<消費を資源に変えるリユースの魔法>日本の家庭に約90兆5352億円の埋蔵品

ライフハック

岡部遼太郎(ITライター)

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「都市鉱山」という言葉を存じだろうか。文字通り、都市に存在する鉱山という意味である。それは日本の家庭のいたるところにあると言われている。例えば、使わない電子機器や家電には、貴金属やレアメタルが含まれているし、クローゼットやタンスの中には古いブランド品が埋もれている。それらを資源として回収・再利用すると、実は巨大な鉱山が出来上がるというわけだ。

日本は世界有数の埋蔵量をほこっていると言われており、貴金属はもとより、日用品からブランド品に至るまで、豊かな資源が家庭に眠っている。この「かくれ資産」ともいえる家庭内鉱山は、メルカリの調査(2025年版)によれば、日本国内で約90兆5352億円に上ると推計されている。単純計算で、国民一人あたりの平均71.5万円という金額だ。

持っていること自体を忘れている場合もあるだろうが、日本人に多いのが「いつか使うかも」という感覚で眠らせているケースだ。この現状は、資産運用時代の今、あまりに大きな「機会損失」であると言えるだろう。一方で、この埋蔵された鉱山資源を発掘し、再利用するための機会は存外、身近に存在している。

<リユース市場は14年連続拡大>

リサイクル通信(リユース経済新聞社)の推計によれば、2023年のリユース市場規模は3兆円を突破し、2009年の調査開始以来14年連続で拡大を続けているという。物価上昇が続く中、リユース品を活用するライフスタイルは、社会の持続可能性を支えるインフラとして定着している。

一方で、リユースと聞くと「安価なお古」という印象を持つ人も少なくないだろう。本稿では、リユースを「安価なお古」ではなく「都市鉱山の埋蔵資源」と位置付けることの重要性に着目したい。

まず私たちがすべきは「意識のアップデート」である。まずは、家庭に眠る資産の市場価値「都市鉱山」の存在を確認し、最適なタイミングで運用することの有用性を知ることだ。身近なことで言えば、リユースショップや買取店へ足を運ぶことは、「困窮」を意味せず、「資産管理」「資産運用」である意識を持つべきなのだ。

<K-GOLDインターナショナルが描く「かくれ資産の循環」>

そこで本稿では、都市鉱山、特に「かくれ資産」ともいわれる家庭内埋蔵資産の運用を専門とする株式会社K-GOLDインターナショナル(静岡・久保田 創 代表取締役社長。以下、K-GOLD社)に取材し、話を聞いた。

K-GOLD社では、かくれ資産を運用する上で、リユース買取事業を「売るだけ」「買うだけ」という単一の消費行動に留めず、ユーザーのライフステージに応えるための「価値の循環サイクル」を構築しているという。具体的には、同社は「リサイクルキング(循環)」「ルデークオル(選定)」「リクチュリエ(再生)」という3つの専門ブランドを展開しており、他にはない顧客利益を実現している。以下に、K-GOLD社の事例を紹介したい。

(1)リサイクルキング(循環)
K-GOLD社は、全国のショッピングセンター内において「リサイクルキング」という店舗を展開している。リサイクリングは、オーナーにとっては役目を終えた品を再評価することで、次代へと繋ぐハブ(拠点)になっている。単に「不要品を買い取る」場所ではなく、オーナーの思い出も継承させるパーソナル・パートナーとして機能させており、資産サイクル全体の信頼を支える入り口という位置付けだ。

(2)ルデークオル(選定)
リサイクルキングによって買い取られた資産は、「ルデークオル」によって次のステージへと循環される。K-GOLDの自社内ブランドの連携により、買取から精錬・研磨・販売までを行う「一気通貫モデル」で、高品質な品を誠実な価格で提供することを可能にしているという。もちろん、精錬・研磨の過程では、プロの手により新品同様の輝きを取り戻している。そのため、リサイクルキングで資産を最適化したユーザーが、それを元手に、ルデークオルで新たな資産を手に入れるという構造だ。これは「街の中古屋さん」というイメージとはまったく異なる、まさに「資産の循環」と言えるだろう。

