<ジェンダー平等?>女性たちは「報道ステーション」CMのどこに頭にきたのか

社会・メディア

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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テレビ朝日「報道ステーション」の番組宣伝CMが、ジェンダー平等の観点から問題であると炎上した。女性たちはどこが不快だったのか。どの点が頭にきたのか。テレビ朝日はすでに番組のCM動画を削除しているが、その内容は以下のようなものだ。できるだけ正確にコンテ風に描写する。

テロップ「これは報道ステーションのCMです」

(場面)女性の自室らしい。そこへ女性が帰宅した。24〜5歳くらいの女性が画面にフレームインして喋りだす。動画のオンラインで友達と話をしているのだ。女性は極めてリラックスしていて、話している相手が恋人だと思う人がいても良いくらいのイメージで撮ること。女性は全編通して溢れる笑顔である。

女性「ただいまー。なんか、リモートに慣れちゃったらさ。久々に会社行ったらなんか変な感じしちゃった」「会社の先輩、産休あけて赤ちゃん連れてきてたんだけど、もうすっごいかわいくって。どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかって今、スローガン的に掲げてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」「化粧水買っちゃったの。もうすっごいいいやつ。それにしても消費税高くなったよね。国の借金って減ってないよね?」「あっ9時54分。ちょっとニュース見ていい?」

テロップ「こいつ、報ステ見てるな」

話題になってから、初めて見た筆者の感想はこうだった。

「この女のコ可愛いじゃん」

この66歳のジジイの感想には、ジェンダー平等の観点からすると、おそらく批難されるべき考え方はすでに2つも入っている。

1.「女のコ」という言い方。大人の女性を「女のコ」と下に見るとは何事か。

2. 「可愛いじゃん」という見解。女性を美醜の観点から評するのは言語道断だ。

筆者はジジイだから、最近ニュースもろくに見ていないので、許してほしい気もするが、今どきは、許されないのである。さて、今どき問題に移るが、大方の女性は、(今どき)「ジェンダー平等をかかげるなんて時代遅れ」の部分がだめなんだと指摘する。それだけだろうか。これから、筆者の個人的ないくつかの推測を挙げる。

[参考]<ホンマでっか!?TV>欽ちゃんと明石家さんまはそっくりだ

1.このCMでは、ジェンダー平等はすでに達成されたような誤解を受ける恐れがある。日本はまだまだなのに・・・という批判。

2.「ジェンダー平等をかかげる(どっかの政治家も)時代遅れ」という表現。例えば蓮舫さんとか、福島瑞穂さん、辻元清美さんの顔が思い浮かび、橋本聖子さんや、丸川珠代さん、小渕優子さんの顔は思い浮かばない。蓮舫さんや福島さん辻元さんは、ジェンダー平等が実現していないからこそ頑張ってるのに、という批判。

3.そして、「このCMの会社はどういう設定なのよ。産休が取れてさ。わたしなんか働き始めたの、産んで10日めよ。10日め。しかも、赤ちゃん会社につれてきて可愛いとか言ってられるなんて、そんなに会社の雰囲気いいわけ?あんたの会社、一体どこよ。テレ朝? それとも電通? しかもあんた、正社員でしょ。そりゃ、あんたの会社は、よっぽどジェンダー平等が実現してるんでしょうね。言っとくけどあたしの会社はそうじゃないわよ」・・・との怒りとも勘違いとも言える批判。

4.「化粧水買っちゃったの。もうすっごいいいやつ」というセリフ。生理用品さえ買えない女性がいるのよ。あんたはいいわよあんたは、勝ち組よ・・・といったCMキャラを実在の女性と混同しての批判。

5.「もうすっごい、いい化粧水買っちゃった」の裏側に表現されている、典型的なルッキズム(外見至上主義)批判。

6.こんな若い女性がニュースを見ているのに、皆さん見てますかと問われているような、上から目線を感じるとの、上から目線と言えば、言われた方は恐れ入るだろうと考える人からの批判。

7.「こいつ、報ステ見てるな」といいテロップで、女性を「こいつ」呼ばわりするな、という批判。

ところで、CMへの炎上や批判を受けて、「報道ステーション」の公式Twitterが3月24日、ウェブ上で出した謝罪声明は以下の通り。

【今回のWeb CMについて】今回のWebCMは、幅広い世代の皆様に番組を身近に感じていただきたいという意図で制作しました。ジェンダーの問題については、世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとしたものでしたが、その意図をきちんとお伝えすることができませんでした。不快な思いをされた方がいらしたことを重く受け止め、お詫びするとともに、このWeb CMは取り下げさせていただきます。(@hst_tvasahi・3月24日)

筆者がまず感じたには「なんか、謝罪のポイントがずれてるなあ」という点だ。ジェンダーの問題について「意図をきちんとお伝えすることができませんでした」として詫びているが、このWeb CMにジェンダー問題について伝えようとする意図はないと見るのが、読解力のある人の見方だろう。

「幅広い世代の皆様に番組を身近に感じていただきたいという意図」は、確かにあるように思えるが、そういえばテレビ朝日はまだ、世帯視聴率を採用しており、全世代をターゲットにして放送をしているのだった。他の民放、日テレ、TBS、フジテレビは視聴率が欲しい対象を13歳から49歳のこれから未来にかけて購買力があるコアターゲットやらに絞っているのであった。年寄りにはテレビを見てもらう必要はないのである。

そして、

8. CM全体に漂う「ジェンダー平等」とかお題目はいいから、女も働いてくれ!働いてモノをどんどん買ってくれ、子供どんどん生んでくれ感。

これにも、批判は集まったのではないか。何しろ森元首相の「女は話が長い」発言以来、渡辺直美のオリンピッグ問題など続発して、この分野は世の中的に批判モードに突入しているのである。ところで、筆者は保育園が、日本で今と同じくらい充実していたのは、第2次世界大戦中だったとのデータを読んで驚いたことがある。

それから、このCMに出た女優さん、あなたには何も責任はありませんから、才能は感じられるし、今後有名になることを望みます。

 

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