<新たなフットケアの第一人者に聞く>急拡大する国内フットケア市場の現在
時田秀一(本誌ライター)
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ドラッグストアやスーパーの化粧品売り場などで、フットケア商品が急増している。フットケア商品とは、足の健康だけでなく、美的なケアや足由来の不快感の改善や、心地よさの向上など、その幅は広い。クリームやスプレーのようなものから、マッサージデバイス、靴のインソールや巻き爪や外反母趾の補修といったものまでさまざまな商品が提供されている。中には「はぁ、こんなものまで・・・」と感じるユニークなものも多い。
世界的にフットケア市場は拡大しており、特にフットケア商品は、消費者からの多様なニーズに応えるためにも急速に拡張している。日本も例外ではない。Spherical Insights & Consultingの調査によれば、日本のフットケア商品市場は、2025年現在543.4 百万ドル(約 837億円)。今後の年平均成長率(CAGR)は6%以上が’期待されており、2035年には1,049.8 百万ドル(約 1,615.7 億円)にまで拡張すると予測されている。
この市場の拡大は、それだけ足に悩む/足を気にする人は多いという証拠でもあるだろう。ドラッグストアやディスカウントショップに溢れている面白そうなフットケアグッズに思わず足を止めてしまった人は筆者だけではあるまい。
本誌ではこれまでもフットケアを含めた健康ビジネスに関するさまざまなレポートを出してきた。本稿ではベストセラーにもなった「外反母趾はテープ一本で治せる」(KADOKAWA)の著者であり、フットケアビジネスの第一人者としても知られる株式会社整足院の院長・柏倉清孝氏に話を聞いた。
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(以下、インタビュー)
インタビュアー 時田秀一(本誌ライター・以下、時田):日本のフットケア市場は急拡大と言われています。特に、フットケア商品は生活していても「増えたな」「多いな」と痛感します。フットケアの現場の最前線にいる柏倉院長は、日本のフットケアの現状をどう見ていますか?
整足院・柏倉清孝院長(以下、柏倉院長):はい、ものすごい勢いで拡張していると実感していますが、一方で、それは消費者のみなさんがフットケアに関心を持つようになった、気を使うようになった・・・という意識変化の現れだと思っています。
時田:かつてはそうじゃなかった?
柏倉院長:たとえば、私がフットケア業界に関心をもったきっかけは学生時代のクラブ活動でした。私の高校時代はバスケットボールでインターハイ、大学時代はラクロスで学生日本代表として活動していました。一生懸命に部活動に励んでいた選手生活では、足の故障や不具合をたくさん経験しました。その時の不調改善がフットケアに関わるきっかけでした。つまり、ほんの最近はまでは足専門の治療は「そういう人」たちが関心を持つものだった気がします。
時田:病気やケガ、専門的にフットケアが必要なアリスート・・・という印象ですかね。
柏倉院長:はい、そうですね。実際、私の学生時代でもフットケアに通ったり、フットケア商品を購入していたのは、病院では改善が難しいような足の不具合や不調を整えることが目的にしていた人が多かったですね。
時田:そういった特殊な市場だったフットケアが急速に拡大した要因は何でしょうか?
柏倉院長:それが意識の変化だと私は考えています。そもそも、フットケアは先ほども言ったように、専門的な治療を除けば、美脚ストッキングとか、いい匂いのするクリーム、中国の足ツボマッサージのような娯楽性があるものが中心で、必ずしも身体の不調改善のための医学的対象ではなかったように思います。しかし、最近の様々な研究なども進み、足の変形やアーチ不足や踏ん張る力がなくなると、その不安定を体の上部で補おうとするのが押さえておくべき重要な身体メカニズムです。結果的にそれが無理を生んでしまうため、足だけでなく、腰や股関節、背中や首・肩といった身体全体への不調を起こしてしまうことがわかっています。

(今回お話をうががった整足院・柏倉清孝院長)
時田:「病は気から」ではなく「不調は足から」ですね。
柏倉院長:その通りです。足は人間の立つ時・歩く時の「土台」ですからね。私の著書の中でも詳しく書いていますが、足からの「インパクト(衝撃)」や「ツイスト(ねじれ)」が身体全体の不調の大きな要因となっています。私の著書や記事だけでなく、そういったことを紹介する本やテレビ、ネット情報も増えました。その結果、単に美脚とか爽快感だけでなく、身体改善や根本改善の手法としてフットケアが注目されるようになっていると思います。
時田:院長をを務めている「整足院」も現在77店舗と聞いています。今年の6月にも一度、本誌では柏倉院長にお話を聞いていますが、その時の記事では72店舗をと伺っていました。半年足らずで5店舗も増えた、ということですよね。これはすごい。
柏倉院長:おかげさまで、私たちの「整足院」も非常に好評です。特に、特許を取得した「整足テーピング」施術に関心を持ってきていただける方が多く、私の推進している「未病状態から改善をしていく」「一生、自分の足で歩くために」ということの重要性も理解されるようになってきたと思います。
時田:「足専門の施術」を提供する整体院は他にはあるのでしょうか?
