東京ガールズコレクション創業者が創るNFT短編アニメ

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藤本貴之[東洋大学 教授・博士(学術)/メディア学者]

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世界的な注目が続くNFT(非代替性トークン: non fungible token)市場。日本でも急速な認知と関心が高まっている。一方で、「NFTバブルか?」と言われれことも多くなるが、それでも取引額の爆発的な増加傾向はさらに続くと見られている。ブロックチェーンデータ会社のChainalysis社の発表によれば、NFT元年とされた昨年の2021年のNFTの取引額は既に409億ドル(約4兆7100億円)と推定されており、今後5年間で少なくとも数十兆円規模へ成長するのはほぼ確実だという。

NFTの認知の高まりに合わせて、さまざまなNFT関連のコンテンツや商材が登場している。「子供が描いたJPEG画像や落書きが何千万円もの価格をつけるんでしょ?」といった、初期のデタラメ投機的な注目から、よりビジネス的に洗練され、評価と成長が定まったコンテンツへの投資へと舵は切られていると見るべきだろう。今後NFTによるデジタルコンテンツ、デジタルアートがさまざまに登場し、NFTアートという領域そのものの価値とクオリティを高めてゆくことは想像に難くない。

例えば、すでに各メディアでも報じられているが、東京ガールズコレクション(TGC)の創業者として知られるJake Ohama氏(大浜史太郎)がTGCに代わる新しいムーヴメントの展開先として、NFTを選び、本格参入を表明したことは、メディアゴンでも独占取材として報じた(https://onl.la/QCj4KPG)。そして今回、デジタルアートやアニメーションの企画や製作を手掛けるSUNSPRING株式会社(東京都港区代表取締役・泉丈晴)が、NFTプロジェクトの第一弾として短編アニメ映画を企画製作する事を発表した。

手掛けるNFTは、広島が舞台のNFT連動の短編アニメーション映画『櫻姫物語(さくらひめものがたり) ー無条件の花ー(仮)』( 原作・櫻式部、企画・SUNSPRING株式会社、製作・櫻姫物語製作実行委員会)である。 注目するのは、SUNSPRING社が企画する短編映画の監督及びプロジェクトの総指揮に、東京ガールズコレクション(TGC)創業者・大浜史太郎氏を迎えて、プロデュース面で業務提携の契約を発表したことだ。 大浜氏と言えば、東京ガールズコレクションや神戸コレクションなど、東京都や神戸市などの自治体を巻き込んで『日本国内の2大メガファッションショーを生み出すなど、『地元密着型の経済の活性化』を得意とする仕掛人としても知られる。

[参考]<NFTで新展開>東京ガールズコレクション創業者がNFT参入へ

今回製作されるアニメーション作品『櫻姫物語』の物語の舞台は、1940年前後の広島。花の妖精のお姫様『さくら姫』が主人公。この物語は原爆前後の日本を捉えたファンタジーアニメーションとして描かれているという。コロナ禍後の世界を私たちがどう生きていくのかを考えさせられる、人類が共通して直面している苦悩と挑戦がテーマ。

NFTとの連動についてであるが、これは本作の各シーンで描かれる美しい桜や花々、そして登場人物のキャラクターをNFTでプロモーション展開していくという。アニメーション映画を構成するさまざまなパーツ、要素がNFTのデジタルコンテンツ化されるというわけだ。非常にユニークな試みである。また、これがジブリやディズニーで導入されれば、恐るべき金額を叩き出すことになるだろう。誰でもが作品パーツの所有者になれるのだから。今後のNFTコンテンツのあり方を予見する、非常に魅力的な手法だと思う。

SUNSPRING株式会社の泉丈晴社長は次のように意気込みを語る。

「今回のプロジェクトの中軸は、やはり”デジタル献花”になるのではないでしょうか。物語のメッセージをデジタルフラワーや映画内で描かれる美しい風景、そして登場人物のキャラクターなど、あえてNFTで展開してプロモーションしていくことで、一人でも多くの方の関心を世界中から集められるのではないかと考えました。NFTで成立した収益の一部は、広島市への寄付や広島県内の桜の木の植樹や保全の活動をしているNPO団体に貢献していく予定です。今回のプロジェクトはどれだけ多くの人に育ててもらえるのか、私達も温かく見守りたいと考えています。」

もちろん、短編アニメーション企画は、大浜氏が今後さまざまに展開を予定している「NFTデジタル芸術運動」プロジェクトの一端に過ぎない。言うまでもなく、大浜氏が得意とする女性ファッションなどへの展開も想像できる。NFTとファッションの連動? どのようなものがあるのか想像もできないが、ワクワクする。

NFTという新しい手法と市場の登場によって、デジタルコンテンツのあり方は大きく変貌しつつある。「金になりづらい」「怪しい」「複製が容易」と思われがちなデジタルコンテンツにおいて、信頼性を担保するNFTを導入したコンテンツ展開プロジェクトへの可能性と期待は大きい。

 

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