<まさか寝ちゃったの?>壊れた財務省、お疲れの矢野官房長で大丈夫?


両角敏明[元テレビプロデューサー]

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(筆者注:本稿は2018年4月24日に書いています)

あらっ寝ちゃったの? まさか!

4月16日の国会審議で麻生財務大臣がセクハラ疑惑について福島瑞穂議員の追及を受けている中継画面に映った矢野康治大臣官房長の様子がどこかヘンでした。ほどなく、下を向いていた矢野氏の頭が突然ガクーンと落ちました。

その後も、矢野氏の体は揺れ、隣の太田理財局長の方へ深く傾き、だらしない姿勢が続いたのでした。まさか麻生大臣の答弁中に、官房長の矢野氏が居眠りするわけが・・・。

筆者には柔道の「落ちた」ごとく見えましたが、矢野氏が居眠りをしていたと決めつけるつもりはありません。しかし矢野氏が相当にお疲れだったことは想像に難くありません。一連の森友問題で連日国会対応を迫られている最中に、今度は上司である福田淳一事務次官のセクハラ問題が勃発、福田氏から最初に聴取したのがこの矢野氏です。

さらに当該女性記者に名乗り出るよう要請した非難囂々の文書もこの矢野康治官房長名で発せられています。いくら矢野氏が優秀きわまりないエリート官僚でも、これほど次から次では過労死レベルの疲労困憊状態に違いありません。

【参考】女性記者セクハラ問題の報道検証の「肝」はコレだ!

翌日以降も、矢野氏は心身ともにボロボロだったのかもしれません。国会で自席から答弁席まで歩く姿は心なしかヨロヨロ、言葉づかいも乱れて、官僚特有の過剰丁寧語である『~であります』とか『~してございます』とかが、『~なんですヨ』などというキレたような物言いが連発されました。

たとえば、『本件は加害があったかどうか疑義が生じてるんですヨ』などと言い、今や有名になった『弁護士さんに名前を伏せておっしゃることがそんなに苦痛なことなのか』というフレーズの後に続いたのは『だけど我々はそれ以上に調査のしようがないと思ってますヨ』でした。

質問する希望の党の柚木道義議員にキレちゃいましたかね。
まあそれでも、この辺までは、お疲れの上のことであろうと筆者は矢野官房長にいささか同情的でありました。

ところが、テレビ朝日の抗議文に対する財務省の回答文を見て驚きました。麻生財務大臣が「もっと字を大きくすればいいのに、という程度に読んだ」という抗議文に対する回答で、矢野康治官房長名です。
改行箇所を含めて正確に全文を書きます。

昨日(4月19日)付けでいただいた抗議文は、しっかりと受け止めております。まずは貴社にもご納得いただけるようなやり方で、お話をきちんと伺わせていただきたく、宜しくお願い申し上げます。以上

この文面を見ると、ことここに及んでまで非礼な無駄口をたたく麻生大臣をはじめ、矢野官房長もなにか大きな勘違いをしているのではないでしょうか。財務省はこのような物言いができる立場なのでしょうか。

回答文は離縁状の三行半にも満たない二行半です。被害者をひと言も気遣うことのない傲慢なこの二行半が被害女性を再び傷つけていることにお気づきでないようです。

セクハラは「心への暴力」と言われます。暴力を受けた被害者側が、加害者は財務省の事務次官であると確信して抗議をしたのです。もちろん事実は確定してはいません。確定していないのですから、福田氏が女性の心に暴力を振るった可能性は消えていないのです。このことが大前提です。

ならば、その回答文書の文言はまずは被害女性を気遣うことから始まるのが当たり前です。その上で被害女性に充分な配慮をし、必要なら真相解明のためのお願いを丁寧に述べるのが常識です。そして回答文書は、加害者であることを疑われる財務省側のしかるべき立場の方が持参すのが当然でしょう。

そう言えば麻生大臣をはじめ財務省は一度として被害女性に対する心配りを見せたことがありません。とりわけ麻生大臣は常に尊大で非常識なコメントの数々があり、『記者を男性にすれば済む話』などと発言したという報道を見れば、この方にセクハラの正しい認識など期待するのは無駄です。

足かけ7年も財務大臣をつとめた結果が財務省の崩壊と事務次官のセクハラ疑惑であり、場面場面での判断はミス続きです。佐川氏・福田氏の任命責任どころか、大臣としてガバナンス能力の欠如は明らかです。

矢野官房長は福田事務次官の辞任を受けて、事務次官業務の代行まで勤めています。お疲れ過ぎのオーバーキャパシティの上に、さらなる大きな負担が乗っかります。これまでも、『調査は「一応」続けます、って言うか最善を尽くしますよ』『あのような言葉がセクハラにならない接客の店』などという発言も問題視されました。セクハラ認識が疑われる矢野氏に、セクハラ問題処理も森友問題処理も矢野氏一人に背負わせて、正常な判断が出来るのでしょうか。

【参考】<福田次官セクハラ問題>女性記者セクハラ報道の手心と他人事

福田氏は、全体を聞いてもらえば、前提と状況がわかり、女性の声の部分も聞けば、あのようなひどい発言はしていないことを理解してもらえるし、裁判でも勝てる、と主張されています。
しかし、長時間の中のたった1分間であろうがセクハラ発言があればそれはセクハラです。どういう状況であれ、相手が誰であれセクハラ発言はセクハラです。

しかもサラリーマンがこれはセクハラになるのか?と悩むようなボーダーの文言ではなく、セクハラど真ん中の発言が連発されています。知る限りこの福田氏の主張論理を解説できるコメンテイターはだれ一人おりません。録音音声が別人でないかぎり、福田氏の免罪符はありますまい。福田氏はそれほど難しい主張をされているわけで、福田氏に論理根拠をしっかり伺いたいものです。

佐川氏辞任時には、麻生大臣はきちんとした記者会見をしました。ただし佐川氏自身はいわゆる“ぶるさがり”と言われる立ち話会見だけでした。セクハラ問題では福田氏も麻生大臣も短時間の立ち話会見のみで、きちんとした記者会見は行われていません。

しかるべき場所で、充分に疑問に答えないから問題は長引き、世間のモヤモヤが消えません。世の疑惑と反感を背負ってしまった財務省はどこまで落ちて行くのか、お疲れの矢野官房長にすべておまかせでは止められそうもありません。

財務省に限らず問題は数々噴出しています。問題がおきたら、傲慢さを捨て、当事者が正直にしっかりと疑問に答える、こんな基本的なことをやらずに世間の疑いをかわすのが「すべて膿を出す」ことになるのか、安倍首相にお答えいただきたいものです。もちろん、ご自身のこと、昭恵夫人のことを含めてのことです。

 

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両角敏明

両角敏明(もろずみ・としあき)テレビディレクター、プロデューサー。 バラエティ、報道、情報、すべての番組を手がけてきた。