スタイル・エッジ社「債務整理に関する意識調査2025」をリリース
時田秀一(本誌ライター)
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若者層を中心に増加を続ける多重者債務問題。日本貸金業協会によれば、2025年2月の無担保貸付残高は4兆4526億円。前年度比5%増だという。この要因としては、近年の急速な物価高などの終わりなき消費の拡大、アプリなどを利用した手軽すぎる借り入れ手続きなどがあると言われる。理由は何であれ、今の日本は債務に苦しむ消費者が増えてきていることは明らかだろう。
そんな中、2025年10月、「債務整理に関する意識調査(https://x.gd/YB79K)」というユニークな調査結果がリリースされた。調査を発表したのは、士業・医業を専門にするコンサルティングファームの株式会社スタイル・エッジ(東京・代表取締役社長 島田雄左)。対象者は20代から60代の債務整理当事者の男女500人だ。
同調査によれば、債務に苦しむ消費者のうち弁護士や司法書士のような専門家に債務整理を委託した7割以上が、最初は自分でも解決方法を調べたりしていたものの、最終的には「やってよかった(74.8%)」という意見となっている。
他にも「専門家へ相談する勇気がなかった(32.4%)」「自分の状況を話すのが恥ずかしい、抵抗がある(30.4%)」という回答がある一方、実際に債務整理をした当事者の声として「早く相談するべき」 という声が多数あったという。
これらの結果から明らかになるのは、債務整理に関する正しい認識や知識がまだ十分に浸透しておらず、相談行動そのものに一定のハードルが存在していることなのかもしれない。

本稿では、債務整理の現実を浮き彫りにした「債務整理に関する意識調査」を実施した株式会社スタイル・エッジの代表取締役社長・島田雄左氏に話を聞いた。
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(以下、インタビュー)
本誌ライター・時田秀一(以下、時田):本日はよろしくお願いいたします。今回、「債務整理」に関する意識調査を発表されました。この取り組みの背景には、どのような狙いがあるのでしょうか。
株式会社スタイル・エッジ 代表取締役社長・島田雄左氏(以下、島田氏):弊社のクライアントである士業・医業といった業界の中で、特に債務整理や美容クリニックなどについて昨今、様々な報道が目立つようになりました。まずはしっかりと現状を把握するためにも、実際にサービスを検討した経験のある一般消費者の方々の“生の声”を聞き、それを可視化することが不可欠だと考えました。その客観的なデータを基に、クライアントである専門家や業界全体にフィードバックしていくことで、社会に還元していきたい。そうした信念から、この調査を始めました。
時田:消費者の視点から業界を変えていこうという試みなのですね。調査結果を見ると、債務整理を検討する方は50〜60代が多い一方、若年層も少なくありません。世代間に債務のあり方などの特徴をどう分析されますか?
島田氏:50〜60代の方々は、やはり住宅ローンや事業資金カードローンなどを、長年かけて積み重ねてきた結果として、その世代で返済が限界を迎えるケースが中心です。30代、40代で住宅ローンを組み、定年を前に収入が減少し、想定外の事態に対応できなくなるという、まさに人生の終盤においてリスクが顕在化した形です。一方で、若年層については、より現代的な課題、特にキャッシュレス化の進展が大きな影響を与えていると考えています。手軽になりすぎたことで肥大化する債務を見えづらくしていると思います。
時田:若年層の借入れは、上の世代とは質が違う?
島田氏:はい。そこには明確な違いがあると思います。スマートフォン決済やアプリローンなど、文字通りワンクリックで借入れができてしまう。この手軽さが、債務への危機感を麻痺させてしていると思います。特に、日本の学校教育では、お金やローンの仕組みについて実践的に学ぶ機会がほとんどありません。日本の金融リテラシー教育が十分に行き届いていない現状も、社会に出たばかりの若者を、知らぬ間に返済困難な状況へと追い込んでいる要因の一つではないでしょうか。さらに、近年の物価高というマクロな経済環境も相まって、もはや債務問題は特別な誰かの問題ではなく、いつでも自分の身に起こりうる「社会構造上の問題」だと考えています。
時田:誰にも身近に起こりうる問題という認識が必要だということですね。ところで、相談形式について調査では「対面」での相談が7割と大多数を占める一方、オンラインや電話を希望する声も3割以上存在するという結果が出ています。この点についてはどう思いますか?
