<グーグルはすべての検索エンジンを駆逐する>集合知を活かした「はてな」の「人力検索」を超える日


齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]

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検索といえばグーグル、ということがあたりまえな世代はともかく、今となっては消え去った多くの検索エンジンの中から、グーグルの検索が圧倒的に支持されたのには理由があった。

ページランクという考え方を導入し、それまでのかなり精度の悪い(イラッと来る)検索結果を大幅に改善したからだ。その後も、グーグルは検索エンジンを改善し続け、検索する人々からの検索ワードを蓄積しながら進化しているようだ。

ひとつは曖昧検索のような機能で、1文字間違えて検索ワードを入れる。たとえば「google」といれるべきを「gogle」といれると、「もしかして:google」と表示しながらgogleの検索結果を表示する。単なる打ち込み間違いか勘違い、記憶違いなら、「もしかして」のほうをクリックすればその結果が表示されるというわけだ。

または「阿部総理」と検索ワードを入れると、「『安倍総理』の検索結果を表示」として安倍総理の関連ページを表示してくる。こちらは総理という言葉と安倍・阿部という漢字と読み仮名をかけあわせて、安倍総理の間違いだとアルゴリズムが判断し表示自体がそちらの検索結果に切り替わっている。

さらに深堀したい向きには、「and検索」も可能で、「安倍総理 今何が問題になっているか」といれれば最近の安倍総理が力をいれている施策の内容や評判、評価について論じているページを表示してくれる。ここまでくると検索といいつつそこそこ使えるアシスタント程度の働きをしてくれる感がある。

一方で、「はてな」という会社の「人力検索」というサービスは、黎明期でまだまだ精度の悪かった検索サービスの時代に、検索の精度をあげるのではなく集合知という人力で補うというユニークな発想のサービスである。

システムは簡単で、あるトピックに関して知りたいことをアップすると、それを見ている人たちでそのことに詳しい人たちが答えて解説をする。ウェブサービスの会社のユーザーたちなので、その解答や解説には、関連するウェブ上のページのリンクを張って、その妥当性を証明するのがお約束にもなっている。

他に似たようなものとしては「教えて!goo」や「Yahoo!知恵袋」などがあるが、ユーザーに偏りがある分(IT関連の仕事に従事する人が多いようでブログにもその話題が多い。これはブックマーク=いいと思うブログ記事に「いいね」をつける機能があり評判となる記事の内容からの推定だが)、よりクローズドで解答も比較的簡潔、根拠を示すなど良心的であるという印象だ。

使い方はこんな感じだ。

「○○という作家の、黄色い風船の絵の表紙の絵本のタイトルがわかりません。どなたか教えてください」

という質問が出る。当然ながら、質問者もそこそこウェブに強い人が多いので、最近だったらアマゾンなどで画像情報と一緒に検索すればある程度は調べられるが、それでもわからない場合は、人力=人の記憶や、たまたま同じ本を持っている人、あるいはその○○という作家に詳しい絵本の出版業界の人などが質問者を助けられる、というわけだ。

回答者にはちょっとしたお礼の言葉とともにポイントを渡すシステムになっている。このポイントは他者の質問に回答することで稼ぐこともできるが、購入することもできる。ただ、謝礼=ポイントはごくわずかなので、このシステム自体は「相互扶助的ボランティア精神」で成り立っていることがわかるだろう。

ウェブの黎明期から普及期にかけて、ウェブの仕組みの中にはリナックス(著作権フリーのOSとして公開され、全世界のボランティアの開発者によって改良が重ねられた)に典型的な集合知を活用するという性善説にのっとったものが多かった。はてなの人力検索も、その思想に基づいている。

その後、グーグルの検索が進化を遂げるにつれ、ここででる質問もごくシンプルなのは激減し、また類似サービスに流れたものもあり、と面変わりしてきているようだ。

グーグルでは、以前g-mailに内容に連動した広告を表示するということが物議をかもしたことがあるが(2013年7月、現在では非表示を選択することもできる)、たとえば「GoogleNow」というサービスを使うと、g-mailやGoogleカレンダーの内容や表示を読みに行き、今日そのユーザーがニューヨークに出張すると「わかれば」その日の朝には、ニューヨークの天気と気温がGoogle Nowのページに表示される、というわけだ。

先にあげた曖昧検索や検索ワードを複数いれていく検索を組み合わせていくと、「安倍総理 今何が問題になっているか」と検索することも可能で、試しにやってみればその結果表示された記事の多くは、“まるでこの件に詳しい人に聞いて教えてもらったような”内容となることがわかる。

グーグルはこの検索の精度をさらに向上させ、また結果の表示方法も改善を重ねているため、単なる言葉の検索を超えて、そのユーザーの“気の利いたアシスタント”を目指しているともいえるようだ。

検索窓に向かってつぶやくこと(今は多くの人が入力しているが)で、その知りたいことをその人の検索履歴を通してセレクトすることをグーグルはすでに実用化している。ブラックベリーと検索窓に打ち込んだ人が、料理や園芸好きならキイチゴ科の果物をトップ表示し、IT関連の仕事に従事する人なら携帯端末のブラックベリーを表示するというように。

(ちなみに筆者が検索したところ、「ブラックベリー 端末」といれたときは当然、携帯端末を中心に表示され、単なる「ブラックベリー」の場合は両方が表示されたが、おそらく直前の検索履歴のせいか、トップ表示はブラックベリー端末を解説するウィキペディアのページだった)

グーグル検索は、ウェブページを総ざらいするビックデータまで含めた活用と個人向けのデータの蓄積からの傾向解析を掛け合わせることで個人のアシスタントを目指している。

となると、ユニークな発想である時期に支持を集めた「はてな」という会社の人力検索も曲がり角にきているといえよう。

とはいえ、「こういうことがあるけど、困っているんだ」というつぶやきがLINEやSNSで飛び交い、それに答えてくれる人力検索的な相互扶助は、よりパーソナルな場ではまだまだ生き残っており、機能しているに違いない。

時代が変わり、インターネットの世界でもアイデア勝負だけではなくなり資本力の差が出始めた、ともいえるのだが、とはいえ、この世界にはまだ未踏のブルーオーシャンがある。

玉石混交、信頼度に落ちる、といわれて久しいネット上の情報だが、マスコミ発の情報がネット配信されはじめると、取材力の差が信頼度につながり、ニュースのような時事ネタはマスコミ発の情報が支持を集めてゆき、取材力=資金力の劣る情報は淘汰され始める。

取材力=情報の裏を取る作業、あるいはその分野の専門的な知識の有無によって情報の確度があがるからだ。

検索の精度を上げることとは、より確かで信頼性のある情報をピックアップすること、できるなら根拠も明示してそれを検証しにいけること、それを見た人が、さらに自己の判断や物の見方を鍛えていくことができること、などに肝がありそうだ。

単に検索窓に表示される情報を見るだけでは、ものの見方や判断は鍛えられない。パーソナルアシスタントが優秀でも、最後にその情報をどう活用するかは、やはり最後はその人の判断だから。

検索エンジンのそう長くない歴史からは、インターネットの黎明期から発展期を経た今後の道筋がうっすら見えてくる。日本のウェブサービスも、巨人となってしまったグーグルに同じやり方で立ち向かっても勝ち目はない。

もう一段飛躍する、根本から発想の子となるアイデアが必要ということだろう。

 

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齋藤祐子

齋藤祐子(さいとう・ゆうこ) 1984年、筑波大学卒。現在、文化施設に勤務。文化政策や現代美術、落語等の分野に関心が深い。