TBS「ビビット」国分太一と真矢ミキのキャスティング意図って何?

テレビ

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

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今日のテレビ界では、昔と比べて、いろんなところから番組キャストの降板圧力がかかってくる。テレビ局自体も、その圧力に抗してガンバることができなくなっている。どういう意図や背景があるかはわからないが、理解に苦しむキャスティングもある。番組の座組とは、その番組内容を示す明らかな指標であるのだから、何よりも重要であるはずにも関わらず。

例えば、TBSの朝8時からのワイドショー「白熱ライブ ビビット」のキャスティングである。この番組の座組は当初、TOKIOの国分太一と宝塚出身女優・真矢ミキがメインであった。アイドル・国分太一と、女優・真矢ミキの座組からは、おそらくこの番組が芸能ネタや社会ネタにビビッドに反応する芸能ワイドショーではないことが覗える。国分太一と真矢ミキでは規制がかかって芸能ネタや社会ネタについて話すことが出来ないだろうからだ。

当初のキャスティングの意図は国分太一と真矢ミキで、生活情報バラエティ番組をつくることであったはずだ。そこで、キャスティング権を持つ者が参考にしたのは同じ枠で大成功を収めたTBS「はなまる・マーケット」(1996〜2014)である。座組は女優岡・江久美子と元シブガキ隊・薬丸裕英である。

しかし、「ビビット」のキャスティング権者は、外形だけ真似た、国分太一と真矢ミキのコンビが、岡江久美子と薬丸裕英のコンビとは大きな違いがあることを見落としていたようだ。こえは取り返せぬミスである。

まず、岡江久美子と薬丸裕英という順番でも分かるように、「はなまる・マーケット」では、年齢的にもおしゃべりの技術的にも主演は女性で年上の岡江久美子なのである。

薬丸裕英のキャスティングに筆者はずっと反対し続けたが、実際に会ってみるとこの人は番組の宝であった。家事は下手なものの、ものすごく興味がある。若い頃のやんちゃぶりと比べて今は信ずべくもない家庭人である。「はなまる・マーケット」は、意外性のある助演男優を獲得できた。

もうひとつの違いはキャスティング権者の存在である。「ビビット」では、国分太一と真矢ミキをキャスティングした責任者がいない。もしくは誰だか分からないようになっているのではないか。

【参考】<サンデー・モーニングと関口宏>流行に背を向けたキャスターはこうしてできあがった

「はなまる・マーケット」には、岡江久美子と薬丸裕英をキャスティングした個人の責任者がいた。筆者がいくら薬丸裕英に反対しても「とにかく会ってみるまで何も言うな」と、断固として取り合わなかったキャスティング責任者がいた。

さて、今の「ビビット」は、国分太一と真矢ミキをイメージして始めた生活情報バラエティ番組から、ワイドショーに姿を変えていた。この番組をワイドショーと言うのは、骨身を削ってワイドショーをやっている人々には失礼かも知れない。そのワイドショーぶりたるや「ワイドショーもどき」と言うしかないぬるさである。

このぬるさでは山口達也氏の問題があっても、盟友・国分太一の番組を見る気にはならないだろう。

2018年6月1日(金)の放送内容を公式ホームページから引用する。

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内容は立派なワイドショーだが、VTRの中身はまだしも、間をつなぐトークがどうにも持たない。ワイドショーでは視聴率が取れると判断したネタは、出来るかぎり長くやると言うのが鉄則である。新情報があればそれはこの上もないが、よしんばそんなものはなくても、ただ長く喋っている。喋って持たせろ、それだけで視聴率は持つ。

ニュース雑学おじさんとして「Nスタ」から、キャスティング方針の変更ではじき出された元NHKアナの堀尾正明を起用しているが、堀尾にはあまりがんばる動機はない。

国分太一や真矢ミキ本人がダメだと言っているのではないことは分かってもらえるだろう。キャスティングの哲学がないことがダメだなのだ。こういうことがテレビをダメにすると言いたいのだ。

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