『THE MANZAI』は今年の形式が良いと思う理由

テレビ

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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マンザイは出来ないナインティナインが、とくに笑いをとることもなく淡々と進行をし、殿堂入りしてマンザイはもうやらないビートたけしが最高顧問としてコメントをする2020年の『THE MANZAI』が、23組のマンザイ師を集めて行われた。出場の23組は番組スタッフが、2020年12月時点で最もおもしろい、腕のある漫才師を集めましたと言うことだろう。

コンテストでチャンピオンを決めたり、色々迷いまくっていた番組の形式だが今年になって、ようやく純粋にネタの面白さを楽しめる、無駄を排除したとても見やすい番組になったように思う。10年後に「2020年のベストのマンザイ師は誰だったのか?」を調べるにも役に立つかもしれない。

出場メンバーを登場順にあげておこう。

<19時台>

【アンタッチャブル】山崎弘也(44歳)、柴田英嗣(45歳)。山崎の瞬発力はアドリブでこそ発揮されるのであって、作り込みしすぎはもったいないと思った。

【ミルクボーイ】内海崇(34歳)、駒場孝(34歳)。昨年のM-1で、優勝したネタのリターン漫才。駒場が振るオカンが忘れた名前とその特徴に対する、内海のツッコミ。飽きられる宿命を持ったネタだが、内海の偏見がエスカレートしていて面白い。

【かまいたち】山内健司(39歳)、濱家 隆一(37歳)。この2人はキングオブコント2017で優勝しているが、しゃべりがメインなので、マンザイに専念したほうがよいのではないか。マンザイでは破綻がない

【ナイツ】塙宣之(42歳)、土屋伸之(42歳)。土屋のツッコミが上手くなっていると、ビートたけしが褒めていた。それにしても、ビートたけしは数えるほどしか言葉を挟まない。感想が編集でまるまるカットされているところもあったのだろう。ナインティナインも特に振ることもない。

【パンクブーブー】佐藤哲夫(44歳)、黒瀬純(45歳)。筆者は佐藤の風貌がすきだ。この人はフラがあるので普通のことを喋ってもにんまり出来る。商談の設定のマンザイ。もし君が〇〇だとしたら・・・設定マンザイはネタがつくりやすいのだろう。8割がたが設定マンザイだった。

【銀シャリ】鰻和弘(37歳)、橋本直(40歳)。桃太郎異聞。

【ミキ】昴生(34歳)、亜生(32歳)。プレマスターズ(予選)を勝ち抜いての登場。面白い、二重丸だ。

【博多華丸・大吉】華丸(50歳)、大吉(49歳)。「この番組に出るのは(マンザイの)免許更新に来るようなもんだ」と、言っていた。スタッフはこの言葉を大切にすべきだ。マンザイ免許の更新、それが番組のコンセプトであるべきだと思う。

<20時台>

【サンドウィッチマン】伊達みきお(46歳)、富澤たけし(46歳)。風呂に入ったり、バスでくいもの屋を探したり忙しいのに、ネタ作りやネタ合わせをしているのには頭が下がる。そのあたりが好感度も高い理由だろう。筆者は、2人ともがたい(図体)がデカすぎるのがこのコンビの弱点だと思っている。扮装が似合わないのである。

【霜降り明星】せいや(28歳)、粗品(27歳)。ネタがサザエさん異聞だったのはなんにしても残念だ。粗品は司会も上手い。起用されるケースが増えてくるだろう。テレビを中心にという考えが彼らにはあまりないのではないか。

【テンダラー】白川悟実(50歳)、浜本広晃(46歳)。関西では向かうところ敵なし。その匂いが漂っては来るが、嫌いではない。ビートたけしはもうギャグでは笑わないが、やる方はそれを気にする必要はない。

【海原やすよ・ともこ】やすよ(45歳)、ともこ(49歳)。姉妹マンザイ。姉妹で群を抜くマンザイを見せたのはかつての海原千里・万里(千里は上沼恵美子)だが、吉本興業はこの2人を後継者として推そうとしているのだろう。何組かいる『THE MANZAI』6回全登場のひと組である。容姿をいじるマンザイでないのは大変好感が持てる。

【和牛】水田信二(40歳)、川西賢志郎(36歳)。安定感抜群。無冠の帝王で良いではないか。結局生き残るのは彼らだ。

【ウーマンラッシュアワー】村本大輔(40歳)、中川パラダイス(39歳)。ほぼ、村本ひとりしゃべりのスタンダップコメディ。村本はアメリカのスタンダップコメディアンを理想としているようで時事ネタの内容とキレは爆笑問題の太田と互角。後は好き嫌いだ。

【ブラックマヨネーズ】小杉竜一(47歳)、吉田敬(47歳)。5年ぶりのマンザイだそうだ、もったいない。楽しそうに漫才をやるところが彼らの真骨頂だ。ネタの切れもセンスも良い。

【タカアンドトシ】タカ(44歳)、トシ(44歳) 電車でおじいさんに席を譲るネタ。ありがちなネタだが、腕で持っていくことが出来るようになった2人。

[参考]たけしさん、それはカッコ悪いんじゃないですか?

<21時台>

【千鳥】大悟(40歳)、ノブ(40歳)。独特なフラを持つ、筆者も好きな2人。この2人は何もネタを持たず、突然舞台に出てもマンザイが出来るだろう。アドリブが見たい。

【NON STYLE】石田明(40歳)、井上裕介(40歳)。家事代行サービス。マンザイだからこそ出来るネタ。コントでは無理。

【おぎやはぎ】小木博明(49歳)、矢作兼(49歳)。テンション低いのがウリ。コンプライアンスネタ。好きな人はすごく好きだろう。

【笑い飯】西田幸治(46歳)、哲夫(45歳)。WボケWツッコミの発明者。今回もWボケWツッコミでのネタだったが、これはテンポがどんどん早くなるのが、見世物だと思うが、期待大だっただけに今ひとつだった。

【とろサーモン】久保田かずのぶ(41歳)、村田秀亮(41歳)。久保田は瀬戸わんやさんみたいだ。芝居が出来る。この人をコントに起用したい。

【中川家】剛(50歳)、礼二(48歳)。この位置に出る人を寄席の香盤では「膝替わり」と言い大変重要な役目だ。大トリのドッカーンを邪魔しないように、しかも笑いを鎮めないようにしなければならない。マンザイの実力で、今、中川家にかなう者はいないだろう。普通の雑談のように始まって、いつの間にかマンザイになっている。これが出来るのは中川家だけだ。しかも、途中で吹いてしまうのは、どちらかが予定にないくすぐりを入れたのだろう。それでも、マンザイとして絶対に破綻しない。ラジオの「宗教の時間」が抜群に面白い。お兄ちゃん剛のアドリブだ。

<大トリ>

【爆笑問題】太田光(55歳)、田中裕二(55歳)。ビートたけしは爆問に優しい。雰囲気が良く、客席もあったかくなる。「鬼滅の刃」。

『THE MANZAI』は芸人にだけ「進取の精神」があれば、いつまでも続く番組になるだろう。たけし賞は、「いい加減にやっているようだが面白い」受賞理由の中川家であった。「いい加減にやっているようだが面白い」これがマンザイだと筆者も思う。

所詮マンザイ、これが芸人の矜恃だ。

 

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