居が上手なこと。

どうも、筆者には「LIFE!~人生に捧げるコント」は、この条件には合致しているようには思えないのである。見ているとなんだが恥ずかしくなってしまうような強烈な違和感。もっと普通にやれないのかなあ、と思う気持ち。そんな感じが先行して筆者はこのコント番組に没入することが出来ない。

民放からなぜ、コント番組が消えたのか。その理由はもっと単純だ。コントでは数字(視聴率ぜ)が取れなくなったからである。なぜ、視聴率が取れなくなったかというと、民放がコントの出来る役者や芸人を、コントが撮れる演出家を、コントが書ける作家を育てなくなったからである。コントより簡単に視聴率の取れる方法をみつけたからである。以上の三つは鶏と卵。どれが先かは筆者にも分からない。

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