<「整足」ビジネスの可能性>世界約1.83兆円フットケア市場

ヘルスケア

岡部遼太郎(本誌ライター)

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年齢とともに、成人病などのいわゆる「大病」への危機感や備えを持つ人は多い。近親者の中にガンで亡くなった人がいれば、「自分はガン家系=いずれガンになる」と確信し、若いうちから対策に余念がない人も少なくない。

一方で、年齢とともに現れる身体的不調は、成人病や糖尿病のような「大病」だけではない。四十肩、五十肩、老眼、運動機能の低下や高血圧など、日々の小さな「不快」が積み重なり、やがては寝たきりにもつながる「大病」に発展するケースも少なくない。

その代表例として挙げられるのが「足」である。年齢とともに運動機能が低下し、若い頃のように走ったり、機敏に動いたりできなくなるのは当然だ。しかし、それ以上に、足に日々蓄積される細かな負担が歩行障害にまでつながることが多い。しかも、足の不具合が足腰や頭部の慢性的な不調の原因となっているケースも侮れない。

「外反母趾」や「足底腱膜炎」などは、靴が合わない、ハイヒールを履いているといった外的な要因で起こると思われがちだが、実はそれだけではない。近年の研究では「外反母趾になりやすい足の形状の遺伝」が要因として注目されており、外反母趾になりやすい人や歩行障害を起こしやすい人が存在するとされている。つまり、一般的に言われる「靴が合わない」などの理由は、副次的な要因にすぎないのだ。

たとえば、外反母趾は女性に多いとされるが、これは男性に比べて女性の足の靱帯や骨格が柔らかいため、足の形状(アーチ型)が崩れやすいことが主な要因とされる。つまり、男性でも外反母趾になる可能性は十分にある。ハイヒールだけが原因ではないのだ。

つまり、外反母趾でさえ、靴やハイヒールの問題といった単純な話ではなく、医学的・身体的な要因が背景にある。ファッションという曖昧な要素ではなく、正しい医学的処置があれば予防や治療が可能である一方で、靴を変えただけでは簡単に治るものではないのだ。

近年のワーキングスタイルの多様化も足に影響を及ぼしている。過去30年で外反母趾の症例は約10倍以上に増加しており、単なる「ハイヒールが悪い」とは言えない「国民病」の一つとなっている。フットケア専門のマッサージや整骨院が増加しているのも、その傾向を裏付けている。

しかし、クイックマッサージや整体院での「オプション」としてのフットケアは、一時的な快感は得られるが、根本治療にはなりにくいとされる。そんな中で、これまでたくさんの改善実績があり、足の根本改善を目指す「整足」が注目を集めている。「整体の一部としてのフットケア」ではなく、足そのものを対象とした「整足」である。

「整足」を専門とする 施術所は現在、国内に72店舗。外反母趾を中心に、フットケアや 足の根本改善を目指す施術所であり、「整足院」(https://seisokuin.jp/)は全国で72店舗に拡大しているが、これを牽引するのは株式会社整足院の院長・柏倉清孝氏一人である。「整足」という言葉は一般にも使われることがあるが、実は柏倉氏が保有する商標登録であり、施術方法も特許登録されていることから、「整足」は柏倉氏が構築した体系的な施術方法であることが分かる。

整足院はわずか3年半で70店舗以上にまで拡大し、整足という言葉だけでなく、フランチャイズ展開を中心に急成長している。現在、世界のフットケア市場は126億7000万米ドル(約1.83兆円)を超えるとされ、日本市場でも急速な拡大が見込まれる。整足院は、日本における本格的なフットケアビジネスの先駆けとして、医療業界だけでなくビジネス業界からも注目されている。

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岡部遼太郎(本誌ライター。以下、岡部):フットケアを取り入れた整体院やマッサージは増えている印象です。

整足院・柏倉清孝院長(以下、柏倉院長):はい、そうですね。ヘッドスパなども流行していますが、局部的な施術を集中的に行う整体院やマッサージ店は急増しています。コロナ以降、デスクワークやオンラインワークが増えたこともあるでしょうが、従来のような体をほぐすだけのマッサージから、より専門的な施術のニーズは増えている印象ですね。

岡部:増加の背景にあるのは?

柏倉院長:安価なクイックマッサージ店などの急増もあり、より専門性の高い施術やサービスで差別化をはかろうという動きもありますが、何よりも「根本改善をしたい」という点に尽きるでしょう。健全な体を蝕むのはガンのような成人病だけではありませんから。

岡部:局部的に、専門性の高い施術によって根本治療をしたいというニーズは増えていますか?

