日経新聞でやっと出てきた真っ当な「再生可能エネルギー」報道


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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5月10日付け日本経済新聞(電子版)では、同社の竹田忍編集委員が「脱原子力政策と再生可能エネルギーシフトを推進するドイツについて、現地事情に詳しいスイスの大手電力会社、アルピックのヴォルフガング・デンク渉外担当官に聞いた」として、次のような同氏のコメントなどを掲載している。

  • 再エネは化石燃料や原子力を代替しなかった。
  • 石炭火力は需給調整機能も担い、簡単には廃止できない規制がドイツにはある。火力と原子力の両方を減らすのは現実的でなく不可能だ。
  • (再エネの余剰電力分について)輸出は年々増加しており、13年は338億キロワット時、15年は518億キロワット時の余剰電力をスイスやチェコ、ポーランドなど周辺国に輸出した。
  • EUでドイツは統合送電網の拡充を主張している。統合というと聞こえは良いが、輸入側の実需を伴わない電力が流入しやすくなる仕組みは電力市場のゆがみを引き起こしかねない。
  • (ドイツ北部の大規模な風力発電、洋上風力発電の設備について)いずれも巨額の投資を要し、地球環境問題への対策と言うよりも有力なビジネスと化した。
  • 風力推進と山林保護という環境保護団体同士の間で利害の対立から緊張が生じている。
  • CO2削減を優先するのならば(再エネの増強よりも)化石燃料を減らすべきだ。
  • 私見だが、ドイツが工業国であり続けるためには火力発電が必要。温暖化ガス排出問題で比べると原子力発電所が多いフランスは優等生で、ドイツはワーストだ。

また、2013年にドイツのエネルギー産業が排出したCO2はEU加盟国中で最多とも書いている。

因みに、ドイツの再エネ政策については、私がドイツ政府関係機関など10ヶ所に対して現地で調査ヒアリングを行った結果報告『再生可能エネルギー政策に関するドイツ調査報告[2015年3月21日:石川和男]』に詳しいので、適宜参照されたい。(http://iigssp.org/activity/report_150321_01.pdf

そして、この記事の最後段では、竹田編集委員の言葉として、次のように締め括っている。

  • イメージに引きずられてドイツを単純に模倣しようとするのは拙速である。
  • 日本とドイツは別の国で、国情も違う。
  • 現地の実情を精査せず無批判に何でも受け入れるドイツ礼賛論と、脱原発政策への反発を背景とした極端なドイツ否定論の間に、日本の針路はある。

日経新聞の論調として、「再エネは化石燃料や原子力を代替しなかった」など上記のような趣旨が報じられるようになったのは、再エネ報道の在り方として健全化の兆しが出てきたものと評価したい。

【参考】<高コストで不安定な再生可能エネルギー>2014年度の「再エネ補助金」は1兆円を超える見通し

日経新聞は、『太陽光の購入量 原発1基分に』(2014年8月20日付)や、『風力増強原発10基分に』(2016年2月19日付)など、あたかも太陽光・風力は原子力を代替できるかの如くの大誤解を招く書きぶりを繰り返してきた。

今後はこうした嘘報が是正され、適格な知識と認識の下での再エネ報道がなされていくことを、切に期待するものである。

将来、『再エネ100%』の時代は必ず来るだろう。しかし、今すぐは無理だ。人類はまだそれを普及できるほどの技術を持っていない。

再エネに対する夢見心地はそろそろおしまいにして、現実を直視していか無ければならない。

 

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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。