<大阪発>高次脳機能障害者による祭典「関西まるっと文化祭」が話題
小林春彦[コラムニスト]
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筆者は大阪生まれの神戸育ちで、今は東京を拠点に生活しています。
上京して10年が経った今も、関西弁を真似されると腹が立ち、逆に関西弁を東京で聞くと安心する、という程度に関西人気質。 一方で、高次脳機能障害という見えない障害を10代の脳疾患の後遺症で抱えながら、今日も元気に環状線、もとい山手線に乗っています。 そんなコテコテの西を愛し人生の薄味を好む、という東の筆者の元へと興味深いイベントの案内が舞い込んできました。
高次脳機能障害や失語症を抱えた当事者たちが実行委員を務める「関西まるっと文化祭」が、 10月14日(祝)大阪府立中央図書館(東大阪市)で開催される。
「拘りたいのは、当事者が主体となって運営を回すということ。私の役割は、彼・彼女らにできそうな仕事をバンバン振り分けるだけ。 そこから当事者の居場所や価値が生まれる」
そう語るのは、言語聴覚士として17年のキャリアをもつ「関西まるっと文化祭」の総括コネクター西村紀子さん(49)。 あくまで当事者の影に潜めて裏方で立ち回る、とリアリスティックに語る一方で、 不躾ながら年齢を尋ねたところ「食い扶持に困らない戌年生まれ!大阪万博の年!覚えやすいやろ?」と笑って大阪弁をにじませる生粋の関西人だ。
コンプライアンスやリスク管理やハラスメントもそれぞれ大切な問題としつつ、それが足かせになることもある。 細かいことを言わずそれら全部を大きくとらえて「まるっと」という発想から文化祭のタイトルはネーミングされた。
脳損傷を抱えた当事者会「東大阪え~わの会」の代表を務める松永裕介さん(36)は、20歳の時に脳梗塞に倒れ、 後遺症で高次脳機能障害を抱えている。
「ウチは東大阪市の永和で活動しとるのもあるけど、『オモロかったらえ~わ』とユーモアを大切にしている。ポジティブでオモロい祭りにしたいっす」
と意気込む。松永さんも西村さんと共に当事者として「まるっと文化祭」に向けて準備を進めている一人だ。 西村さんと松永さんは、医療や福祉や行政に関わる人は理解促進のために、 当事者やその家族は繋がりや笑顔を分かち合うために、大勢の方に来てほしいとそれぞれ呼びかけている。
「関西まるっと文化祭」では医療従事者や専門家による講演会や見えない障害に悩む当事者や家族向けの相談ブース、当事者の口笛ライブ、 療法士によるパフォーマンスなど盛りだくさんのコンテンツが用意されています。
筆者もコンタクトを取って直に取材させていただきましたが、 大和魂ならぬ浪花魂で当日はパワフルで関西熱に満ちた一日となりそうです。食い倒れよし。つまみ食いよし。 大阪という人情あふれるお笑いの地に、孤立気味のあなたも遊びに来ませんか。もちろん環状線に乗って。
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