<今更きけないNISA事情>各社を徹底比較、開設すべき証券会社とは
土居聖香(本誌ライター)
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電気料金やガソリンなどのエネルギー価格の高騰で生活必需品の値上げが相次ぎ、実際に家計への負担を感じる人も増えてきたのではないだろうか。こうした物価高による家計の圧迫や将来への不安から、投資による資産形成を視野に入れる人が増えているはずだ。
2024年12月末時点での日本国内のNISA口座数は2560万口座。急速な増加であることは間違いないが、NISA口座の開設が可能な18歳以上の人口が1億600万人であることを踏まえればNISAを活用していない人が7割ほど存在する計算となる。
日本社会全体が、資産防衛や老後資産の確保などに高い関心を持たざるをえない状況であることを考えれば、この数値が意味しているのは、投資や資産形成に興味がないというよりは、「なんとなく敷居が高そう」「いまいち、必要性が分からない」と感じている、いわば「知識がないからどうすればよいかわからない」という層だろう。
NISAは日本政府が、国民の投資機運を高めるために肝入りで始めた制度である。貯金よりも効果的な資産運用として、電気代やガソリン代などの値上がりが続く状況下で、資産を守る・増やす方法として初心者でも活用しやすい制度なのだ。
そのため、知識や情報がない、というだけでNISAの制度を利用しない7割の人たちは、資産防衛を揺るがす可能性すらあると言えるだろう。
そこで本稿では、そんなNISAの魅力を改めて整理しつつ、具体的にどの証券会社で始めればよいかを解説したいと思う。
<そもそもNISAとは?>
NISA(少額投資非課税制度)とは投資の手法、種類ではなく、投資で得た売却益や配当金にかかる税金が非課税となる制度である。
通常、株式や投資信託を売却して利益が出た場合や配当金を受け取る場合には、およそ20%程度の税金が発生する。しかしNISA口座を通して行われる取引であれば、その部分が非課税になるため、リターンが高くなりやすい。
利益が非課税になる魅力的な制度であるにもかかわらず、理解が行き届いておらず、足踏みしている人も少なくない。2024年以降の新NISAでは非課税期間が無制限となり、非課税保有限度額の総額が拡充されるなど、投資家にとってより活用しやすい制度にアップデートされている。そのため、この制度をうまく活用するかしないかで、将来的な資産に大きな差が開くだろう。
<NISAを今すぐ始めるべき理由>
現在の日本では、公的年金だけに頼るのは難しく、物価上昇や将来的なインフレに備えるためにも、資産をただ貯金として銀行に眠らせておくだけではなく、効率的に増やしていくことが重要であると言われ、危機感が高まっている。
例えば、毎月3万円ずつ30年間(合計1,080万円)積み立てた場合を考えてみよう。
銀行の普通預金の場合、現在のような低金利(0.2%程度)では、30年間で合計1,113万円と、利息はわずか約33万円にしかならない。一方、同じ毎月3万円を、年率3%のリターンが期待できる投資信託に積み立てた場合、30年後には約1,748万円に達することになる。この差は実に約635万円にもなり、単に貯金に回しておくだけでは資産形成上、非常に大きな機会損失となる可能性がある。
何も考えずに、ただ惰性で貯金という安心感だけに囚われて資産を眠らせてしまうのは、長期的にはリスクですらある、とも言えるのだ。貯金ではなく、投資、という発想の転換の重要性を理解した上で、NISAを活用する重要性について話をしていく。
仮に、投資信託を一般的な口座(特定口座や一般口座)で運用して約668万円の利益を得たとすると、その利益に約20%(約134万円)の税金がかかるため、実際に手元に残る利益は約534万円になってしまう。つまり、資産の最終的な金額は約1,614万円となる。
一方、NISA口座を使って同じ運用を行った場合、この約134万円の税金は発生せず、そのまま手元に残る。そのため、NISAを利用しない場合と比較して約134万円もの差が生まれることになる。つまり、同じ投資をしていても、NISA制度を使うか、使わないかによって、大きな差が出るというわけだ。
特に、運用期間が長ければ長いほど、この差額はさらに大きくなるため、NISAはできるだけ早く利用するのが賢明といえる。< NISAを活用した資産形成において証券会社選びが重要な理由>
NISAを活用した資産形成において、どの投資先に投資をするかは非常に重要だが、それと同じくらいに重要なのが、証券会社選びである。
実は証券会社ごとにサービスに違いがあり、どの証券会社を選ぶかによって、最終的な資産額に大きな違いが生まれる。投資商品は、ほぼ同じものを購入できるが、証券会社毎のユーザーへの付加サービスで大きな差がついてくる。例えば保有残高ポイントなどがその代表であろう。
保有残高ポイントとは、自分が保有している投資信託の残高に応じてポイントが還元される仕組みである。NISAでの資産形成は長期間でコツコツ積み立てていくことを大前提とした仕組みであるため、こういった還元で将来的な資産に大きな差がつく可能性が非常に高い。長期で積み立てていくと、毎年積みあがる小さなポイント還元の差が、数十年後には数十万円という差につながってしまうのだ。
そのため、最初の証券会社選びの間違いが、長期で見た時の資産形成に大きな影響を与えてしまうというわけだ。コツコツとした長期間の積立投資の効率を最大限高めるためにも、証券会社選びは慎重に行う必要がある。
