<不適切の定義>小学校の講師が児童に心霊動画を見せることはイケないことか?

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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2月15日、NHKが次のようなニュースを報じている。

(以下、引用)

 「滋賀県草津市の小学校で、今月、男性の臨時講師が児童に心霊現象とされる動画を見せていたことがわかり、市の教育委員会は『不適切な行為だった』として、保護者に文書などで謝罪することにしています。草津市教育委員会によりますと、今月8日、市立の常盤小学校で、5年生の担任を務める20代の男性臨時講師が、給食の時間中、児童に廃墟(はいきょ)などを撮影した心霊現象とされる動画を電子黒板を使って5分ほど見せました。動画を見た児童からは『怖かった』とか、『見るのが嫌だった』などという声が出たということです。臨時講師は『反省しています。児童が喜ぶと思いやってしまった。傷ついた児童にも申し訳ない』と話しているということです(後略)」

(以上、引用)

これは、不思議な感じのするニュ−スであった。本稿ではこのニュースで報告されている「20代の男性臨時講師が、5年生の児童に心霊現象とされる動画を(学校の)電子黒板を使って見せ、見た児童が不快感を感じている」と言う事実のどこが謝罪に値するか考えてみたいと思う。

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*(学校の)電子黒板を使って見せたこと。

これは明らかにダメだと認定されてもしょうがないだろう。では自分のパソコンで見せたのであったらどうだろう?

*児童全員が強制的に(または逃れられない状態で)見せられたこと。

これも明らかにダメだろう。こういうものに嫌悪感を抱く児童がいることに想像力が及んでいない。もちろん、「給食の時間」に見せたわけだから、明らかに「逃れられない状態」であることは明白だ。給食中に立ち歩くようなことは基本的には許されないからだ。

*見せたのが心霊現象とされる動画だったこと。

これはダメだとも、良いとも筆者には判断できない。同じような事例で考えれば、小学校の林間学校で「肝試し」をするのはダメなことだろうか。学芸会や「児童まつり」のようなイベントで、「お化け屋敷」の出し物は良く目にする。

*児童の中に「怖かった」とか「見るのが嫌だった」と感じた者がいたこと。

学校カウンセラーなどのように、「児童の話を聞いてあげるのが仕事の人」が学校には必ずいるはずだ(「心的外傷PTSDが云々」などと言ってきそうであるが)。児童期は「正義感が強い」ので、聞かれるとダメなところを見つける方向に傾いてしまいがちである。

大人の方向付けたい方に「賛成してあげよう」としてしまう傾向もある。学校カウンセラーの役目はこれらに中立的に児童の話を「傾聴」し「共感」し「受容」することだ。

*一連の行為が学校という空間で行われたこと。

これも筆者としてはダメだとは思えないのだが、世の中の判断は、これを一番糾弾しているのだろと推察する。細かい事実関係が分からなければ、適正な判断は出来ないというのが大人の対応の仕方であろうが、それにしても、おかしな感じのするニュースである。

筆者が、草津市の教育委員会の人に望むのは「児童の心のケアを考えてカウンセラーを派遣することにした」などと発表して「責任はわれわれの手から離れた」宣言をしないことである。

 

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