<積み立て投資の最適解>投資初心者の悩みを解決するロボアドのメリットデメリットを徹底解説
岡部遼太郎(本誌ライター)
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2024年の新NISAの開始により、今まで投資に対して腰が重かった日本でも、ようやく貯金よりも投資をすべき、という風潮が沸きあがってきたように思う。
ただ、市況の動向を追うことは初心者にとっては容易なことではない。例えば2024年に行われたアメリカ大統領選や今年に入っての世界情勢によって、株式市場の相場は激しく乱高下した。投資に関する圧倒的な知識を持っていたり、市場に対して敏感にアンテナを張っている人でないと、こういった市場の変化に対応をすることはできないだろう。
効率よく資産形成をするためには、どこに投資をするか、投資先の選定が非常に重要であるが、今後も続く不安定な市況の中で、適切な判断をすることは非常に難しい。そして投資先を選ぶ大前提の考え方として、忘れてはならないのが、いかにリスク分散をするかだ。しかし、安定的な資産形成のために、「資産をどのように振り分けるべきか(アセットアロケーション)」が全く理解できていないことが、NISAで投資を始めた人たちが抱える課題の1つだろう。
多様な選択肢がある中で、「結局、どの投資先を選べばいいのか?」と迷い、適切な振り分けができないのは、自然なことである。
そんな中で今、注目を集めているのは「ロボアドバイザー(ロボアド)」を活用した投資である。ロボアドとは、最新テクノロジーを駆使して、個々のリスク許容度や目標に応じた最適な投資プランを提案し、自動で資産運用まで行ってくれるサービスである。
ロボアド投資は、専門的な知識がなくても、簡単な質問に答えるだけで、自分に合った投資スタイルを見つけ投資先を考えてくれる。そのため「とりあえずNISAを始めたものの、知識はなく、何をどうすれば良いか分からない」というNISA初心者層にとっては最適な選択肢であると筆者は考える。
本稿では、なぜロボアド投資が初心者にとって最適な選択肢となり得るのか、その仕組みやメリット、そして活用するべき理由について、わかりやすく解説したい。
<投資初心者でも「ほったらかし」で運用が可能>
ロボアド投資の最大の特徴は、投資の知識がなくても運用を始められる点だろう。
ユーザーは運用目的やリスク許容度に関する簡単な質問に答えるだけで、自動的に最適な投資のポートフォリオ(資産配分)を作成してもらえる。知識がなくても、自分の状況に合った投資先を選び、分散投資によってリスクを抑えながら資産運用が可能だ。
また、投資初心者の多くは「市場の変動にどう対応すればいいか」といった不安を抱く。ロボアドにはリバランス機能があり、資産のバランスが崩れた場合でも自動で調整し、目標の資産配分に戻してくれる。これにより、投資初心者でも手間をかけず効率的に資産を運用できる。
つまり、ロボアドは「知識が少なくても安心・手間なし」で投資ができる便利なサービスと言えるのだ。
一方でデメリットがないわけではない。やはり、お任せをできるサービスであるため、手数料がかかってしまい、自分での運用と比較をすれば割高感を感じるかもしれない。
それらメリット・デメリットを鑑みると、投資初心者や脱初心者層が利用するには、メリットの方が圧倒的に多いだろう。
<ロボアドの「一任型」と「アドバイス型」>
ロボアドを詳しく見ていくと、大きく「一任型」と「アドバイス型」の2種類がある。両者の違いは投資スタイルの違いでもあるので、それぞれの特徴と違いを簡単に比較説明してみたい。
(1)一任型
一任型は、投資の運用をすべてロボアドに任せる方式である。ポートフォリオの提案、資産の売買、リバランス(資産配分の調整)まで自動で行われるため、完全に「おまかせ運用」が可能だ。
一任型のメリットとしては、ポートフォリオの構築から投資先の決定、資産の売買、運用までを一貫してロボアドが管理してくれるので手間がかからない点が挙げられる。ただ、資産管理を全て一任するという性質上、アドバイス型と比較をすると手数料が割高になってしまう。
(2)アドバイス型
アドバイス型は、ロボアドがポートフォリオを提案し、その提案をもとにユーザーが最終的な売買のみ行う方式だ。
メリットは、アドバイス型のロボアドの仕事はポートフォリオの提案までであるため、手数料が格安であることだ。中には利用料無料で提供をしているアドバイス型のロボアドもある。
