<「白アリ退治」を怠るな>日本維新の党と旧文通費の行方

政治経済

山口道宏[ジャーナリスト]

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8月26日、「出来レース」「茶番」と言われようと日本維新の党の初の代表戦が終わった。新しい船出に際して馬場信幸新代表は松井前代表の精神を引き継ぐと宣言したが、そのやり残しのひとつに「白アリ退治」があった。

「白アリ退治」とはこうだ。

「国会議員は国民の税金に群がるシロアリだ」(吉村日本維新の会副代表)といい、橋下徹元代表もまた「(日本維新の会が)文通費で他党を批判しても、それ以上の活動費では他党と同じ」と、まだある不透明な不正受給にメスをいれろと当時執行部へ「喝」だった。

議員一人当たり文通費(文書通信滞在費)が1か月100万円を僅か1日在職でも支払われたと維新(日本維新の会)の新人議員が「暴露」した。「よくぞやった」と先の衆院選で大躍進の維新最初の偉業! とメディアはこぞって伝えた。そんななか日刊ゲンダイが「ブーメラン吉村知事」と維新副代表・吉村洋文氏が衆院議員時代に自身も1日在職だけで文通費を手にしていたではないか、と嚙みついたから痛いところをつかれた。

[参考]4億円踏み倒し「ひろゆき氏」の統一教会批判に感じる違和感

なぜ廃止といわないのか!? 1か月100万円自体がどうか!? 文通費は怖じることない掴み金だ。当の吉村副代表も今回は「日割り計算」で決着しようという自民党、立憲民主党、公明党を中心とする合意は「ごまかしだ。経費である以上、領収書をつけて清算、余れば国庫に返金をすべき」と当たり前の主張でその場を逃れた。

しかし、「日割り」「使途公開」「残額返納」の3点セットの与野党合意という法案は、昨4月15日の国会で「日割り」のみを成立(共産反対)で了。また、法律の呼称変更なる手口で「使用目的」をさらに緩和、拡大させたから何をかいわんや。国民への裏切りをあらわにさせた。文通費はいまや名を変えて「調査研究広報滞在費」とか。改名で逃げきる算段は件(くだん)の旧統一教会と一緒だ。このままでは「身を切る」どころか爪も切れない。

そうでなくても、これ自体が「歳費」と別腹だが同じく原資は国民の血税に他ならない。使途不明では依然として国会議員にとって「便利な金」のままだ。そもそも「日割り」という落としどころが卑しい。国会議員の「歳費」の怪しいことはもう10年以上も前に話題になった。領収書不要のそれらは、不透明支出、不適切支出があったにせよ、どこからもメスも入らないから「税金詐取」と呼ばれても不思議でない。

全ての「歳費」は金額の適正化と3点セットであるべき、はいうまでもない。特別職の公務員が国民になにを隠さなくてはならないのか。疚しい事情があるのか。

ざっとこんな試算だ。公(おおやけ)には国会議員一人当りの年間受け取りは、歳費(給料)2200万円+文通費1200万円+事務費720万円の4120万円。さらに政党助成金からの「分配金」が各々に加わる勘定だ。即ち317億7300万円もの政党交付金(2021年8党合計)が、黙っていても<別財布>ではいってくる「選良」たちなのだ。

身内が身内を律する。つまり国会議員が「徹底した透明性を」は「他の怪しい歳費だって」「政党交付金は要らない」に続かないと、単にやってる感の演出だ。国会議員とはかつては自らの「持ち出し」で、議員になっても「うま味」などない志(こころざし) だけの名誉職だった。維新の「身を切る覚悟」の行方が気に懸かる。

シロアリはゴキブリの仲間という。駆除には強力な殺虫剤で「もとから断たなくてはいけない」。議員歳費の前払いを辞めるがいい。

 

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