<ゲーム市場の新しい戦略>別会社のゲームタイトルが融合した新しいゲームが続々誕生


八坂亮[ゲームクリエイター]

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7月に発売されたWiiU向けゲームソフト『ゼルダ無双』。読んで字の如くではありますが、任天堂の『ゼルダの伝説』とコーエーテクモの『無双』のコラボレーションタイトル(以下、コラボ)です。

「無双シリーズ」と言えば、今までも人気漫画『ONE PIECE』とコラボである『ワンピース海賊無双』や、『北斗の拳』とコラボである『北斗無双』等、数々のコラボを生み出してきたシリーズでもあります。しかし、今回のように別のゲームとコラボするのははじめての事。

また、『ゼルダ無双』以外にも大型タイトル同士のコラボがいくつか発売が予定されています。例えば、ソニーコンピュータエンタテインメントの『ポポロクロイス物語』とマーベラスエンタテインメントの『牧場物語』のコラボである『ポポロクロイス牧場物語』や、任天堂の『ファイアーエムブレム』とATLUSの『女神転生』のコラボである『ファイアーエムブレム×女神転生(仮称)』等がそれに当たります。

今まで、何かのゲームに別のゲームのキャラクターが少しだけ登場する等、部分的なコラボレーションは数多くありましたが、別の会社のゲーム同士が融合して新しいゲームになるような事はあまり多くありませんでした。では、なぜこのように大型タイトル同士のコラボが続出しているのでしょうか?

これには、家庭用ゲームを取り巻く環境が大きく影響していると筆者は考えています。

よく言われている事ではありますが、スマートフォンの台頭によってマンガ、映画、音楽、ゲーム等のエンターテインメントは場所や時間を気にせず自由に楽しめる物になりました。そのため、カジュアルにゲームを楽しむ人はスマートフォンで十分満足できるようになり、ゲーム機やゲームソフトを買ってまでゲームを遊ばなくなりつつあります。

そういった中、高いお金を払って家庭用ゲームを遊ぶのは、いわゆる「ゲーム好き」な人々であり、ゲーム会社各社も如何に「ゲーム好き」を自社のタイトルに振り向かせるかが重要なテーマになっています。

家庭用ゲームの販売ランキングに目を移すと、上位は常に有名なタイトルが占領しています。ランキング上位のタイトルの販売数はとても大きく、それだけゲームを遊ぶ人が多い事を示しておりますが、反面「このタイトルしか遊ばない」等のタイトル固有の固定ファンも数多く存在しています。

このような、ゲーム好きでありながら、あるタイトルしか遊ばない固定ファンを振り向かせる施策としてコラボに繋がっていると考えています。

前述の『ゼルダ無双』を例に考えると、『ゼルダの伝説』は世界中で親しまれるゲームですが、国内のセールスは他の任天堂タイトルに比べると決して大きな物ではなく、日本に限って言うと固定ファンに支えられているタイトルであります。

『無双』は海外に対してあまり強くないものの、国内には根強いファンも多く存在します。つまり、国内に弱い『ゼルダの伝説』と国外に弱い『無双』のコラボであり、今回のコラボによって互いの固定ファンを獲得し、今後の発売されるシリーズに興味を持ってもらおうという狙いがあると思われます。

この結果が成功か否かは『ゼルダの伝説』『無双』それぞれのシリーズが今後どのように広がっていくかで判断される事なのでここでは触れませんが、一人のゲーム業界人としては、今回のコラボによって多くの方に双方の魅力に気づいて欲しいと願います。

もちろん。コラボ自体はしっかり固定ファンのいるゲームだからこそ成り立つ物です。裏を返せば、コラボが続出するという事はそれだけ愛されているゲームが多いという事でもあります。今後、愛されているゲームを大事にしつつ、コラボができるぐらい愛される新しいゲームを生み出していく事が重要な課題です。その課題をクリアできるよう、ゲームを作っていかなければなりません。と、自分を戒めて今回は締めようと思います。

 

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八坂亮

八坂亮(やさか・りょう) ゲームクリエイター 1986年、大分県生まれ。大手ゲームメイカーにて、家庭用のゲームソフト開発を行う傍ら、『らくがきラボ』名義でスマホ向けゲームも開発にも従事。一人でも多く人に「ゲームが楽しい」と感じてもらえるよう日々精力的に活動中。