(3)リクチュリエ(再生) 
K-GOLD社には、思い出の品を手放さず再構築して使い続けるという道も用意されている。同社のブランド「リクチュリエ」は、ジュエリーのメンテナンス、リフォーム(補修)という形で、資産の「再生」を担っている。ここでは「親から譲り受けたがデザインが時代に合わない」「今の自分の好みにそぐわない」といったありがちだが、無視できない状況に対応している。思い出や思い入れという無形の価値を、現在の自分に合う有形のデザインへと再構築することが可能だ。また、リフォームする際に不要となる地金はその場で引き取られ、その下取り分がリフォーム代金から割り引かれる。資産の価値を余すことなく、新しい形への進化に活用する同ブランドは、ユーザーの気持ちに寄り添ったリユースのもう1つの形と言えるだろう。

<全店直営こそ不正防止のための「真贋の砦」>

この循環と再生こそが、K-GOLD社が提供する新しい資産管理の形である。ユーザーは同社の中でこれらの2つの道を選択できることで、モノの無限の可能性を引き出すことができるという。そして、この構造を成立させるために必要なことは、ユーザーからの信頼であることは言うまでもないが、K-GOLD社では「全店直営」というビジネスモデルを徹底することで、それを担保している。
一方、近年の二次流通市場を脅かしているものといえば、AIすら欺く精巧な「スーパーコピー」の横行と言われる。十分な防止ができなければ、いかに豊かな日本の都市鉱山も瓦礫の山になってしまうだろう。

K-GOLD広報担当者は、こういったコピーの台頭に対抗できるのは「真贋の砦」こそ、熟練したスタッフの存在であるという。K-GOLD社では、全店直営にすることで、リサイクルキングのスタッフへの一括・一貫した教育システムを実現しているそうだ。

具体的には、K-GOLD社は正会員として加盟するAACD(日本流通自主管理協会:並行輸入品・中古ブランド品の偽造品などの流通防止と排除を目的とした公益団体)に認定された協会基準判定士であるベテランスタッフたちを抱え、彼らが長年培ってきたスキルを独自のマニュアルに落とし込み、現場スタッフへの研修を行っている。これにより実現している正確かつスピーディーな査定の安心感は消費者にとっては大きい。

<都市鉱山=家庭内埋蔵資産のアップデート>

ちなみに、同社は都市鉱山の資金運用という意味では、相続時などに便利なサービスを提供しているというからなかなかユニークだ。都市鉱山の中には、親の世代から家庭内に埋蔵しているものも多い。リサイクルキングでは「金の分割加工」というサービスも行っている。

例えば、1kgのインゴットをそのまま保有し続けることは、運用する上で扱いづらい場合や、相続時に不平等が生じるリスクを持つ。同社はこれを50g~100g単位に小分けすることで、計画的な生前贈与を可能にしているわけだ。

同社広報担当者によると、このサービスの利用者は60歳以上の割合が高く、実際に小分けにした上での資産運用や、ご子息への生前相続時に大変喜ばれているそうだ。

このように、従来のリユース業社とは一線を画した企業の登場は、今後の我が国におけるサスティナブルなリサイクル市場の発展には不可欠だろう。例えば、本稿で紹介したK-GOLD社のような事例では、自らを「リユース品の買取業社」ではなく、ユーザーに寄り添う「資産のコンシェルジュ」といった位置づけにしている。この点などは、そういった企業意識やビジネスポイントの変化がみてとれる。

<「消費」を「資源」へ。リユースが描く日本の未来>

家庭に眠る「都市鉱山」を掘り起こし、精錬を経て再び市場に戻すことは、環境負荷の高い新規採掘を抑制する極めてエコロジーな活動である。特に金は、他の金属に比べ採掘時の二酸化炭素排出量が圧倒的に高く、さらに採掘時に生態系を壊す可能性のある薬剤を大量に使用する。それを抑制する買取ビジネスは、経済合理性と環境保全を両立させる、サスティナブルなビジネスモデルの代表格と言えるだろう。

かつてモノを購入することは消費の終着点であった。しかし資源不足や物価上昇が叫ばれる今、我々は「消費」という言葉の定義を根本から書き換えなければならない時代に突入している。そんな時代だからこそ、K-GOLD社のような、「消費」を「資源」へと変える循環型社会の実現を目指す企業への注目も集まっている。単なる「買取業社」とは異なる存在感を示すフォロワー企業も、今後も続々と登場する予感だ。

ますます拡大が予想されるリユース市場の中で、埋もれることなく時代に合った「存在感」を示すためには何が必要なのか?もちろん、経済合理性や利益追求も重要であるが、それだけが全てではないだろう。リユース市場が切り開く未来を改めて考えてみたいものだ。

 

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