<「つまようじ混入事件」をどう見る>模倣犯を誘発する?日本テレビ「真相報道 バンキシャ!」の報道手法に異議

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家]
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その報道の仕方は異様なほど執拗だと筆者には思えた。日本テレビ系列の『真相報道 バンキシャ!』でのことである。
スーパーでスナック菓子につまようじを入れる様子を実況した動画などがネットに投稿された事件で、警視庁は2014年1月18日、建造物侵入の疑いで指名手配していた東京都三鷹市の無職少年(19)を滋賀県内で逮捕した。
この逮捕劇について、『真相報道 バンキシャ!』での報道は微に入り細をうがつものであった。「これはまずい」と、筆者は思った。なぜか。
理由を述べる前に筆者のニュース報道に対するスタンスを明らかにしておく。

「おもしろくできる自信のあるもので、おもしろくしても良いと判断したものは、徹底的におもしろくする」

である。
硬い政治ニュースでも、欲望むき出しの権力闘争でも、数字が飛び交い頭がパニックになる経済ニュースでも、全く知らない単語が出て来る科学ニュースでも、目を背けたくなる男と女の殺人事件でも、遠い国で発生した宗教のニュースでも、「おもしろくしても良いと判断したものは、徹底的におもしろくする」。
だが、おもしろくしてはいけないニュースがある。以下に例を挙げる。

  • 悪意のある他者に手口を教えるもの:安価な地雷を製造する方法を、映像にした。ところが、すぐにまずいと気づいた。これを見れば地雷が作れてしまうのである。
  • おもしろく報道されることが容疑者の目的の一つと考えられる犯罪ニュース:愉快犯と言い換えてもよい。今回のつまようじ混入事件はまさしくこれに当たる。

『真相報道 バンキシャ!』では、逃走経路を図解入りで説明し、投稿した動画を繰り返し使い、プレビュー数を誇らしげに語る音声(声は変えてある)を使い、防犯カメラの映像から手がかりをさがし、音声分析をして動画の発信場所を推測する。
この伝え方は、「こんなことをしても、あなたはすぐ捕まるのです」と言うメッセージであると言うこともできるが、逆に、「あなたの犯罪は、ほら、こんな風に世の中の興味関心を喚起しているんですよ」と言う、呼びかけにもなってしまっている。模倣犯が心配だ。
ネット上での根拠のない人格否定投稿などに対しての、最も有効な対策は「無視」である。騒げば、騒ぐほど悪意の投稿者は増長する。(ただし、エスカレートしすぎの時は、法律の裁きに訴えでる必要がある)
『真相報道 バンキシャ!』の報道と対極にあったのが、NHKのニュース。少年の逮捕事実を淡々と伝えたのみである。筆者は今回の場合、NHKのような伝え方が妥当であると思う。
当該少年の容疑は今のところ微罪である。今回のケースで、ニュースは、犯罪は必ず裁かれる。それを伝えれば良いだけである。
 
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