<美容医療広告の先にある信頼>AND medical groupが大切にする、顧客との真の接点
岡部遼太郎(ITライター)
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現在、急速に拡大している我が国の美容医療市場。2019年度には、4000億円だった市場は、ここ数年で6000億円を超え、2024年度は前年比106.2%の6310億円という急成長を遂げている。
この拡大の背景には動画SNSを中心とした多様な広告マーケティングや消費者の美容医療に対する意識の変化、オンライン診療やAIなどを利用したサービス向上・業務効率化などが大きく影響しているとも言われる。一方で、そういった新しい環境や手法の導入には、これまで予期してこなかった新しい課題や問題も山積している。特に、医療分野では人命に関わることでもあるため、ネット広告への規制や、業界全体の自主ルール策定なども進められている。
本誌では、医療法人AND medical group代表理事・草野正臣氏へのインタビューを行い、現在の医療広告についてレポートした。草野氏は、AND medical groupは創業からわずか4年で30ものクリニックをオープンさせたことで注目される経営者である。
本稿は、前回に引き続き(https://mediagong.jp/?p=34255)、インタビューの第二回目。今回は美容医療広告のその先、顧客との向き合い方について話を聞いた。
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(以下、インタビュー)
インタビュアー ITライター・岡部遼太郎(以下、岡部):前回は、医療分野での広告についてのお話をいろいろと伺いました。もちろん、広告で集客することは重要ですが、一方で、前回のお話でもあったように、広告で興味をもってもらってからの先が大切です。そういった点で、AND medical groupとして取り組んでいることはありますか?

(インタビューにお答え頂いた一般社団法人AND medical group草野正臣代表)
一般社団法人AND medical groupの代表理事・草野正臣氏(以下、草野代表):私たちAND medical groupの広告はおかげさまで、非常に評判がよく、これをきっかけにわたしどもが提供している医療に興味をもっていただき、足を運んでいただけるケースは非常に多いです。しかし、そのためには、とにかく実用的といいますか、患者様たちのニーズとライフスタイルにあった医療サービスの提供が不可欠です。
岡部:高い医療技術の提供というだけではなく?
草野代表:もちろん、高度で先進的な医療技術の提供は当然です。しかし、それだけは、多くの競合クリニックの中から、「選んでいただく」ことはできません。日本の美容医療の技術水準は年々優秀な先生方が増えていっており非常に高くなってきていますので、どのクリニックも切磋琢磨し、甲乙つけがたい技術力をお持ちですから。
岡部:高度な技術を提供するのは当たり前として、それ以外の部分でも差をつける、ということですか?
草野代表:その通りです。医療機関が患者様に提供するものは、医療技術だけではありません。安心感やホスピタリティ、あるいは受付のスタッフの電話対応から医師の説明方法まで、あらゆる場面で患者様たちに評価され、判断されていると思います。院内のインテリアやかけているBGMまで、患者様からジャッジされる要素は無限にありますね。
医師だけではなく、看護師、受付や事務対応など、患者様と接する全ての人・サービスがシビアに見られています。
岡部:例えば、AND medical groupではオンラインでのカウンセリングを導入していると伺いましたが、そういった試みも患者様へのサービス向上の一環なのでしょうか。
草野代表:もちろんです。みなさん働き方が多様化していますし、仕事のオンライン化も進んでいます。医療機関のカウンセリングだけ対面でやるということに「非効率性や、圧迫感」を感じる人は多いと思います。そのような背景もあり、私たちは2年ほど前から、グループ全体でのオンラインカウンセリングを導入しています。
岡部:やはりコロナ禍以降の急速なオンラインツールや環境の発達がきっかけでしょうか?
草野代表:きっかけとしてはそうですね。加えて、診療時間は有限な中で、医療機関を運営する立場として重要になってくるのは、クオリティを下げずに、いかに多くの患者様のカウンセリングすることができるか。これをKPI(Key Performance Indicator:要業績評価指標)として重視しています。
岡部:導入当時、スタッフの方々の反応はいかがでしたか?これまでは対面だったわけですよね?
草野代表:当然、最初は違和感があったと思います。やはり医療は対面が前提ですから。一方で、オンライン診療も、どんどんと普及しはじめていた時期でもありました。今思えば「慣れ」の問題ですね。実際に始めてみると、対面が当然と思っていたスタッフからも「オンラインの方がやりやすい」という声が多く聞かれましたから。もちろん、クリニックの側だけではありません。患者様側もオンラインであれば感じるプレッシャーも少なくすむようです。あまり対面での会話が得意ではない患者様にとっては、オンラインは医師と話しやすい環境になっていると聞いています。
岡部:確かに、患者様もオンラインだと緊張感なく、自分のペースで話せますよね。本音も言いやすいんじゃないか、と思います。
草野代表:AND medical groupの場合は、来院していただく場合でも、オンラインカウンセリングで多く対応しています。これはリモートワーク環境のように、患者様にはボックス型のスペースに入ってもらい、モニター越しにカウンセリングを行います。対面よりも圧迫感がなく、「合わない」と感じたらすぐ退出できる環境にもしているので、患者様のストレス低減に高い効果を挙げており、評判が良いサービスです。実務的な面でも、オンラインの方が業務効率化という意味でのメリットもあります。
岡部:なるほど・・・来院してもオンラインというシステムは、今の若い人の感性に合っていると思います。
草野代表:それは私も強く感じます。
岡部:ちなみに、医療現場でも初期対応などではAIの利活用が進んでいますが、AND medical groupでは今後AIなどの新しい技術の導入は考えていますか?
草野代表:美容医療の分野は日進月歩で、日々、新しい医療機器や薬剤が出ています。もちろん、医療面だけでなく初期対応や事務システム、患者様の対応環境など、AIなどの最新技術が活用できる場面は多いと感じていますね。患者様のためになるのであれば、積極的に取り入れていきたいと思っています。
業界としても変化の時期にあると思いますし、どんどん新しいものが出てくる。そこに対して常にアンテナは張っていきたいと思います。広告の件もそうですが、新しいことは課題や問題が多いことも事実なので、ルールや倫理を守りながらも、できるだけ柔軟に、新しいものを取り入れていければと思っています。
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(以上インタビュー)
日本の多くの医療法人グループは、医師が経営トップをかねるケースが多い。しかし、AND medical groupでは、医師の現場トップと、経営やマーケティングに専念する経営トップを分けることで、変化スピードの速い現在の日本の医療分野において、消費者ニーズに合致した的確で迅速なサービスの提供に成功していると言えるだろう。今後とも注目したい。
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