<本当に重要な証券会社選びのポイントとおススメの証券会社>
証券会社選びの重要性が分かったところで、ここからは、実際に長期的な資産形成を成功させるために、証券会社選びで重要なポイントを解説し、どの証券会社がNISAを始めるのに最適なのか、楽天証券、SBI証券、松井証券の大手3社で比較検討をしていく。どの証券会社が優れているのかを言及していくので参考にしてほしい。
(1) ポイント還元など実質的な投資メリットの有無
資産形成において特に重要なのは、投資の際に還元されるポイントサービスである。近年、多くの証券会社では、投資信託の保有残高に応じてポイントを付与したり、クレジットカードでの積立購入でポイントを還元するなどの仕組みを提供している。
こういったポイント還元のサービスをうまく活用することで、実質的にコストを下げ、運用効率を高めることができる。そのため、ポイント還元などを用いて、いかに投資家に実質的な投資メリットを提供できているか、という観点で証券会社選びを進めるべきである。また、効果的に投資をするのであれば還元額だけではなく、還元されたポイントをいかに投資に活用できるか、までを考える必要がある。
ここで並べた3社はどこも、還元されたポイントを投資に活用することができる。そのためポイント還元率がそのまま投資効率の高さに直結すると考えてよいだろう。そこでここでは、最終的に投資に活用をしていく、という観点も踏まえてポイント還元について比較していく。
*クレカ積み立てポイントについて ※各社の標準カード比較
• 楽天証券:0.5%のポイント還元
• SBI証券:0.5%のポイント還元
• 松井証券:0.5%のポイント還元
*保有残高ポイント について
• 楽天証券:最大0.053%のポイント還元。還元対象の銘柄が6種類に限られる
• SBI証券:最大0.15%のポイント還元。一部還元対象外となる銘柄がある
• 松井証券:最大1%のポイント還元。NISA口座・iDeCo口座で保有するすべての銘柄がポイント還元の対象となる
クレカ積み立てポイントに関しては、標準カードでの還元率に関して各社差はみられず、拮抗している。しかし、保有残高ポイントについては、最大1%の還元に加え、すべての銘柄が還元対象であり、松井証券に軍配があるように見える。そのため、ポイントを投資に活用することを考えると、松井証券が投資効率を上げられると考える読者が多いのではないだろうか。
(2)投資初心者をサポートする仕組みの有無
もう一つの重要なポイントは、投資の知識がなくても資産形成をサポートしてくれる仕組みがあるかどうかである。忙しい現代人が一から投資の勉強するのは一苦労である。そのため、投資のポートフォリオを自動で構築してくれるサービスを展開してくれたり、リバランスを自動でやってくれる、知識がなくても問題なく資産運用ができるサービスを提供してくれているかを見るのが非常に重要である。
その代表的なものとして挙げられるのが、「ロボアドバイザー」や「ファンドラップ」である。個人の投資スタイルや資産運用の目的に合わせて、最適な運用プランを提案し、投資を自動で行ってくれる仕組みである。投資初心者が迷いがちな銘柄選びや資産配分などを自動的に行ってくれるため、効率的な資産運用が可能になる。特に「投資のことはよく分からない」という人にとっては大きな助けとなる仕組みだ。NISA制度で投資を始めている人の多くが、まだまだ投資に慣れていない層であろう。
「ロボアドバイザー」や「ファンドラップのような投資一任契約型」はポートフォリオの構築などの機能面での差異は大きくない。利用コストやそもそもNISAに対応をしているか否かについてが、大きな差が出てくる部分であるため、そういった観点で比較をする必要がある。
• 楽天証券「楽ラップ」:投資一任契約。利用コストは利用手数料0.715%〜に加え、信託報酬が最大で0.1503%程度かかる。なお、NISAには対応していない
• SBI証券「SBIラップ」:投資一任契約。利用コストは利用手数料0.66%~なのに加えて、 信託報酬が0.298%程度かかる。NISAにも対応していない
• 松井証券「ロボアドバイザー」:ロボットアドバイザー。利用コストは利用手数料がかからず、信託報酬の0.15%のみ。NISA口座にも対応
以上からそもそもNISAにおいてロボアドバイザーを活用するのであれば、NISA対応のロボアドを提供している松井証券一択という話になる。また、投資一任はお任せをできる分、楽だが、その分コストは高く、長期的に資産形成するうえで大きな差に繋がる。
ロボットアドバイザーは、利用コストについてもかなり低く、投資での利益を限りなく自分の収益とすることができる。投資に慣れていない層への資産形成に大きく貢献してくれると言ってよいだろう。
<資産形成の一歩を踏み出そう>
NISAによって資産形成がより身近なものになった。ただNISAで効率的に資産形成をするのであれば、証券会社選びが非常に重要である。
本稿ではポイント還元率の高さだけでなく、NISA対応のロボアドなどをふまえ、初心者にも優しい松井証券がNISAを始めるのに最適ではないかという見解を示した。
もし「やろうかどうか迷っている」という段階であれば、少額の積立からでも始めてみるのがよいだろう。NISAを上手に活用して、資産形成に弾みをつけていきたい。
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