<深夜28時15分から教養番組>スゴい時間に放送される質の高い落語番組に期待
齋藤祐子[文化施設勤務]
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「落語研究会」(TBS)という落語番組が深夜帯でやっていると聞いてさっそく見てみた。深夜28時15分、つまり翌日の早朝4時15分からの番組だ。これはもう深夜ではなく早朝でしょう、という時間帯。
自局のドラマやバラエティの番組宣伝にはさまれるようにして、古風な静止画のタイトルに音曲がかぶるという、まっとうな古典芸能の番組風にはじまる。
シーンが切り替わると、スタジオで、今まで数々の落語録音を手掛けてきた京須偕充さんという有名な「落語録音プロデューサー」の解説を、落ち着いた女性アナウンサーこと長岡杏子さんが伺うという、中身も予想通りの教養番組。
番組のはじめに、放送する落語の内容と聞きどころを簡単に解説し、その日の本編、演者の落語へと続く。一席たっぷりと聞いた後は、(ドラマとバラエティの番組宣伝のCMタイムの後に)また京須さんの解説が始まる。
後段では、この演者ならではの工夫や聞きどころ、なにがこの演者ならではの工夫や持ち味か、今後何に期待するのか、といったことを勘どころよく過不足なく話して番組が終わる、というもの。
当初、「落語研究会」というからには、もっと「通人」が評論するような番組かと思ったのだが、初心者にもとても親切な作りである。もちろん、落語を聞き込んだファンも、京須さんの解説とその演者に対する評価が聞くことができるという納得の内容である。
なにより演者に対して適確で感じのよい京須さんのコメントがとても上品だ。落語を聞き始めたばかりの初心者から、相当に聞き込んだ人まで幅広く勧められる番組だろう。
とはいえ、ちょっと気になるのは、ここでとりあげられるのが「古典落語ばかり」なのか?というところ。新作落語にも時を経て古典のように定着していくものもあるだろうから、そちらも取り上げることもあるのだろうか。
若くて生きのいい演者の新作を取り上げ、京須さんがどのような解説をするのか? そちらもぜひ一度拝見したいところだ。もしかしたら、あまりにも元気が良すぎて、古典の時には見せない「ちょっと辛辣な意見」を言うこともあるのかな?・・・などと想像するのも楽しい。
もっとも、ベテラン録音プロデューサーの京須さんに聞いてもらい、意見を言ってもらう前提で、「小さく収まらず、はじけてしまえる若手落語家」なんているのかしら?と思いはするが。
次回も楽しみになる落語番組である。
[メディアゴン主筆・高橋のコメント]柳家喬太郎が国立劇場の落語研究会で史上初、自身の新作『ハワイの雪』でトリを取った。演題はカタカナをやめ『布哇の雪』このへんが良くも悪くも老舗「国立の落語研究会」である。私はこれを聞いているが、肩の力が抜けた好演であった。
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