<バックステージ情報満載!の舞台・演劇評>ヤン・リーピンの孔雀

映画・舞台・音楽

熊谷信也[新赤坂BLITZ初代支配人]

[作品名]ヤン・リーピンの孔雀ヤン・リーピンの孔雀

[公式サイト]http://www.tbs.co.jp/event/ylp2014/

[観劇した日・場所]2014年5月23日 渋谷文化村オーチャードホール

絶世の美女と言われる中国国家第一級舞踏家のヤン・リーピン。中国では知らない人はもう誰もいないだろう。その4度目の来日公演。 なにしろすごい。人生を四季になぞらえたオリジナルストーリー。

中国語では舞劇、英語ではDance Dramaといい台詞は一切ない。2時間あまりをダンスとジェスチャーで物語を表現する。

2007年初めてヤンさんと出会ったとき私は当たり前の質問をした。

「踊りの先生はどなたですか?」

ヤンさんは、ちょつと困った顔をしてこう答えた。

「先生はいません、強いて言うなら昆虫です」

と。驚愕が走る。

何???それもそのはず、彼女の踊りはクラッシック・バレエでも中国雑技でも京劇でもないのだ。代々、村々に伝わる伝統舞踊・伝統芸能に焦点を絞り、中国全土を自分の足で回り私財をなげうって集め、2年がかりでその舞踊を現代に蘇らせた張本人なのだから。

「群舞の振り付けを考えるときは蟻の動きをじーっと凝視します。そうすると全体の踊りの構成が見えてくるんです」

そんな彼女の新作に興味が尽きることはない。

「時間」役のツアイ・チーは一幕・休憩・二幕合計2時間半を狭い下手回転台の上で自力で回り続ける。エンディングでは2時間、一度も休むこともなく回り続けていたにもかかわらず何事もなかったようにピタリと止まりポーズを決める。

この緊張感は劇場で体験するしかない。全てが規格外。そしてその衣装、舞台美術セットデザインを「グリーン・ディスティニー」でアカデミー賞を受賞したティム・イップが手がけている。これ以上の興味はないかもしれない。

6月1日まで東京。6月7、8日大阪。

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