<琴奨菊が初優勝>10年ぶり!日本人力士の大相撲優勝

エンタメ・芸能

北出幸一[相撲記者・元NHK宇都宮放送局長]
***
優勝インタビューで見せた笑顔
千秋楽、豪栄道を破って14勝1敗の成績で初優勝を果たした琴奨菊。その優勝は日本出身力士の優勝を10年間待ち続けた大相撲ファン悲願の優勝だった。
モンゴル出身の旭天鵬が日本に帰化して平成24年夏場所に優勝しているが、日本出身としては平成18年初場所の栃東以来で10年ぶりとなる。初めて賜盃を手にした琴奨菊は恒例の土俵下でのインタビューでおだやかな笑顔を見せた。

「言葉に表せないくらいうれしいです。やるべきことをしっかりやっておのずと結果が出て本当にうれしかった」

と話していた。
琴奨菊にとって、初優勝までの道のりは決して平たんなものではなかった。平成23年九州場所に大関に昇進してから、右大胸筋断裂や左膝のじん帯損傷などで5回カド番を経験し、昨年九州場所でも勝ち越しを決めてから左足筋肉のケガで休場していた。
最古参の大関として、まさに満身創痍で土俵を務めていたのである。
初場所前、優勝争いは白鵬、日馬富士、鶴竜のモンゴルの3横綱を中心に展開して日本人の3大関がどこまで絡んでいけるのかと見られていた。
琴奨菊は初日から好調に勝ち進み、白鵬とともに白星を9個重ねて横綱3連戦、初場所最大のヤマ場を迎えた。
3横綱を破ったあとの落とし穴
10日目の相手鶴竜は過去の対戦成績は琴奨菊の18勝20敗と互角である。琴奨菊が左を差して一気のがぶり寄りで圧倒した。
11日目は白鵬戦。過去白鵬が46勝4敗と琴奨菊をまったく相手にしていない。初優勝のためにはどうしても倒さなければならない大きな壁である。
琴奨菊は出足鋭く攻め切って、白鵬に「いままでで一番よかった」と言わせる相撲でただ1人全勝を守る。
12日目の日馬富士戦で琴奨菊はがぶり寄りで攻め立てて小手投げを決め「やるべきことをしっかりやって出し切った」と全勝に納得していた。
初優勝に向けて大きく前進したところで落とし穴が待っていた。13日目は小学生のころから共に競ってきた親友の豊ノ島が相手。
過去の対戦も琴奨菊が26勝12敗で有利だったが豊ノ島は土俵際でとったりで琴奨菊に土をつけた。琴奨菊は風呂と3回叫び、悔しさをあらわにした。
ここで琴奨菊は「攻めたのだからしょうがない」と見事に切り替えた。14日目、武の悪い栃煌山を一気に寄り切り、白鵬が敗れたため再び優勝争いのトップに立った。
千秋楽は豪栄道を難なく突き落して初優勝を果たした。支度部屋でまげを直しながら琴奨菊は「プレッシャーはまったくなかった。
自分の相撲を取り切ることしか考えていない」と大一番に臨んでもおだやかだった心境を明らかにした。
春場所は綱とり挑戦
初優勝を果たした琴奨菊は春場所が綱とりの場所になる。琴奨菊は今年32歳となるが、師匠だった先代の佐渡ケ嶽親方(元横綱琴櫻)は32歳と2か月で横綱に昇進し『遅咲きの桜』と言われた。師匠と同じ年齢で綱とりに挑戦するのも何かの縁と言えるのではないか。
モンゴルの3横綱を破り精神面で一回り成長した琴奨菊。3代目若乃花以来18年ぶりの日本人横綱は誕生するのか、春場所の琴奨菊の土俵から目が離せない。
 
【あわせて読みたい】