柏倉院長:リフレクソロジーや足ツボマッサージのような、施術の一部にフットケアを取り入れているところは比較的多いと思いますが、専門的な知識や技術を持ったスタッフによる「足専門の施術」を提供しているところは他にはあまりないと思います。規模的にもクオリティ的にも「整足院」が国内としては最大手になるとは思いますが、今後もどんどん増えてゆくと思いますし、新しい技術や商品もどんどん開発されてゆくと思います。私たち「整足院」も足の不調に悩むみなさんのニーズに応えられるように、新しい技術、新しい情報をどんどん取り入れていきたいと思います。
時田:整足院のサイトには、各店舗の紹介ページ(https://seisokuin.jp/)がありますが、スタッフさんはみなさん共通の専門的な資格を持っていたり、研修も充実しているとのことで、専門家に相談できる点は安心ですよね。
柏倉院長:やはり、大事な身体を預けるわけですから、スタッフも顔の見える専門性は重要だと思います。特に、私自身がそうですが、自分の辛かった足の不具合の経験があることも重要だと考えています。フットケア商品市場も拡大して、関心を持っている人も増えていますが、一方で、そういった商品をとっかえひっかえ使っても、一時的な心地よさはあるのですが、結局、根本的な改善にはつながりません。フットケアが気になっている人は、やはり、根本改善を目指した、専門的な知識・技術を持っている人から、専門的な話を聞いて施術を受けることを強くお勧めしますね。たとえば、私が得意とする整足テーピングでの外反母趾施術がそうなのですが、外反母趾は形ではなく「痛みの解消」をして、そこから次に「機能面の改善」に進むことも重要ですが、専門的な知識がないとそういうことは分かりませんから、根本改善には至りません。
時田:確かに、形とか一時的な心地よさのための商品は買いがちですね。
柏倉院長:高額なオーダー靴を買ったり、いろいろなインソールを試すことにお金を費やす・・・という方は多いのですが、それらはどうしても一時的なものです。私たちとしては、足本来の機能を取り戻すような専門的な根本改善をしっかりと患者さんの悩みやニーズへのヒアリングを通して、専門的な知見からアプローチすることを心がけています。
(以上、インタビュー)
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急速にフットケア商品市場が拡大している一方で、根本改善のためには、そういった一時しのぎ商品だけではなく、専門的な施術や対応が必要であると力説する整足院の柏倉院長。確かに、心地よさや快感目的のフットケアで「あー、気持ちよかった」と満足してしまう人は多いが、根本的な改善をしているわけではない、という指摘はまさにその通りだ。結果的に、フットケア商品を買い続ける、マッサージに通い続ける・・・という悪循環では本末転倒だ。もちろん、足が要因となった身体全体の不調や不具合が「あー、気持ちよかった」で治るはずもないのだろう。
フットケアへの関心が高まる一方で、柏倉院長のような専門家はまだまだ少ない。フットケア市場で77店舗、専門店としては国内最大級の「整足院」が唯一の専門店といって過言はないが現状だ。言い換えれば「まだ77店舗しかない」と言えるのかもしれません。
拡大するフットケア市場、フットケアビジネスについて、今後も本誌で取材を続ける予定である。
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