<原発を左右する「活断層」の認否は誰がする>公式な「規制委員会」と非公式な「有識者会合」で大混乱?


石川和男[NPO法人社会保障経済研究所・理事長]

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今、日本の原子力発電所の生殺与奪を握っているとされる「原子力規制委員会」とその事務局である「原子力規制庁」。それらの発足から3年後に当たる今秋、原子力規制の見直しが予定されている。

規制委・規制庁に対してどのような改革を行うべきか?

これまで2年間の経過を見ると、幾つかの問題点が浮かび上がってくる。その中でも、「(耐震設計上考慮する)活断層」に関する判定プロセスを巡る問題が主要論点の一つになるだろう。不可解なことに、東日本大震災以降になって活断層がマスコミの大きな関心を引くようになった。

原子炉直下に活断層があれば重大事故に発展する可能性があるというのは、震災以前から世界共通の問題の一つ。日本国内に現存する原子炉は全て、活断層に関しても国の規制を満たすものとして設置が許可されたものだ。

しかし、設置以後に再調査した結果、敷地内で活断層の存在を見逃していた疑いのあるものが何ヶ所か浮上。これを改めて調査するため、規制委・規制庁の発足直後の2012年秋、学者らで構成する「活断層調査の有識者会合」が規制委の下に、非公式なものとして設置された。

非公式とは、法的な設置根拠がないのと同じ。そうは言っても、規制当局内に設置されたものだから、この有識者会合の調査結果が、そのまま活断層の有無、ひいては調査対象となる原発の再稼動の可否を決するものと誰もが思っていたはずだ。

ところが、これまでの経緯をつぶさに見ると、この有識者会合の位置付けを巡って大きな混乱が生じていることがわかる。活断層の調査について、これまでは、

  1. 規制委が自ら確認と評価を行い、判断を行うとし、
  2. その際、有識者会合の確認結果等を踏まえるという方針を示し、
  3. 最終的に規制委として決定

・・・をしてきた。少々細かいが、以下の通り例を時系列で例を挙げながら見ていく。

<2012年9月26日(議事録のp.10-11>

・・・当委員会としては自ら確認・評価をする。そして、これが耐震設計上考慮する活断層であるかどうかを判断するというのが趣旨でございます。
・・・判断に当たっては、(略)総合的に勘案した上で判断したいと思っています。 もちろん、調査団による確認結果を踏まえて判断するということになります。

<2013年5月22日(議事録のp.20)>

・・・(日本原子力発電敦賀原発について)これは結局、私どもとしては、原子力発電所の耐震設計上、考慮する活断層に相当するというものです。

<2013年12月18日(議事録のp.6)>

・・・(日本原子力発電敦賀原発について)敦賀発電所の破砕帯については、去る5月22日に、本委員会において、活断層であると評価したところ・・・

<2014年2月5日(議事録のp.27-28)>

・・・(関西電力大飯原発について)現在、有識者会合としての評価書案、これは一応、評価会合では結論めいたところまで来ているんですけど、規制委員会として、まだセットしたわけではないんです。

・・・規制委員会としては、言ってみれば敷地内破砕帯全体の最終的な結論なり見解、これは最終的に別途、示させていただきたいと。

・・・敷地内破砕帯の評価についての規制委員会としての見解、これは、その中の一部として示させていただくということになると思います。

<2014年2月12日(議事録のp.21)>

・・・(関西電力大飯原発について)それでは、本件については、こういう報告を了承したいと思います。

ところが、2014年12月3日の規制庁提出資料では、

「有識者会合での評価は、・・・調査結果について、有識者が専門的知見を基に評価を行い、原子力規制委員会に報告するもの」

と、有識者会合の位置付けが変わっている。

それにもかかわらず、驚くべきことに、この日の規制委(議事録のp.15)では、委員と事務局幹部の間で、

「従来からこういった方針であったはずで、・・・何も別に変わっていないと受け取りましたけれども・・・」

「そのとおりでございまして・・・」

とのやり取りがわざわざなされている。

これまで2年間の経過から察するに、2014年12月3日を境に、規制委・規制庁の「劇場型審査」の代表であった有識者会合の役割を見直し、これまでの不適切な運営を認めないまま、規制委・規制庁としては改善した事実だけを残そうとしているとしか見えない。これでは、規制当局の組織運営手法が疑われ、規制機関として信頼されようがないのではないか。

今秋に予定されている「3年後の見直し」では、活断層の認否を巡る責任主体の在り方を正していくことを主要論点の一つに据えていく必要がある。そもそも、活断層の有無だけで“原発の生死”を判断するのではなく、活断層があった場合にどのような影響があるのかを示す基準へと改正していくべきだ。

有識者会合の位置付けがどうなるかによっては、これまでの2年間の作業が無駄になったことになる。この間の逸失利益は巨額なものであり、国家賠償請求を起こすべきとの声も出てくるだろう。

民間企業の事業活動は、相応のコストがかかる。役所が民間事業活動の邪魔をしていると批判されることが多いのは、こうしたコスト度外視の規制運用が多いからに他ならない。

 

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石川和男

石川和男(いしかわ・かずお)NPO法人社会保障経済研究所・理事長。1965年、福岡県生まれ。東京大学工学部卒業。1989年、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー政策、産業保安政策、産業金融政策、中小企業政策、消費者政策、物流・流通政策などに従事。2007年3月、経済産業省を退官。2008〜09年、内閣官房・国家公務員制度改革本部、東京財団上席研究員、政策研究大学院大学客員教授、政府の規制改革会議、行政刷新会議WGなどの委員を歴任。