一番大事なことは売国政権を早く退場させること -植草一秀


植草一秀[経済評論家]

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先日、2月9日、正午から午後1時半までの1時間半、首相官邸前で「TPPも日米二国間交渉も許さない!官邸前アクション」が実施された。

みぞれ交じりの冷雨が降りしきるなか、私たちのいのちとくらしを守るために、安倍首相の売国行動をいさめる訴えが、首相官邸に向けて投げかけられた。筆者のブログ、メルマガでも主権者国民の集結を呼び掛けたが、多くの主権者、市民が集結してくださった。

政治は本来、主権者のものである。ところが、選挙を通じて主権者の意思が正しく議席数に反映されていない。そのために、安倍政権が誕生し、この安倍政権が主権者の利益に反する政治を行っている。これを是正するには、安倍政権を退陣させ、主権者国民の意思を正しく現実政治に反映する新政権を樹立することが必要不可欠だ。

官邸前アクションに参加した人々から、このような意見が相次いで表明された。安倍首相は訪米し、日米首脳会談に臨むが、これまで国益を損ねる外交、主権者を欺く行動を繰り返してきただけに、今回もさらに売国行為を積み重ねることが懸念されている。TPPの外交実績を踏まえると、この懸念を拭いさることはできない。

TPPとはどのようなものであったのか。自由貿易で日本の消費者にメリットがあると説明されてきた。代表例は米国産牛肉のステーキが安く食べられるというもの。

しかし、米国産牛肉は危険であるとの指摘は根強い。成長ホルモンやラクトパミンの使用が米国では認められている。しかし、成長ホルモンやラクトパミンを注入された肉を摂取すると前立腺がんや乳がんの発症確率が高くなるとの研究結果が示されている。

しかし、「因果関係の科学的証明」のハードルは高く設定されている。「挙証責任」が供給者に課せられていれば、「安全性が科学的に証明された」肉しか提供されないことになるが、「挙証責任」が消費者の側に課せられると、「危険性が科学的に証明される」までは、リスクのある肉が提供され続けることになる。

TPPでは、国が「予防原則」に立って、「リスクのある」食品を規制すると、投資家が規制によって損害を蒙ったと提訴することができる。国際仲裁機関が投資家の訴えを認めると、国は損害賠償に応じなければならず、規制も撤廃されることになる。

TPPに参加するために、日本政府は農林水産品についても関税を大幅に撤廃した。聖域として守るとしてきた重要5品目についても、タリフラインで約3割が関税撤廃となり、聖域として関税率を完全に守った品目は1品目もないという状況になった。

その一方で、日本が関税撤廃でメリットを受ける、自動車の対米輸出については、乗用車では14年間、SUVを含むトラックでは29年間関税率をまったく引き下げないことが決定された。これがTPPの真実なのである。つまり、日本の国益を全面的に放棄して、日本の要求は実現率ゼロ、外国の要求は実現率100%という「売国の交渉」が行われてきたのだ。

そのTPPであるから、トランプ大統領が離脱意向を示し、発効する可能性が低下した時点で、日本は批准を見送るべきだったが、安倍政権はTPP批准に突き進んだ。そして、いま、米国は日米2国間協議を行う場合には、TPP水準を出発点にすることを示唆している。

このようなスタンスで交渉を進められたのでは、国民はたまらない。

安倍首相の売国外交を直ちにやめさせるとともに、この「売国政権」を一刻も早く退場させねばならない。

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植草一秀(うえくさ・かずひで) 1960年、東京生まれ。経済評論家(日本経済論、金融論、経済政策論)。東京大学卒業後、野村総合研究所、大蔵省財政金融研究所研究官、京都大学経済研究所助教授、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院公共経営研究科教授、名古屋商科大学客員教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ株式会社代表取締役社長。