ただし、最終的な売買手続きをユーザー自身でする必要がある。
以上をまとめると、全てロボアドに任せてしまう代わりにコストが高い「一任型」、一部自分での操作が必要になる代わりにコストが低い「アドバイス型」と区分できる。
ここで一点言及しておきたいのが、知識のない初心者にとって最もハードルが高い、自分の目的のためにどの投資先にいくら投資するべきかを決める「ポートフォリオの構築」において、一任型とアドバイス型の大きな性能差はないと筆者は考えている。
ロボアドにおいて最も重要な機能であるため、各社そこには総力をかけて開発に取り組んでいるため差はほぼ無いと思って良いだろう。
ロボアドの一番重要な機能であるポートフォリオの構築に性能差がないのに、なぜ利用料に大きな金額差が出るのか、疑問に思う方もいるだろう。
答えは単純で、ただ投資資産売買の最後のボタンを自分で押すか押さないかの違いだ。
それだけで数十年単位でみると金額によっては、数十万~数百万円を超える規模にもなりかねない、莫大な手数料の違いにつながるのだ。
中にはアドバイス型の説明を聞いて、「結局、最後は自分で決めなければいけないのか」と感じた読者もいるかもしれないが、そうではない。イメージとして、ロボアドがしてくれた提案に対してただ承認ボタンを押す。ただそれだけだ。その一瞬の違いだけで莫大な手数料が下がる、と考えてほしい。
投資を始めたばかりの若年層にとっては、投資資金を捻出するのにも苦労する場合もあるだろう。最後のボタンを押す、押さないで将来的な利益に大きな差異が生まれるのであれば、手数料分を投資に回すようにした方が、効率的であると筆者は考えている。
投資を始めたばかりのユーザーは各種手数料をできるだけ抑えて、投資額をできるだけ確保することが、資産形成においては非常に重要であることを覚えておくべきだろう。
以上の考えのもと、筆者として脱初心者には「アドバイス型」のロボアドの方がメリットが大きいと考える。この意見をふまえ一度自分にはどちらが適しているのか、考えてみてほしい。
<主要ロボアドサービスの比較>
現在、日本国内には独立系サービス「ウェルスナビ」、楽天証券「楽ラップ」、SBI証券「SBIラップ」、松井証券「ロボアドバイザー」、といった代表的なロボアドサービスが存在する。一般的にはこの中から選択することになると思うので、それらを初心者目線から比較し、その優劣を見極めてみたい。特に本稿では、先述した一任型かアドバイス型か、手数料、最低投資金額、ポートフォリオ構築機能・NISA対応などの観点からの比較をしてみる。
*ウェルスナビ
(投資先選定方法)一任型(手数料/年率)利用手数料:1.1% 信託報酬:ETF保有コストの0.07~0.13%程度(最低投資金額)1万円(ポートフォリオ構築)自動診断/リバランス(NISA)対応
*松井証券「ロボアドバイザー」
(投資先選定方法)アドバイス型(手数料/年率)利用手数料:0円 信託報酬:0.15%(最低投資金額)100円(ポートフォリオ構築)自動診断(NISA)対応
*楽天証券「楽ラップ」
(投資先選定方法)一任型(手数料/年率)利用手数料:0.715%〜 信託報酬:最大で0.1503%程度(最低投資金額)1万円(ポートフォリオ構築)ロボアド診断・リバランス(NISA)非対応
*SBI証券「SBIラップ」
(投資先選定方法)一任型(手数料/年率)利用手数料:0.66%~ 信託報酬:0.298%程度(最低投資金額)1万円(ポートフォリオ構築)自動診断・リバランス(NISA)非対応
一任型のロボアドの代表であるウェルスナビは年率コストが最も高く利用手数料は1.1%と非常に高い。知名度の高いサービスではあるが、ランニングコストの面からは必ずしも初心者向けとは言いづらいかもしれない。
逆に最安値の松井証券はアドバイス型のロボアドであり、その手数料は信託報酬の0.15%(最大年率)のみである。最も高額なウェルスナビとかなりの開きがあることがわかる。
一見小さな数値に見えるこの利率も元本の桁が増えれば、その分大幅に手数料が増えることになるため、見過ごしておくわけにはいかない。手数料の差はもはや収益性の差であると筆者は考える。
ポートフォリオ構築機能については、一任型とアドバイス型の比較の際に説明をしたように、各社同じようなアルゴリズムに則ってポートフォリオを構築しているため、性能に大きな差はない、と筆者は考えている。そのため、ポートフォリオの構築機能に大きな優位性が各社でつかないのであれば、効率的かつ効果的に資産形成をするという観点で見ると、手数料の低さはサービス選定において大きなポイントであると考えてよいだろう。
