<一億総作家時代なのか?>大河ドラマを書き通す素人の力
南川泰三[日本放送作家協会理事/文化庁芸術祭賞審査員]
大変嬉しいことなのだが、今、お預かりしている原稿や著作が数篇あって、まだ読み切れないでいる。中には今年からスタートした大河ドラマと同じテーマの大作で、ワープロ原稿で300枚は越えていそうな原稿や、長編叙事詩と言ったものまであって、それはそれで力作には間違いないのだが、今、大河ドラマと同じ素材を持ち込まれてもなぁと持てあましている。
おそらく公募の審査員をやっているせいだと思うが、ワラにもすがりたい気持ちは大いに理解出来るが、すがられるワラは実に頼りないワラなのだ。
せめて送って頂いた以上、読むのが礼儀と思い多少、日にちはかかっても必ず読ませて頂き、公募作品以外は短くとも感想を送らせて頂いている。それにしても寝っ転がって気軽にと言えない作品ばかりで荷が重い。
読ませて頂くのはありがたいのだが、僕が読んで「ヨッシャ!これは素晴らしい!」と絶賛した所でドラマにも本にもにもなるわけではない。まあ、余程の作品は知人のドラマディレクターに「こんなのどうよ」と送らせて頂くが、ディレクターが気に入ったからと言って、これまたドラマになるわけじゃない。
世の中には出版を目指して頑張っている人たちがたくさんいらっしゃる。そんな中で幸運にも十冊近い本を出版出来た僕は果報者だと改めて思った。何のお力にもなれないが、せめて玉稿を読ませていただくのが、一足早く出版できた僕のせめてものお返しと思いたいのだが、売れない小説を書いている僕に読まれてもなぁ。
出版不況と言われて久しいがこれって、ひょっとして一億総作家時代なのか。読者の数より、作家の数が増えたせいだと思いたくもなる。
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