島田氏:これは、実は非常に繊細で扱いの難しい部分です。なぜなら、弁護士会や司法書士会の規定で、「借金問題だけは対面でなければならない」というルールが残っているからです。私自身、この「対面原則」は業界が抱える課題でもあり、変革の必要性を強く感じています。
時田:都会は良いですけど、弁護士が身近にいないような地方はたくさんあります。そういう地域に在住の人は、気軽に相談すらできませんね・・・。
島田氏:その通りです。仮に近くに弁護士がいたとしても、その弁護士が自分に合うとは限らない、という問題も残ります。
時田:地方の人は債務整理の相談をすること自体が高い障壁になってしまいますね。
島田:他の法律相談、例えば離婚や相続はオンラインでも可能なのに、なぜか借金問題だけが「直接対面で」という重いルールを課せられている。借りる時はアプリで一瞬なのに、返すための相談は物理的な移動と時間的拘束を伴う。このハードルの高さにより多くの人が相談をためらい、問題を深刻化させてしまっていることもあるかと思います。もちろん、直接お会いして話したいという方もいます。オンラインが絶対だと言っているわけではありません。大切なのは、相談者が自分の状況に合わせて最も安心できる方法を自由に選べる環境です。裁判ですらオンライン化が進むこの時代にあって、本来もっとアクセシビリティが求められるべき分野で選択肢が提供されていない。この現状は、業界全体で早急に見直しを検討すべきだと考えています。
時田:今回の調査は、単に債務整理の実態調査というだけでなく、債務整理が持つ社会的な意味にも踏み込んでいると思います。
島田氏:私自身、司法書士として多くのご相談に関わってきました。その中で、債務整理は単なる金銭問題の解決ではなく、「人生を再建するための社会的なセーフティネット」だと思っています。実際、借金額が300~400万円を超えてくると、お金の問題が引き金となり、最悪の選択をしてしまう方もいらっしゃいます。法的な手続きを踏むことで、「もう一度やり直せる」という希望と安心を提供できる。この制度は、文字通り人の命を救うための砦なのです。
時田:調査結果から「先延ばしは状況を悪化させる」という見解もありますね。
島田:この部分は完全に「知識」の問題になっています。十分な知識がないため、相談に行くこと自体に、強い抵抗感を持つ方も多いのが実態です。「恥ずかしい」「怒られるんじゃないか」といった、無知と先入観に基づく誤解から、問題解決を先延ばしにしてしまい、悩みを抱え込んだ結果、事態がもっと悪化してしまう・・・といった悪循環が生まれます。本来であれば、もっと早く相談していれば防げたケースが、数多くあります。
時田:「恥ずかしい」という気持ちが相談への壁になる、一度でも借金をしたことがある人であれば誰でも理解できますね。
島田氏:「恥ずかしい」といった感情こそが、問題を重症化させる要因です。だからこそ、こういった調査や啓発活動を通じて「もっと早く、気軽に相談していいんだ」といった社会的な雰囲気を作らなければならないと痛感しています。
時田:今後はこういった調査活動は継続される予定ですか?
島田氏:今回の調査は、あくまで第一弾です。今後は四半期ごとにテーマや切り口を変えながら、継続的に実施していきたいと考えています。単なる調査で終わらせるのではなく、データとして蓄積し、クライアントや社会にフィードバックすることで、業界全体の改善につなげていきたいです。また、士業・医業広告についても調査や分析を進め、より消費者に利益があるように業界に対してフィードバックをしたいと思います。
時田:士業・医業広告も議論が山積のテーマですね。
島田:単なる「売るための手段」ではなく、「正しい選択肢を必要な人に届けるための装置」として士業・医業広告は活用されるべきだと考えています。そうすることで、本当に困っている人に「ここに相談すればいいんだ」と気づいてもらえる導線をつくることができる。そうなれば、広告が「集客」という機能だけではなく「士業・医業の啓蒙活動」にもつながるはずです。それも広告が持つ大切な社会的役割のひとつだと思っています。
(以上、インタビュー)
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ワンクリックで手軽に借金ができてしまう今日、債務整理のようなトラブルは、誰にとっても他人事ではない。しかも、それが可視化されづらい経済構造になっていることも問題の要因だ。
島田社長は「社会の不合理や矛盾に真摯に向き合い、これまで声にならなかった当事者の思いをデータとして社会に投げかける」と力説する。業界と社会の間に横たわる「すき間」を埋めていくことこそ、士業・医業に特化したコンサルティングファームの経営者としての確かな使命感であるという。
債務整理の問題は、単なる個人の金銭感覚の問題ではない。社会構造の歪み、教育の不足、そして制度や規制の在り方などが複雑に絡み合った、現代社会が抱える課題のひとつである。そして、こうした社会課題に向き合い、より良い仕組みを提案していくことこそ、これからの企業やビジネスパーソンに求められる役割なのかもしれない。
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