安倍氏は国民が見える場で説明せよ -植草一秀

政治経済

植草一秀[経済評論家]

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安倍首相が国会で完全虚偽の答弁を繰り返していた。国会では安倍首相が関与するスキャンダルのオンパレードだった。国会自体が安倍スキャンダルの総合商社の様相を示した。森友、加計、桜のトリプル疑惑。河井案里氏の参議院議員選挙の際には安倍事務所の要員が選挙活動を仕切っていたと伝えられている。

河井克行・案里夫妻は公職選挙法違反で起訴され、公判で審理が行われている。さらに、安倍晋三氏自身が暴力団関係者に面会して選挙妨害を依頼したとの疑惑も存在する。2017年2月17日の衆院予算委員会で福島伸亨衆議院議員の質問に対して安倍晋三氏が、

「いずれにいたしましても、繰り返して申し上げますが、私も妻も一切、この認可にもあるいは国有地の払い下げにも関係ないわけでありまして、(中略)私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい」

と答弁して以来、国会審議の大半は安倍スキャンダルに充当されてきたと言って過言でない。すべての疑惑は、いまなおまったく解消されていない。このなかで、いまから1年余り前の2019年11月の参院予算委員会で日本共産党の田村智子議員が桜疑惑について問いただした。政府主催行事の「桜を見る会」に安倍首相が後援会関係者を多数招待しているのではないかと追及したのだ。

これを契機に桜疑惑も一気に拡大した。政府主催行事であるにもかかわらず、安倍首相が自分自身の後援会関係者を多数招待していることが判明した。後援会関係者は大挙して上京し、桜を見る会の前夜には、全日空ホテルやホテルニューオータニで大規模な前夜祭が開催されていた。その前夜祭の参加費が一人5000円であることが明らかになり、常識をかけ離れた低価格にも疑問が集まった。

国会答弁で安倍首相は、

*前夜祭について安倍事務所が関与していないこと

*前夜祭の契約は参加者各個人とホテルとの契約によるもので、安倍事務所は無関係であること

*参加費はそのままホテルに手渡され、ホテルから個々の参加者に領収書が手交された

*安倍事務所とホテルとの間では見積書の交付も請求書、領収書等のやり取りも一切なかったこと

などを繰り返し説明した。ところが、これらの安倍晋三氏の国会答弁がすべて真っ赤なウソだったことが判明した。ホテルと契約したのは安倍晋三氏が代表を務める政治資金管理団体の「晋和会」だった。

前夜祭に参加した後援会関係者が1人5千円の会費を支払い、後援会の収入、支出は一切ないという、安倍氏の説明は虚偽で、安倍氏側が毎年200万円前後を補填していたこと、ホテルは後援会でなく安倍氏の資金管理団体である「晋和会」に領収書を出していたことなどが検察の捜査で判明した。

東京地検特捜部は安倍氏の公設第一秘書で後援会代表の配川博之氏らから事情聴取をしており、年内にも政治資金規正法違反の罪で略式起訴する方針だと伝えられている。「晋和会」の責任者である安倍晋三氏は違法行為について認識していなかったことにして、秘書が略式起訴され、安倍晋三氏は不起訴になると報じられている。

その安倍晋三氏を国会に招致することが検討されていることも報じられている。重大な犯罪が秘書の略式起訴、責任者の無罪放免、かたちばかりの国会での陳述で済まそうというストーリーが公然と流布されている。こんな国民を愚弄する決着が許されてよいわけがない。まず注目しなければならないのは立憲民主党の対応だ。いつものように国対委員長の安住淳氏が登場している。

安住淳氏は12月18日、「総理を辞めて3ヵ月後に東京地検特捜部の捜査対象になっている。虚偽答弁がずっと残ることになったら、憲政史上の汚点だ」とした上で、

「責任の重さを考えれば、今年中に実現するのが当然のこと」

「最低限、国民の皆さんが生でその一挙手一投足を見られる形にしなかったら国会に来る意味がない」

と発言した。

「言うだけ番長」とならぬよう、安倍晋三氏の予算委員会への招致が最低限必要だ。安住氏がいつものように森山裕自民党国対委員長の言いなりにならないか、監視が必要だ。

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