「ニコ生」出て国会には出ない菅首相 -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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菅義偉首相が国会での説明から逃げ回るなら直ちに首相を辞任するべきだ。

11月に感染拡大が鮮明になった。11月12日に国内の新規陽性者数が3ヵ月ぶりに過去最高を更新して1660人になった。11月18日には新規陽性者数が初めて2000人を超えた。東京のGoToトラベルが始動したのが10月1日。その影響を順当に反映して新規陽性者数が急増し始めた。

11月18日の会見で日本医師会の中川俊男会長は「GoToトラベルが感染者増のきっかけになったことは間違いない」と明言した。11月20日には菅内閣のコロナ対策分科会会長の尾身茂氏がGoTo見直しを提言し、「英断を心からお願いする」と述べた。

しかし、菅義偉首相は12月14日にGoToトラベルの全国一時停止を発表するまで何もしなかった。何もしないどころか、11月21日からの3連休に全国各地に人が移動するGoToを全面推進した。11月25日から「勝負の3週間」と唱えたが、実態は「感染拡大推進・勝負の3週間」だった。

GoToの人出急拡大を受けて12月中旬から新規陽性者数の拡大に歯止めがかからなくなった。12月11日のニコ動に「ガースーです」と自己紹介して登場した菅義偉首相はGoToトラベル一時停止について「そこはまだ考えていません」と述べた。

ところが、12月13日発表の毎日新聞世論調査で不支持率が支持率を上回ったことを受けて12月14日に突然のGoTo全国一時停止を表明。しかし、その足で向かったのは銀座での高齢者8人によるステーキ忘年会だった。国民には5人以上の会食を控えるように要請しておきながら、自分は8人での忘年会に参加した。しかし、GoTo一時停止を12月14日に表明しながら、実施は12月28日だった。12月27日まで全国で「駆け込みGoTo」が沸騰した。北陸地方では12月28日までズワイガニ相場が異常高騰を示した。

すべてはGoTo狂騒曲によるもの。12月31日に東京都の新規陽性者数が1000人を超えた。首都圏1都3県の知事が1月2日に緊急事態宣言発出を要請した。このときも菅義偉首相は自分で対応せずに裏に隠れた。支持率がさらに急落することを恐れて、1月4日になって緊急事態宣言発出の「検討に入る」ことを表明したが、このときには1月9日からの実施とする腹積もりだった。1月6日の全国の新規陽性者数が6000人を超えた。GoToで日本全国にウイルスをまき散らしたことに伴う順当な結果だ。

1月7日に菅内閣が緊急事態宣言を発出するにあたり、国会は政府から事前報告を受けることを決めた。国会では1月7日、衆参両院で議院運営委員会を開き、政府からの報告を受ける。時間は各院それぞれ40分。野党は菅義偉首相の出席を求めたが、自民党が拒絶した。例によって森山裕自民党国対委員長と安住淳立憲民主党国対委員長が協議して決めたが、なぜ、安住氏は自民党の言いなりになるのか。

国民が緊急事態に直面している。菅義偉首相が強引に主導したGoToトラベル事業が国民の危機を創出した。菅首相が出てきて説明するのが基本の基本。都合が悪くなると姿をくらまして部下に説明を押し付ける。さすがは令和版インパール大作戦首謀者だ。

しかし、与党の言いなりの安住淳氏も更迭されるべきだ。重大事案であり、衆参両院で2時間ずつ時間を確保して、野党による質疑を行うべきだ。GoToEatと叫んでいた菅義偉首相が一転してDon‘tEatと叫んでいる。国会が菅義偉氏に厳しく問いただすことは当然でないのか。

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