柏倉院長:はい、確実に、そして急激に増えています。特に足のように、毎日使わざるを得ない部分に関しては、ちょっとした不具合が生活全般に大きな影響を与えますから、さらにニーズは高いです。わたしたち整足院は、2021年12月からFC展開を本格開始したのですが、3年半で全国70店舗まで拡大しました。

岡部:なるほど、急拡大ですね。「整足」という言葉自体、柏倉先生の商標だと先ほどお聞きして、びっくりしました。てっきり一般的な言葉かと思っていましたから。

柏倉院長:そうですね(笑)、整体の中でオプション的に行われるフットケアに対して、本格的なフットケア=整足という認識が広まってきたことも、店舗拡大の要因になっていると思います。それだけ、足に負担や悩みを抱えている人は多いんです。

岡部:「整足」について、なんとなく分かりましたが、もう少し具体的に教えてください。

柏倉院長:整足は、外反母趾をメインに、浮き指、足ゆびの痛み、足裏の痛み、内反小趾、中足骨骨頭痛、足裏のタコ・ウオノメ、足底筋膜炎、有痛性外脛骨、甲の痛み、足首の痛みなど、足の不具合を全て専門的な知見と専門的な技術でカバーする施術です。痛みがなくても、足の痛みや変形に危機感がある場合も含め、施術しています。

岡部:いわゆるマッサージ店や整体院でオプション的に行われているフットケアとはだいぶ違いますね。

柏倉院長:はい、よく勘違いされますが、まったく違います。「足は第二の心臓」とも言われます。なかなか良くならない腰痛・肩こり・首こり・坐骨神経痛・膝痛なども、実は足からの負担が原因となるケースもありますので、そういった体の不具合も含め、慢性的な身体の症状への根本改善を目指しています。

岡部:整足の施術にはどのようなものがあるのですか?

柏倉院長:患者様の足の状態に合わせて、カスタムする形となりますが、代表的なものとしては、整足操と整足テーピングが高い評価をいただいています。整足操は文字通り、「足指の体操」です。足指を動かしやすく使いやすくしていきます。そこから、整足テーピングを施すことで、根本改善を目指します。整足テーピングは特許も取得した施術技術で、足指を補整して正しく使えるようにして、崩れた足のアーチを補整し、アーチを正しい位置に導き、足底のバランスを整えることで、足全体の機能を回復できます。

岡部:特許取得ですか、すごいですね。ベストセラーにもなっている先生の著書「外反母趾はテープ一本で治せる」(KADOKAWA)でも紹介されている施術ですよね。

柏倉院長:はい、あの本のおかげで、整足、整足テーピングに興味を持ってもらえる方が増えました。あの本を読みながらのセルフケアも可能ですが、やはり一度、整足院にきていただけると、さらにその効果を実感していただけると思います。

岡部:院長自身が施術なされることもあるのですか?

柏倉院長:もちろんです。整足は、私自身の経験に基づいた施術ですから、私が患者さんたちの気持ちが誰よりもわかっていると思います。私は学生年代にラクロスの日本代表選手をしていましたが、その時に浮き指による腰痛(腰椎分離症)に悩まされました。その時の克服経験から得た知識を活かして、整足や整足テーピングの技術があります。

岡部:足の苦しみは誰よりも理解できる?

柏倉院長:はい、それだけでは断言できますね。

岡部:クイックマッサージなどでも、整足のようなフットケアを提供しているケースが増えましたよね。

柏倉院長:整足や足の根本改善に関して関心や危機感を高めてくれるという意味では大歓迎なのですが、一時凌ぎの対応ではなく、本格的なケアをしたいと思えば、やはり手前味噌になってしまいますが、商標と特許をもっているいわば「本店」である私ども整足院に足を運んでいただければと思います。セルフケアでできることも多いので、根本改善に向けた、さまざまな情報も提供できると思います。

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(以上インタビュー)

急成長する我が国のフットケア市場を牽引する「整足院」が「かしわぐら整骨院/足の痛みバランス整体」の名前で最初の店舗を開いたのが2017年3月。その時の年商は約3000万円ほどであったという。それが現在では、グループ全体で年間売上約13億円に到達している。いかにこの市場が大きいのかがわかるが、一方で、それだけ足に悩みを抱えている人が多いということなのだろう。

美容整形は言うまでもなく、日本における健康関連、四肢ケアのビジネスはまだまだ未開拓であるとも言われる。特に、フットケアとヘッドスパは、今後の急成長が期待される二大ビッグマーケットだ。

整足院の今後の戦略としては、できるだけ早い段階での100店舗以上を必達目標とした上で、市場の動向次第で、150店舗、200店舗といった拡張も視野に入れている。そのためには、整足院として、「外反母趾や足の痛みの第一選択」になれるように、認知度・信頼度を高めてゆくことが現在の最大の目標であると柏倉院長は力説する。

特に、一般を対象とした整足(テーピングのアプローチ)は、国内だけでなく世界的にもまだ珍しいため、海外展開も目指しているという。

世界的にも大きなビジネスチャンスとニーズを持つフットケア市場の、「整足」という新しいフットケアサービスの今後に注目したい。

 

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