また、NISAの対応についてだが、楽天証券「楽ラップ」、SBI証券「SBIラップ」に関しては対応をしていない。大手証券会社でNISA口座開設数も多い楽天、SBIのロボアドがNISAに対応をしていないのは驚きだろう。
<見えないコスト削減の観点も忘れずに>
ロボアドの比較基準は手数料だけではない。いかに投資家に対して実質的な投資メリットを提供してくれるかという観点も必要だ。その最たる例がポイント還元だ。ポイント還元があることによって手数料などのコストを実質的に削減可能であるからだ。仮に年0.5%の手数料がかかるとしても、ポイントにより還元がされていれば、実質的な手数料は限りなく0に近づく。
ポイント還元において、大きな強みを持っているのが松井証券だ。
松井証券では「最大1%貯まる投信残高ポイントサービス」を提供している。このサービスは、投資信託を預けた上で、毎月エントリーをするだけで、PayPay、dポイント、Amazonギフトカードなどに交換できるポイントが、投資信託の残高に対して最大で1%が毎月還元されるというものだ。
ロボアドで構築されたポートフォリオに、難しい条件もなくポイントが付与されるのだ。松井証券のロボアドは利用料は0円で、コストはロボアド最低水準の信託報酬0.15%のみだ。そこから考えると、実質的にはロボアドの手数料は0円に近しくなっている、と捉えて良いだろう。このポイント還元は意外と盲点になっているので特に注意が必要だ。また、コストだけでなく、最低投資額も、松井証券お得意の「100円投資」がここでも生かされており、初心者にとっては圧倒的に敷居が低い。
<脱投資初心者に最適なロボアドは?>
以上をふまえて、初心者に最適なロボアドについて考える。
本稿では一任型よりもアドバイス型の方が初心者にとってはより有益であると考えた。ウェルスナビ、楽天証券「楽ラップ」SBI証券「SBIラップ」が一任型ロボアドであり、松井証券「ロボアドバイザー」はアドバイス型ロボアドである。そういった意味では、松井証券「ロボアドバイザー」は低コストである点やNISA対応などの細かい初心者対応も踏まえ、初心者向けのロボアドとしては魅力的であると言えるだろう。
なお、本稿で紹介をしている松井証券の「ロボアドバイザー」については、こちらのページに詳しくまとまっているので(https://www.matsui.co.jp/fund/roboadvisor/toushin-koubou/)ぜひ参照していただきたい。
また、ロボアドの性能だけではなく、保有残高によるポイント還元といった独自のサービスがあることも松井証券を選ぶ理由になる。投資初心者(脱初心者)にとって重要な関心事は「安心感」「手軽さ」「コストの低さ」である。証券会社は得てして「象徴的なサービス」や「一部の成功体験」で広告を打ってくるため、日々の投資の中で発生するコストや懸念事項に対する注意を見落としがちだ。しかし、長期的な運用を考えた時に、何よりも重要となってくるのが、「安心感」「手軽さ」「コストの低さ」であることを忘れてはならない。
その意味では「安心感」「手軽さ」を最重要したロボアドは初心者に最適な投資・資産運用手法であることは言うまでもないが、逆に言えば、予想外にかかる手数料コストや、ポイント還元による差引コスト削減を見落としてはならないだろう。表面的な広告だけに踊らされず、実質的な投資メリットがあるかどうかについても、しっかり考えたい。
以上を踏まえると、やはり、ネット証券のパイオニアである松井証券のロボアドは、「安心感」「手軽さ」「コストの低さ」のあらゆる面から、知識はないが効果的な資産形成をしたいと考える方には、最適な選択肢であるように思う。とはいえ各社異なった強みを用いて、自社のロボアドの利用を促してくるため、目先の利益や話題性だけに捉われず、自分の目的や環境から冷静且つ大胆に最高のパートナーを見つけて欲しい。
本稿は今話題の「ロボアド投資」についてわかりやすく説明し、主要なロボアドサービスの比較を通して紹介した。本誌では、初心者にとって魅力的な投資手法を今後もどんどん紹介してゆくので楽しみにして欲しい。
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