<生活保護申請が過去最多>この国から非正規雇用をなくせ

社会・メディア

山口道宏[ジャーナリスト]

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先頃、生活保護申請が過去最多と発表があった(厚労省)。25万5897件(2024年)は過去12年で最多となり受給世帯数は165万2199世帯に。低年金の単身高齢者と非正規雇用の若者の増加が目立つ。

ところが永田町。ここでは、見当違いの国会論戦が続いている。国民民主党の「年収103万問題」(103万) と日本維新の会の「高校授業料無償化」(無償化)の2つの政策提案に大きく時間を割いた。木を見て森を見ず、とはこんな時か。前記の数字をみれば、我が国の深刻な貧困にどれほど反映か!?「103万」も「無償化」のいずれも「制度のつまみ喰い」と言われる所以だ。

「103万」は「手取りを増やす」というより 「安上がりな労働力確保」が隠れた狙いだ。というのも「103万」は税控除と社会保険料負担における家族間の扶養関係を前提とするもの。それは「もっと働けますよ」と「家計補助」の合作に他ならず、なにより扶養がない世帯にとってはどうか。また親の所得制限なしの「無償化」では早くから「なぜ私学もその対象か」の声があった。さらに親の年収が1千万円も100万円未満も一緒くたでは新たな教育格差が生まれるは必至だと。

既存の数々の税制度や社会保険制度の根幹は残したままに、あのセレブも、国会議員の子弟も授業料が無償になります、では「胸糞が悪い」のは同じ納税者としても納得か。租税は各人の能力に応じて負担するという原則(応能負担)に倣えば、低所得者ほど負担が重い逆進性の消費税などもってのほかだが、似ている。

本来ならば「所得再分配」で社会保障に充てるのが税の重要な機能のはず。ある地方の知事が怒っている。これでは「地元の公立学校が定員割れになる」「統廃合になるしかない」「地域衰退に」「過疎が進む」と。皮肉か、予定通りか!? 政策提案の「維新」のお膝元である大阪府内の公立高校128校うち65校が倍率1倍以下になった(R7年度入試)。まさかの「公立つぶし」で「健全財政」を誇るのか。

春の門出シーズンだが「500万円の借金を背負っての就職です」という。大学生の貸与奨学生が多額のローンをもって社会人になる、という現実。給付奨学制度の拡大と充実こそ高等教育の政策課題だが「無償化」では今日的な貧困問題に正面から応えていない。

非正規率(総務省)は37%で、全労働者のほぼ4割が非正規の国だ。身分はパート、アルバイト、派遣、契約、嘱託などで、我が国5739万人の全労働者のうち2124万人が非正規労働者となる。労働者の生活の底上げには安定した雇用が最大の要件だ。「手取りを増やす」は、全労働者の正規化で初めて実現に近づく。この国から非正規をなくせ!! それこそ優先課題に他ならない。

2025年度の国民負担率は46.2%見込とか(財務省)。健康保険料の値上がる都道府県もある。内訳は租税負担28.2%、社会保障負担18.0%(年金保険料、健康保険料など)、さらに財政赤字2.6%を加えると48.8%になるという。お金は入口と出口が関心だ。可処分所得を考えない政策提案は弥縫策に過ぎない。

「五公五民」という言葉がある。収穫したコメの5割を年貢として収め、残り5割が農民の手元に残る江戸時代の年貢率。悪代官は時代を超えて存在した。江戸時代には農民一揆も発生していた。非正規雇用の撤廃を語らずして「103万円」も「高校無償化」のいずれもお粗末だった。老後は非正規にも容赦がない。低年金も先送りか。永田町には、労働者の、生涯における安心安全な暮らしへの視座が欠落している。

 

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