<風力発電は机上の空論>日本をすべて風力発電にすると国土の11分の1が風車で埋まる
石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]
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2011年3月の東日本大震災による東京電力・福島第一原子力発電所の事故以来、原発をゼロにして、代わりに自然エネルギー(再生可能エネルギー)を!とあちこちで叫ばれている。
最もよく挙げられるのが「太陽光発電」と「風力発電」。エネルギー源は自然の恵みである太陽や風だし、石油・ガスや石炭のようにCO2が出ることもない。耳ざわりも良く、理想のエネルギー源のようにさえ思える。
しかし残念ながら、「太陽光」や「風力」は、天候に左右されてしまう。特に「太陽光」は昼間しか発電しない。だから、「太陽光」も「風力」も、長期安定的に発電する「原子力の代替」にはなり得ない。
ところが、もし風が一定の強さで吹き続ける理想状態になれば風力発電は長期安定的に発電することができる、と主張する人もいる。
殆どあり得ない話ではあるのだが、仮にそのような理想状態において「風力発電だけ」で日本国内の全ての電力を賄うとした場合、どのようなことになるだろうか。
電力10社の過去5年間(2009~13年度)での年間平均発電量は9,597億kWh。これを設備利用率100%で発電する設備容量は約1.1億kW。最近の風力発電機の設備容量は1基当たり約2千kW(13年度実績)。設備利用率は概ね20%なので、必要となる風力発電機の数は約27万5千基となる。(1.1億kW ÷ 2千kW/基 × 100%/20% = 27万5千基)
国内の風力発電機は13年度末で1,934基なので、この約142倍の規模の風力発電機を今後設置する必要がある。ではこの場合、どのくらいの敷地面積が必要になるのだろうか?
下の図のように、風力発電約350万kWで214㎞2の敷地面積となるので、総じて33,629平方キロメートルとなる。(1.1億kW × 100%/20% ÷ 350万kW × 214km2 = 33,629km2)
(出所:九州電力ホームページ)
日本の国土面積は377,835平方キロメートルなので、日本が風力発電だけで生きていくとしたら、「国土の11分の1」の面積で風が一定の強さで吹き続ける理想状態の場所に風力発電機を27万5千基ほど設置する必要がある。
これは、東京都の面積の15倍、岩手・宮城・福島3県の合計より若干小さいくらいの広さだ。どう考えても現実味のあることではない。「日本全国土の11分の1」を風車で埋める覚悟がもしできたとしても、そんなに都合よく風は吹かない。
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