NHK「あさイチ」に届いた特集を全否定する視聴者からのFAX


保科省吾[コラムニスト]

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野菜が高い。近くのスーパーでもハクサイ1玉650円、キャベツ1玉350円、ダイコン1本290円・・・。レタスは298円だった。値段を見て買うのを止めた。

「どうにかしなければ今夜の鍋も出来ない!」と思っていたらNHK『あさイチ』で、「冷凍野菜を使おう」というと特集をやっていた。なるほど、この頃の冷凍技術は長足の進歩を遂げていて、生鮮野菜と遜色はない。

旬の最も安いときに生産者から大量に購入して冷凍するので値段も安定しているという。そんなことをやっているこの日の放送で、スタジオに一通のFAXが送られてきた。趣旨は以下のようなものだ。

「私は野菜農家です。天候不順で収量が上がりません。値段は上がっていますが、ぎりぎりでやっています。こういうときに、野菜は買わないで・・・。と言う特集をやられて、野菜が売れなくなると、生活がたちゆきません。普段より高くて申しわけありませんが、できれば野菜を買って下さい」

この、FAXを読むように有働アナに指示したNHKのスタッフに敬意を表する。

虚を突かれたのだろう、スタジオにいた井ノ原さん始め、誰も反応しない。何しろ番組の趣旨を否定する内容なのだから。そして、以降は何もなかったように番組は進行した。しかし、筆者はがーんと頭を殴られたような気がしていた。

【参考】<有働アナと井ノ原快彦を信じない?>NHK「あさイチ」でなぜ「ありきたりな中継リポート」が起きたのか?

レタスが298円、普段よりたかだか100円高いだけだ。スマホの通信料の高さに比べたら何ほどのことか。筆者はスーパーにとって返してレタスを買ってしまった。マヨネーズをかけて1コ全部食べたら、やはり生の野菜はうまかった。

野菜の美味しさ噛み締めながら、筆者は思わず反省してしまった。

「私は日々、自分が損か得かだけを考えて暮らしていないか」

「相手の立場を想像する余裕がなくなってはいまいか」

たとえば、スーパーで商品をひっくり返して、賞味期限を確かめる、出来るだけ長いものを選ぶ。でも待て。今日食べてしまうものなら賞味期限が短いモノでもよいじゃないか。

筆者は今のところ毎日スーパーに行けるのだから、賞味期限長いものは週に1回しかスーパに来られない人のために棚に残しておくべきではないのか。

それに、と思う。よく考えてみると損か得かだけを考えて行動することは、世の中の金儲けの上手い人、言いかえれば上位1%の富裕層の罠にはまっているのではないかと思えてきたのである。

強欲資本主義の奴隷。

「損か得か」それだけでの判断基準から逃れれば、獲れすぎたキャベツをブルドーザーで潰して生産調整をするようなバカなこともなくなるのではないか。常識で考えておかしいことは「やはり、おかしい」と考えられるようにしたいものだ。

 

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メディアゴン 編集部

メディアゴン編集部(めでぃあごんへんしゅうぶ)2014年5月末日、東京生まれ。メディア批評・メディア評論に特化したメディア専門家によるメディアニュースサイト。キー局プロデューサー、ディレクター、イベントプロデューサー、放送作家、大学教授、評論家、ゲーム作家、弁護士・・・などなど、メディアの第一線で活躍する人材が活動中。